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「……吸血鬼は関係ないにしたって、お前が動くことはないだろ」
「そうだぞ、マリカノンナ」
私の言葉に二人が渋面を作る。
まあ、そうだよね。わかるわかる。
だけど、ここで私が吸血鬼であることを明かして「謂れのない不名誉を受けてたまるか!」なんて不満をぶちまけたところで伝わるはずもないのだ。
むしろ私が吸血鬼を名乗ったところでまず『熱でもあるのか』って対応になる未来しか見えない。
「まあまあ。私自身、郷土史とか調べてたら気になることがあってね」
「……気になること?」
「吸血鬼と人間の関係性」
それは私自身、調べているから事実の話だ。
ほら良く言うでしょう? 嘘を言うときは事実をベースにするとバレにくいってね!
詐欺師の手口みたいだって言わないの。
そもそも私が吸血鬼って事を黙って入学している段階で嘘ついちゃってるしね……まああの一族の中で子供なのは間違いないから嘘でもないんだなあ、これが!
「吸血鬼について調べるのは禁忌だろう」
「表向きはね」
「……表向き?」
ハルトヴィヒの咎めるような言葉に、私はペロリと舌を出してみせる。
はしたない、そうジャミィルが声もなく言ったけど知らんぷりしてやった。
「禁忌だって言われるけどさ、それって法律なんかで縛ったものじゃないのよね。私たちへの良心に訴えかけているだけだわ」
「それは」
「かつての過ちを犯さないように、それだけでしょ。カタルージアはそれをよく知っているんじゃなくて?」
「……それは……」
私の言葉に思い当たる節があるのか、ハルトヴィヒが口をへの字に曲げた。
そういう素直なとこ、きらいじゃないけど……王子の護衛役としては大丈夫なのか?
そして私たちのやりとりを当然疑問に感じたらしいジャミィルも眉を顰める。
「どういうことだ?」
「サタルーナにだって探られたくない腹ってもんがあるでしょ。聖女とか」
「……む」
聖女、その単語を出されるとやはり弱いらしい。
まあね、お互い知られたくない事ってあるもんね。
ただ私は吸血鬼だから、人間側の都合で書き換えられた歴史書を見たり教訓を言われて育ったわけではないので、両方に関する知識があるのだ。
それを元に人間族が書いた歴史書や物語などを見て、私はコレまでの中で捻じ曲げられてしまった事実がどこから生まれたのかを探っている。
かつて追いやられた頃の吸血鬼は、その捻じ曲げられた事実をどうして正そうとしなかったのか……それについては今後、ひいおじいちゃんにでも手紙を出してみるつもりだ。
お土産もつけてね!
多分手紙のやりとりでまた来てくれるオオコウモリのジェフリーに頑張って貰うんだ!!
オヤツあげるからお願いジェフリー。ごめんて。
いっくら力持ちのオオコウモリ、吸血鬼の眷属でパワーアップさせているからってしんどいんだぞって苦情の気持ちがいっぱいこもった鳴き声を聞かされるんだろうなあと思うと少し申し訳ない気持ちになるけど、イナンナのお店で売ってるおまんじゅう美味しいから家族にも食べてもらいたいんだってば。
まあそれはともかくとして。
私の言葉に、二人は押し黙ってしまった。
よしよし、いい感じ。
「だからさ、私だけが動くのが心配ってんならさ、二人も協力してよ」
「あ?」
「んん!?」
「そしたら二人が知りたがってること、私が知ってる範囲で一つずつ教えてあげる」




