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結局、本は借りることになってしまった。
真面目に読む気には、今はどうしてもなれそうにない。
幸いな事にこの厚さなら数日かかるだろうからと先輩が言ってくれたので、それに甘えることにした。
ウィクリフならこの厚さは数時間、その後に考察するためにもう一週、それから楽しみたいから……じゃなかった、それはもういい。
(うーん、道は長そうだ!)
単純に考えて行動したけど、よくよく考えればうん百年単位の誤解と畏怖がこの学園生活数年でどうにかできるとは思えないんだよなあ!
まあ、王子と王女みたいに国の偉い人と知り合うっていうのを何故か一足飛びで成功(?)させたから長期計画の第一歩は踏み出せている……のか……?
「あっ、マリカノンナ!」
「……ハルトヴィヒ?」
「なんだよ、夕暮れ時に一人でこの道歩いてると危ないぞ?」
「え、そうなの?」
人通りの多い道はなんだか気分じゃなくて、路地裏を使って寮に戻る途中でハルトヴィヒに会ってしまった。
彼はなぜだか学術都市の騎士と会話していて、私の姿を見るなり駆けよって注意してきたけど……。
「最近人攫いが多いらしいんだ。お前みたいにか弱い女子が一人で歩いてたら危ないだろう!」
「え? あ、うん。ありがとう?」
「なんで疑問形なんだ……サナディアだと人攫いっていなかったのか?」
「いや、いたとは思うけど」
実際のところ、もっと闇深い問題で亜人種の見た目が好みだからって連れ去り問題が発生してますけどね?
まあ吸血鬼一族に関しては引きこもりなので攫われたって話は聞かないかな。
そういう意味ではエルフ族が多いけど、蜥蜴一族とかも狙われやすいとか聞くよね。
最近じゃあかなり減ったって話だから、それは殆どないと同等と思っている。
「……はあ、世間知らずかよ」
「むっ」
「いいよ、寮に行くんだろう? 送るよ」
「えっ……いいよ、別に……」
正直なところ、私の方が強いと思うし。
さすがにそれを明かすわけにはいかないけど。
それにハルトヴィヒだってわざわざこんな裏路地で騎士と密談しているくらいだ、とっとと私に姿を消して貰った方が安心するんじゃないのかな?
(ああ逆か、何かあった時に自分が疑われると困るのか)
そうやって裏を考えちゃう自分、いやな子ーーーーー!!
でも疑って生きないと他種族の前での吸血鬼は色々とね、やばいからさ……。
はー、せっかく転生して美形になったのに、なんでこんなハードモードなのかしら。
意外と上手くやれているとはいえ、隠し通さなきゃいけないことを持っているってこんなにも面倒だとは思わなかった!
アニメとか漫画でそういう主人公がいると『かっこいい……!!』とか思ってた私よ、コレは大変苦労するんだぞ。
細心の注意を払う繊細さが必要なんだぞ!
「あのね、僕はこれでも騎士なんだからか弱い女性をそのままにしておけないだろう?」
「あー、うん。ソウデスネ?」
「それに」
にこっとハルトヴィヒが笑う。
それは作った笑顔とまた少しだけ違う、子犬みたいな笑い方だった。
「同級生なんだから、気を遣うなって! 僕ら、友達だろう?」
そのはにかむような笑みに加えて少しだけ耳が赤くって、それを見たら彼が親切心で言ってくれているんだって察してしまった。
ああ、眩しい。
この子光属性か何かかな?
疑ってごめんね!
今ものすごく良心が痛んだよ!!




