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81/97

81 一蹴




「ニル、あの子についていかなくてもよかったのですか?」


 ライハとアイリを見送ったあと、ドームの中に残ったリフレはニルに問いかける。

 あの子とは、言うまでもなくアイリのことだ。


「平気だよ。リフレはあの子のことよく知らないだろうけど、アイリってすっごく強いし。……それより、リフレが出て行かなかった方が意外」


「あの程度の敵、ライハ一人だけでも対処可能でしょう。全員で戦うまでもありません」


「信じてるんだ」


「ニルも、でしょう?」


「……っ」


 真っ赤になった顔をとっさにそらすニル。

 自分とライハの関係に似たものを二人から感じ取り、つついてみれば大正解だったらしい。

 ニルの変化と年相応の微笑ましさに、リフレの表情がやわらいだ。


「――それと、残った理由はそれだけじゃありません。表の敵が陽動で、エメルダさんを直接狙ってくる可能性も否めませんし、この方からはもっと話を聞いておきたいのです」


 ドーム外を映すビジョンに、リフレは目線を戻す。

 映し出されているのは、白い異形の大群と異形の龍を前にして、背中の剣を静かに引き抜くライハの姿。


「観戦しながらでいいので、聞かせてくださいますか? ニローダの居場所、能力、もしあるのなら弱点とかも」


(したたかだね、リフレ……)


「えぇ、私の知る範囲であれば、なんでも提供しましょう。まず、ニローダの居場所。見当はついていると思いますが――」




 白い蛇に天使のような翼の生えた異形の龍。

 それを取り巻く『天の御遣い』の数は、百をくだらない。


「うわー、大群だねぇ」


「こんなのよゆー。わが左腕を使うまでもなし……」


 しかし剣を手にしたライハの横、ロロちゃん人形マーク2をかまえたアイリは不敵に笑う。


「そう? じゃあ面倒くさいし、細かいザコは任せちゃっていいかな」


「魔王命令、アイリりょーかい。かきゅうてきすみやかに実行する」


「頼もしい部下を持って、魔王様は幸せだ」


 剣に雷をまとって、上空の龍をめがけ飛びあがるライハ。

 彼女を迎撃するため、天の御遣いたちが殺到するが、


「ロロちゃんマーク2すぺしゃるほーみんぐ、ふるばーすと」


 クマのぬいぐるみの口と腹部が開き、背中からは巨大なミサイルポッドが出現。

 さらに、目には高出力の魔力が収束する。

 そして、次の瞬間。


「ふぉいあー」


 ズドドドドドドドドドドドドドドォッ!!!


 目から光線が、腹と口から弾丸が、そしてミサイルポットからは大量のミサイルが、一斉に発射された。

 四方八方へと放たれる弾幕が、しかし正確にライハをよけ、敵を追尾し次々に命中。

 威力も申し分なく、一撃一撃が確実に白の異形を撃墜していく。


「やー、ホント頼れるねぇ。さて、魔王様も威厳を見せないと」


 迫るライハに対し、龍が蛇のような尻尾を振りかぶる。

 巨体からは想像もつかない速度での薙ぎ払いを、しかしライハは墜落していく天の御遣いたちの体を足場にして飛び渡り、軽々と回避。


「悪いけど、瞬きの間に終わらせちゃうよ」


 ライハの全身を雷光が包み込み、次の瞬間。

 一筋の閃光が、暗黒の空を奔った。


『ギ……ィヤァァァァァァァァァッ!!!』


 響き渡る絶叫。

 龍の巨体を空に浮かばせていた純白の両翼が、根本から切断されて血しぶきを舞い散らせる。


「紫電一閃……。見えなかったでしょ」


 突進しつつ、雷をまとった刃で斬り裂く、まさに一瞬の斬撃だった。

 ドームの上に着地したライハは、反動を活かして再び龍に飛びかかる。


 重傷を負って落下していく白の龍。

 再び迫るライハへ、最期の悪あがきとばかりに大口を開き、その喉奥に白い光が収束していく。

 が、しかし。


「遅いね」


 ズドッ……!!


 光の魔砲撃が放たれる前に、ライハの電光の刃が龍の脳天をつらぬいた。


『キュエェェェェェェェ……っ』


 断末魔の叫びを残し、口内の魔力光が霧散。

 頭部にライハを乗せたまま、巨体は真っ逆さまに墜落し、


 ズゥゥゥゥゥゥゥ……ン!!


 地面に激突すると同時に絶命した。


「……ま、こんなもんかな」


 龍の頭から剣を引き抜き、軽くふるって血を払うと背中のさやに納める。


「アイリの方は――もう片付いてるか」


「楽勝。この程度のうぞーむぞー、アイリの敵じゃない」


 黒こげになった大量の天の御遣いを背に、ピースサインでドヤ顔のアイリ。

 頼もしい部下に同じくピースを返しつつ、


(そう、この程度の有象無象。本気であたしらを倒したいなら、もっと戦力が必要だってニローダもわかってるはずなのに……)


 ライハの胸には、どこか不気味な腑に落ちなさが渦巻いていた。




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