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74 決戦へ赴くのは




「えー、と。まずはクッソ忙しい中、招集に応じてくれてありがとね」


 魔王城の会議室。

 どっしりと腰掛けた魔王ライハが、円卓に座した面々を見回しながら口火を切る。


「今回、どうしてもみんなの耳に入れておきたいことがあるんだ」


「なんなんですかねぇ~、クッソ忙しいってわかってるんだから呼び出さないでくださいません?」


 あからさまに不機嫌な様子で悪態をつくローク。

 転送装置の開発時間を、一分一秒でも無駄にしたくないのだろう。


 実際、これからライハが話そうとしているのは転送装置の件。

 彼に対して説明など必要ないのだが、信憑性や実現の可能性を他の皆にもはっきりと示すためには開発者である彼の同席が必要不可欠だ。


「無駄口の分だけ拘束時間増えるよ? さっさと帰りたいなら黙ってな」


「やれやれ……」


 さすがにロークもそのことはわかっている。

 これ以上の口答えも無駄だと悟り、大人しく引き下がることにしたようだ。


「……あのー、本当にいいの? 魔族じゃないあたしたちが参加しても」


 おずおずと小さく手を上げて発言したのはニル。

 彼女もこの会議に呼ばれていた。


 他の参加メンバーは、ライハのとなりに座るリフレ。

 緊張の面持ちで、額の汗をハンカチでぬぐうエゾアール。

 そしてニルのとなりに座るアイリ。

 あたし『たち』には、もちろんリフレのことも含まれている。


 魔族に対し、悪い印象ばかりを抱いて生きてきた彼女にとって、魔族ばかりのこの空間はさぞ居心地が悪いのだろう。

 その上、自分の学のなさも理解している。

 リフレはともかく、会議の目的について見当もついていないニルには、場違い感を持っても不自然ではない。


「もちろん、大丈夫に決まってるじゃん。この魔王様が直々に呼んだんだ」


「そ、そう……」


「それに、キミがいるとアイリが会議に参加してくれるみたいだし」


 サボり魔常連のアイリが招集に応じるとは、さすがのライハも想定外。

 ニルにぴったりとくっついている様子を見るに、理由が彼女であることは明白だ。


「アイリ、ニルと離れたくないだけ。話は右から左に流す」


「んー、まぁとりあえずそれでいいや。――さて、本題行こうか」


 パチン。


 ライハが指を鳴らすと、円卓の中心、空中に映像が浮かび上がる。

 映し出されたのはロークの研究室と、そこに横たわるマルーガの姿。


「ひ、ひぃっ! コイツ、大丈夫なのですかな!? 起きて暴れたりしませんかねっ!?」


 直接刃を交えたエゾアールは、マルーガの強さと恐ろしさをよく知っている。

 震える声で安全を確認すると……、


「平気さぁ。なんせこの僕が、すみからすみまで徹底的あらゆる手段を用いて調べ抜いたんだから。もう二度と目を覚まさないと保証しよう」


「ひぃっ! キミの方が恐ろしいよっ!」


 最終的にはロークに震え上がることとなった。


「コホン。今ロークが言った通り、コイツを調べ尽くした結果……。重大な事実が判明した」


 咳ばらいをした後、ライハが召集の理由を話し始める。

 ニローダの世界とこの世界の違い。

 転送ゲートの存在。

 それを応用し、ロークがあちらの世界へ乗り込める転送装置を開発中だということを。


「――間違いなくできるんだよね?」


「愚問ですね。完成は保証いたしましょう」


「と、いうことだ。今回集まってもらったのは他でもない。あっちに殴りこんでニローダをブチ殺す、そのメンバーを選出する」


 ニローダ討伐。

 魔王の発した言葉に、会議室の空気がピリリと張り詰める。


「ロークによれば、転送装置は何人でも送れるそうだ」


「この僕にかかれば、ね」


「そんなわけで、行きたいなら遠慮なく手を上げてね。まず、あたしは当然行くとして……」


「わたくしも行きます。今こそすべてに決着を。必ず、この手でニローダを……!」


 最初に名乗り出るライハとリフレ。

 この二人は会議の前から話し合い、すでに決意を固めていた。

 しかし、たとえ今初めて聞かされていたとしても、いの一番に声を上げただろう。


「これで二人、だね。あとは――エゾアール、どう?」


「わわわわわわわ私ですかね!? そそそ、それは……、そ、そう! いざという時のために、魔王城をがら空きにしては危険ですからねっ! 白いムキムキが万が一暴れだしてもいかんですしっ! この私が魔王様の留守をあずかりましょうぞ!」


「そう……」


 明らかに行きたくないがための言い訳だが、たしかに留守の備えも必要。

 深くは追及しないことにした。


「ロークは――」


「行きませんよ? 安全になったあとの調査には、喜んで参加させていただきますが」


「あー、はいはい。そうだと思ったよ」


「……あの。リフレが行くなら、あたし行きたい」


「ニル……?」


 先ほどのようにおずおずと、ではない。

 決意を秘めた瞳で、ニルが名乗り出る。


「あたし、師匠に頼まれたんだ。リフレを助けてやってほしい、って。だからついてく。師匠のためにも、そう決めた」


「師匠が、そんなことを……。えぇ、わかりました。行きましょう、ニル。ライハも、かまいませんよね?」


「もちろん。この場に呼んだのはあたしだよ?」


「ニルがいくならアイリもいく」


 ぴとっ。


 ニルにぴったりくっつきながら、発言したダウナー少女。

 ライハは驚きに目を丸くする。


「アイリ、ついてくるの? てか、そもそも話聞いてたんだ……」


「いく。ニルのそばにいたいから、アイリも連れてって」




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