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其の六話

                ≪秋の或る日のエトセトラ 1 ≫




それは、或る秋も深まる日曜日だ。


「お帰りなさいませ、ご主人様っ」


「ようこそ御出で下さいまして、ご主人様っ」


アキハハバラの駅前に聳える総合ハイエンタービル【シャ・ン・グリ・ラ】。 その地上部数階を席巻するメイド喫茶を含めた総合アミューズメントフロアに、若々しい女性の声が上がる。


色取り取りなメイド服に身を包む美少女達が、今日も遣って来る客を待っている。


だが・・。


カウンターに程近い席には、バイトを終えた女の子か。 若い女性3人の姿が見える。 私服の客らしき未成年の少女二人と、メイド服に身を包む少女。


私服の一人が、カウンターを見て。


「嗚呼・・・、なんてイケメンなのぉ~」


と、カウンター前に立つ長身のウエイターに、うっとりとした視線を送る。


別の私服の少女も、完全にウエイターの男性へ目を奪われたままに、気持ちが何処かにいってしまった様子で。


「でしょ~? “週一の貴公子”とかぁ~、“半月王子”とか言われる人なのよ・・。 はぁ・・、どうにかして付き合えないかなぁ」


そんな二人を一瞥したメイド姿の少女も、うっとりとウエイターを見て。


「ムリですわぁ~。 だってぇ~、お店で働くだぁ~れもムリなんだもぉ~ん。 嗚呼・・カンちゃん・・・、こっち向いてぇ~」


女の子達の憧れる視線を集めた180を超える長身のウエイターは、知的さ迸るスマートなイケメンだ。 ほど良い長さの前髪が、キツさを感じさせない切れ長の瞳に凭れ掛かる。


そう、かの“マッドサイエンティスト”だとか、“貴公子科学者”だの幾つもの異名を持つ天才、神主が働いているのである。


新たにミシェル二号を作ろうと考えているのだが。 微妙にその研究が上手く行かずに行き詰まり。 気分転換に、バイトに来ていた。 ま、原因の一つは、何とも掴み処の解らぬミシェルの所為でもあるが・・。


夕方。


自分に見惚れて、高い席代チャージを覚悟で居続ける女性達等そ知らぬままに。 仕事を切り上げて更衣室へ。


このフロアで働くウエイターは、年配者では彼一人。 更衣室の奥の、暖簾で仕切られた狭いロッカーが並ぶ場所に行こうとすると・・。


「あっ、カンちゃんだっ」


「うわぁ~、ひっさしぶっり~」


「アタシ、二ヶ月ぶりだぁ~見るの」


と、メイド従業員として働く女の子達が、下着姿だったり、上半身を裸のままに寄って来る。


神主は、そんな数人の女の子を見て、つくづく女の子の思考が解らず。


(おいおい、そんな裸とか下着姿で来るか? 俺、一応は男だぞ?)


と、呆れてしまった。


だが、神主の周りに寄って来る少女達の中、愛らしい胸を露にしたままで揺らして来る女の子は。


「見て見てっ、カンちゃんっ! Cカップに格上げしたのぉ~」


と、白い素肌で、ふっくらとした肉付き良いバストを、自身で揺すって見せる。


「やだっ、ユイナ」


「うはっ、色仕掛けバリバリじゃんっ」


「女としてサイテー」


大して驚きもしない感じで、女の子達は騒ぎ出す。


中には、その胸を露にした女の子の胸を、背後から手を回して。


「こ~かぁ~、こうされたいかぁ~」


と、揉み弄り出す始末。


(おいおい・・、此処は一体何なんだ?)


女の子達の羞恥を知らぬ騒ぎ様に呆ける神主。 しかし、科学者気質の強い神主は、マジマジと女の子達の胸を見回しながら・・。


(しかしまぁ・・、確かにほど良い形だ。 成長期だから、肥大したのか・・。 だが、こう目の前にすると、よくよく見ると不思議だな。 ホルモンバランスだけでは、大きさに準じて形の良さや見栄えが整うとは限らない訳か。 男性に好かれる胸の形をデータベース化して・・、下着等で形を調整するのも・・・・云々)


と、観察の道具に過ぎない結果と成る様だ。




さて。


着替えた神主は、従業員の女の子達と別れ。 ビルの地下にあるラボへと、エレベーターで降りた。


到着したラボへと続く一本廊下。 簡素で質素な金属質の壁。


途中に掛かる白衣を取り、颯爽と羽織った神主は、行き当たりの自動で開いた半透明のガラス戸を潜った。


公式テニスコートが丸々入るぐらいの広いフロアには、理科室などで見掛ける長い机が見え。 その上が、酷い散らかり様を見せていたり。 小難しい大小の機械が、フロアに点在して隙間をを埋める。


「お~い、ミシェル」


実験体として、初めて生み出した人間のヒューマノイド、ミシェル。 彼女は、このフロアの何処かに居ると、神主が呼んだのだが・・。


「はぁ~い、ご主人様ぁぁ~~」


と、緩いミシェルの声がしたかと思うと・・。


(何だ?)


神主は、散らかった机の影から、ミシェルが飛び出して来るのが見えた。 四つん這いの格好で、ピョコ~ン・ピョコ~ンと跳ねて来るミシェル。 不意を突く間合いで、突然に訳の解らぬ登場の仕方をしたミシェル。


(な・・何だぁ?)


訳の解らないミシェルの格好に、急な脱力感を覚えてコケた神主。


「あうぅ・・」


床に何とか片立膝で座った神主の目の前に来たミシェルは、丸でカエルの様な姿勢をして床に手を着いたままに。


「ゲコゲコ~、お帰りなさ~い、ご主人様~」


ミシェルの格好と、その言い草に明らかなるアンバランスを感じた神主は、自身のてで頭痛のし始めた頭を抑えつつ。


「・・・、ミシェル。 もう・・・マスターでいい。 それより、その格好は・・何だ?」


上目遣いで見上げて来るミシェル。 頭には、ネコの耳を模ったフサフサした物が付くカチューシャをし。 足には、着ぐるみの様な同じくネコの足をイメージした靴らしきもの履いている。 更に、胸を隠す様に上半身に着用されているのは、ネコのアメリカンショートの毛色をイメージしたビキニスタイルのブラ型の下着。 同じく、下半身に着用されているのは、フサフサしたマーブルグレーの色をした紐で留めるパンツを穿くのみと云う格好。 お尻の部分には、ご丁寧に50センチを超える尻尾までが着けられていた。


「みってくっださぁ~い、新しい衣装です~」


神主が見るに、それは完全なるイメージクラブなどで使用されている、コスプレ衣装であった。 露出度が多過ぎるし、アニメのキャラクターの様である。 手や足の形をした物は、肉球がピンク色で、しかもデカい。 マイクを持って、踊り回れるかは微妙な所だろう。


だが、何より神主が一番気に成るのは・・。


「ミシェル、おま・・お前、その格好は、・・。 てか、跳ね方がネコですら無かったぞ?」


ミミを見上げるミシェルは、


「ええ~っ?! コレってぇ、カエルさんじゃないんですかぁ~?」


何処をどう間違えると、この衣装でカエルになるのか・・。


「ミシェル・・、其処まで着て、カエルだと思ってたのか? その衣装は、ネコだネコっ」


「え゛ぇ~、コレって目玉じゃないんですかぁ~?」


フサフサした毛に覆われたミミを触り、頻りに感触を確かめるミシェル。


すると、其処に。


ゴチャゴチャした長く面積の或るテーブルの隅。 小さい鉢植えのカラフルな色をしたヒマワリが、ダンシングフラワーの様にクネクネと動きながら。


「マスターっ、ソノコナントカシテクレヨっ!! オレヲツカマエテっ、ビームダセっテイウンダヨッ!! シカモオトトイハ、メツブシコウセンヲダセッテクビシメルシっ!!!!!」


その玩具の様な花は、口も目も備え。 しっかりとサングラスまでしている。 神主の生み出した、人工知能を持ったロボットの一つ。 神主の友人的な存在である、“ロビンソン”である。


呆れて立った神主は、ミシェルを見て。


「ミシェル、ロビンソンはアニメに出る様な兵器じゃない。 ビームなんて、出る訳無いだろう?」


「そぉなんですかぁ~?」


「いいから、もう立ちなさい」


「は~い」


立ったミシェルは、愛らしいネコ娘の様で。 キャッキャとはしゃいでは、


「ネ~コネ~コ、ニャ~ンニャン」


と、歌い出した。


神主は、ミシェルの行動が子供染みていて、何とも掴み難いと困惑した。





                       ー夜ー


【ネコのお願い】


ワタシ ネ~コネコ ネ~コ


気ままに のんびり わがままに~


貴方に甘えて愛しちゃう


寒い夜は 寝ている貴方の脇に忍び込むわ


満月の夜は 可愛い女の子に変身よ


捕まえて 捕まえて


このハ~トと一緒に~


優しくね 優しくね


抱きしめて欲しいのぉ~


ワタシは ネッコネコネ~コ


遊ぶの大好きネコの女の子~




地下二階のライヴクラブのステージ上で、ネコの格好をしたミシェルが踊って謳う。


ネコの女の子をイメージしたダンスでは、可愛いネコの仕草を見せながら軽快なアクロバットも難なくこなすミシェル。 M字開脚までキメて、男性客を多いに湧かせた。 歯に被せるタイプのマイクを使い、あの衣装でも難なく謳うミシェルだった。



「みなさ~ん、ミシェルで~す」


合間を繋ぐトークまでする様になったミシェルは、一人でも喋れる様になり・・。


「明日は、晴れてたらリュウセイを見たいとおもいまぁ~す」


すると、客席から。


「ミシェルちゃーーーんっ、一緒に見よーーーーっ!!!」


と、コアなファンが声を上げる。


ニッコリ笑うミシェルは、


「ニュフフ、誰と見るかは・・ヒ・ミ・ツ。 でも、キレ~なお星様見えるといいなぁ~って思ってます」


そして、優しいサウンドが流れ。 青いスポットライトに照らされるミシェルは、また歌い出す。



【スターライトファンタジー】



青い星が 遠くから囁くように 光を届けて


夜空に見える 星の鼓動 聞こえて


愛し合った二人の 約束を示す様に


夜空を駆ける 一筋の流れ星の煌き



ねぇ 耳を済ませて 聞いて欲しい 愛の歌を


只一筋に 届く様に 歌うから・・・




光る星は 丸で命のよう 燃える様な


何かに向かって 突き進める勇気


失った夢さえ また取り戻せる


ひたすらに あの星へ飛んで行けたなら

 


あぁ 悲しみが 世界を覆うとしても


希望の光 忘れないで あの星の様に・・・




ミシェルは、歌う歌に合わせて声のトーンも多少上げ下げ出来る。 最初のカワイイ声から、少し大人びた声にしても、全く違和感を感じさせない。 その歌唱力が、歌毎に客を魅了するのだ。


その後、何曲かカヴァー曲を歌った後。


「え~と、今日のお別れの曲です。 では、衣装のき・が・え~」


神主がさっとステージ脇から現れ、ミシェルの首から下を黒い暗幕の様なマントで隠した。


「えへへ~」


ニコやかに笑うミシェルは、スッとネコの衣装の上を外し、皆に見える様に上に持ち上げる。


「うおおおおーーーっ!!!」


「ヒューヒューっ!!!」


客席やホールから、興奮の歓声などが上がる。


「もうひと~つ」


と、ミシェルは、ブラ型の衣装を投げ。 また、手足を動かした。


「ヤッホ~~~っ」


「イイぞーーっ、ミシェルちゃーーーん!!!」


男性ファンから更に興奮した声援が上がった。


そして・・。


ミシェルは、手を上げて。


「ヨイショ~」


と。 その手には、衣装の下着が・・。


其処で、神主がマントを引いてミシェルの身体を・・・。


「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!」


一気にホール全体が湧き上がった。


「ヤッホ~」


なんと、ミシェルはピンクのメイド服に。 




【メイドのため息】



ご主人様、今日の用事は・・何ですかぁ?



可愛いフリルをの付いた服を 揺らして今日もオシゴトなの~


お掃除・・洗濯・・料理もバッチリ~


何でもできちゃう それがメイドなの~



好き 好き 好き ご主人様


ラブ ラブ ラブ 云い付けも頑張るの~



良く出来たら 褒めてね。 出来なかったら 叱ってね


生きてる 働く アナタを支えるの~




頭に見える白いカチューシャ トレイドマ~クよ


チョッピリ ドジも 許してね


一人でおうちに居ると ちょうと寂しいわ



時には寂しい夜も あるけれど メイドは笑顔が 命なの


ご主人様を 花の様な笑顔で迎えるの




好き 好き 好き ご褒美


ラブ ラブ ラブ ご主人様とのお話



変わらない毎日を 笑顔で行くわ 私おしゃまで元気な メイドなの~





ミシェルの歌う姿を見ている神主は、頭を抑え。


(はぁ~、ノリで作った歌だと聴いたが・・・。 作詞作曲には、俺も加わろうかな・・。 何だ・・コノ歌)


ミシェルのプロデュースプロジェクトの面々は、時々こんな歌を持って来る。 ま、試作披露の場だからいいが、神主にはその趣向が解らない。


しかし、ホールからは、ミシェルの愛らしさに狂ってるファン。 並びに、かなりの盛大なアンコール&ラブコールが飛んでいる。 ウケは先ず先ずと云った処だった。

どうも、騎龍です^^


久しぶりに、ミシェルを数話更新いたします^^;


ご愛読、ありがとう御座います^人^

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