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今日から学校と仕事、始まります。②莞

トリックツアー

作者: 孤独

「ねぇねぇ、アシズムさん」


阿部のん。現在、小学6年生の女の子。

最近の彼女の流行は、推理系の小説や漫画、ドラマなどの作品を見る事である。


「のんちゃん!こーいう難事件の中で活躍したいんです!力を貸してくれません!?」


彼女がキラキラした瞳で頼み込んでる相手は、喫茶店の老店主。なんでそんな人に頼んでいるのかどうか。実はのんちゃんも、アシズムも魔法の類を持っているからだ。


「犯人役でもやるのかい?」

「違いますよー!アシズムさん!普段から色んな人達に迷惑をかけてるんだから、たまには人のために良い事をしてください」

「その言い方。私、傷つきますよ?」


とはいえ、子供に図星を言われたアシズム。彼の能力は、”いくつか”とか、”数とかいう類”ではないし。本人自身も全てを把握できていないし、使いこなせてない事もある。


「物語の現場に行きたいわけね」

「そうですそうです!」


そーいう能力はいくつか所持しているが、ミステリー限定とか絞られると、本当にあるかどうか。なるたけ、のんちゃんに影響がでない能力を調べた後。

アシズムは、?マーク柄のブックカバーを左手に具現化し始めた。

これがのんちゃんの希望に合う能力だろう。


「”トリックツアー”って能力を貸すよ」

「おぉっ!アシズムさん、やりますね!ムダに能力が多いだけじゃないんですね!」

「使い方だけど。これでカバーした本を読むと、その物語の中に入り込める。これは推理小説用だね」


色んな本によって、能力が違うらしいが。今はどうでもいいだろう


「でも、これを使う場合。のんちゃんが本の内容を知らない事、事件に関わらない立ち位置で物語に入り込むって条件だから」

「わっかりました!早速、使ってみます!」


まだ読んでいない推理小説本をそのブックカバーで覆い、読み始めるのんちゃん。たったそれだけで


「あ」


本が輝き始め、有無を言わさずに。のんちゃんは本の中に体ごと引きずり込まれ、物語の中に入っていく。その拍子に落ちてしまった本は床に落ち、アシズムは危ないのでテーブルの上に本を置き、のんちゃんの帰還を待つ事に。

だいたい、1時間くらいで戻って来るとか、能力には書かれている。


◇        ◇



『わーーっ、凄い』


声に出しているが、心の中でしか喋れていない奇妙な状態。

VR感覚よりも、ホントにリアルに物語の中に引き込まれた感覚。先ほどまでいた喫茶店から、旅館の一室にテレポートしていた。こたつの上に乗っているみかんやリンゴ、飾られている掛け軸とクマの木彫り、窓からゴルフ場が見える景色。

登場人物の1人の身体の中に、魂を入れた感じ。のんちゃんは体を思い通りには動かせていないが、


『ここで事件が起こるんだー。どーいう事件なのかな』


この人物視点で、物語を見ることができるらしい。

一体どのような物語なのか。


コンコンッ


「はーい、どうぞ」


話の概要がゆっくりとであるが、のんちゃんに伝わっていく。この人物の情報が分かり始める。

大学の同窓会をこの近くでやるようで、彼女はこの旅館に友達5人と泊まっていたそうだ。この5人はカヌー部の仲間。本当ならもう一人いたのだが、その一人は1年前に行方不明になってしまっていた。


これから起こるのは、その行方不明となってた友人によって、連続殺人が行われるという事件。たまたま、旅行で来ていた市田いちだ名刑事による捜査と推理で事件を解決していくものらしい。


「赤井さん、どうしたの?」


のんちゃんは、その推理や捜査を間近で感じられるのである…………。



◇         ◇


推理小説の中身には書く腕前がないので、以下略。


ドポーーーン


「あーーーーーっ!」


推理小説の世界から出て来たのんちゃんは、少し怒り気味な表情で本の中から飛び出してきた。


「おかえり」

「アシズムさん!これなんですか!?」


話の内容に不満はなかったし、むしろ面白かった部類だ。

1年前、行方不明となっていた友達を利用し、旅行に来ていた2名を殺害。殺害した罪で首つり自殺に見せかけたトリックを見破った市田刑事は、真犯人を突き止めて無事に物語は終わった。

いや、そーいう不満じゃなく……


「のんちゃん、死体役!っていうか、幽霊として事件を見てるだけだったんですけどーー!」


幽霊になってから自由に行動ができるようになったが、物語に干渉する事ができず、ちょっと置いてけぼり。というか、市田刑事役とかの推理側を考えていたようだ。


「ほら、命を引き換えに力を強くする魔法とかあるじゃん。そーいう類で働く能力だったし」

「そんな魔法を推理小説で使わないでくださいよ!」

「でも、本より引き込まれたでしょ?」

「そーですけど!なんか違う!生で捜査とか、犯人のトリックを……幽霊として見れるのはなんか違う!」

「読者は我儘だなー」


そりゃあ、捜査役の人間として物語に引き込まれたらスリルがあるだろうが。


「解決できなかったら、物語が終わらずに帰ってこれないしさ」

「のんちゃん!絶対解決するもん!」

「でも、犯人襲われたり、追いかける刑事さんや探偵さんいるし。そこで失敗したら」

「できます!やりますよ!そーいう感じになる能力で!」

「……えー、それは危ないからホントに妥協案で許してよ」


アシズムは事件に巻き込まれる容疑者の1人として、のんちゃんを物語の中に入れさせてあげた。

そしたら今度は、刑事さん達が見つけた証拠や色んな証言が聞けなくて、困ったと言われた。




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