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其の三話

3、ミシェルの初舞台




ミシェルが目覚めて、5日が経った。


「ミシェル、大体は解ったかぁ?」


神主は、ラボラトリーの大型モニター前に備わる椅子に、だらけた感じで座っている。 同じくモニター前の神主の脇には、頭をポニーテールにしたミシェルが座っていて。


「は~い。 ステージで、覚えた歌を歌えばいいんですね?」


「そうだ。 なるべく、可愛らしくな」


神主の研究において、ミシェルは実験体に等しい。 生身のミシェルが、どんな成長をするのか・・・神主自体もまだ解らないのだ。 


(アンドロイドと同じならいいが・・・人工知能とは一線を画すからな~。 生の脳だし・・・)


神主は、友人の女性にミシェルの服を用意してもらった。 しかし、渋谷の有名店の服だ。 どうも、だらしなく見えると思う神主。 ミシェルは、サイズの大きい長袖シャツに、短く黄色いダメージパンツ姿だが。 シャツは、首を通す穴が大きいシャツだから、肩口や首周りのブラのバンドが見えてる。


(肩は覗けるし、なんかキラキラしてるし、ダボついてるし・・・)


神主は、そのセンスがまったく解らないらしい。


さて。


一応、睡眠学習で、ミシェルには語学と音楽とアイドル的教養は植えてあるのだが。 今のミシェルを見る限り、人前に出してみないとどんなものなのかは解らないので、今夜からステージに立たせてみることに。


夜、7時。


シャングリラの地下1階にあるクラブにミシェルを連れて行く。 衣装は、メイド服をアレンジした際どいワンピース。 スカートはフリルがついて短く。 上は背中が覗けるゴスロリ風のエプロンみたいな。


もちろん、神主はこんな衣装とは思わなかったが仕方がない。 その手の衣装を作る業者が、今時に合わせたと言うのだから。


毎夜地下1階の【クラブシャングリラ】は大盛況。 若者やサラリーマンが集まって、踊って飲んでショウを楽しむ。 店が今の流行りのアイドルを招いたり、歌手デビューも含めたオーディションも行われているから、自然と人が集まる。


若い女の子も、アイドルや歌手やタレントを夢見て集まって来るし。 そうした女性に誘われて男性も集まる。 大手芸能プロダクションも此処を無視出来ず、金の卵を探すスカウトも出没するし。 自然とテレビの撮影も良く行われるし、ラジオ生放送の基地局の影響から朝まで客足が絶えない。


しかも、神主の会社の直営ホテルが隣に在り。 地下1階から地上部の3階までは健康ランドを有した施設。 そして、安い1000円カプセルホテルから、高級ロイヤルスイートとして、高みからアキハバラを一望して見下ろす最上階部屋も在る。 ビルの中階層から上の階層は、東京の夜景やら摩天楼のような【シャ・ン・グリ・ラ】ビルも見上げれるので。 デートスポットとしても人気が高いらしい。 


健康ランドも、寝る部屋もあるビルが在るとなれば。 自分のアパートやマンションに戻らないままに、半ば此処に住み着いている者達が幾人も居るとか。 住所不定の高給取りが、年間チャージ契約で部屋を借り切っているらしい。


さて、神主はミシェルを連れてクラブに来ると、殺風景な裏通路から入り口付近の受付裏側に入った。


事務所にて、アルバイトの職員やウェイトレスのバニーガール達に挨拶をしながら、部屋に似合わない黒い頑丈そうな扉の奥に入った。


そこは、暗い部屋でモニターが無数に配置された警備監視モニター室である。 神主は、モニターを見ている50近い男性で、キッチリと正装した男性に声を掛けた。


「やあ、園田さん」


直立不動でカメラを見ている紳士は、神主を見るなり礼儀正しいお辞儀をして。


「これはこれは、神主様。 新しいアイドルさんをお連れとか」


「ああ、この子だ。 ミシェル、挨拶して」


ミシェルは、園田と呼ばれた紳士に、笑って。


「ミシェルです。 よろしくお願いします」


紳士は、頷いて。


「とても美しい愛らしいお嬢さんですな。 支配人を任されております園田と申します。 これからは、よろしくお願い致しますね。 ミシェルさん」


「は~い」


園田と言う人物は、温厚そうな男性であり。 落ち着いた雰囲気も紳士風な、ロンマンスグレーの香り漂う支配人であった。


そんな二人のやり取りを横目で見ていた警備員の若者が、ミシェルの体や顔に目を奪われていた。


(エロくて・・、かっ・可愛いぃ~)


神主は、ミシェルを園田に預ける。


「園田さん。 俺は、ステージに上がって司会を入れますから。 園田さんは、ミシェルをゴンドラで降ろして下さい」


「はいはい、畏まりました」


神主は、また事務所に出て更衣室に向かうと、用意しておいた正装に身を包んだ。 黒いタキシード姿の神主が事務所に出れば、バニーガール達は喜んで寄ってくるし。 スタッフの女性達も、神主に挨拶を重ねた。 それほどに、神主がイイ男と云う訳だ。


神主は、事務所にて待機していて、園田氏の合図を貰うとマイクを持って専用通路を行き。 ダンスフロア奥のステージに上がった。 およそ500人は入れるダンスフロアの中央と、奥の高い位置にあるステージ。 七色のライトが光る中で、神主は満員近いフロアの踊ったり飲んだりしているお客に向かって言った。


「レディース・アン・ジェントルメン。 本日は、新しくデビュー致しましますアイドルをご紹介致します」


ダンスミュージックが中断し、踊っている客や喋っていた皆がステージに注目した。


神主は、微笑み顔で皆を見回して。


「今宵、皆様にご案内致しますのは、密かに探し出したる美少女。 名前は“ミシェル”。 彼女の歌、華麗なるダンスを、得と楽しんで下さい」


神主は、奥ステージの上に向かって。


「カモーンっ!! ミシェルっ!!」


すると、軽快なリズムと白い煙がステージに広がり、天井からゴンドラに乗って降りるミシェルの姿が。


直ぐに、飲んでいたサラリーマンの一団の一人が、


「おお、中々可愛いじゃないか」


「イイねぇ~、ちょっとエロ可愛いじゃんか」


踊っていた若い女の子も、手を振って声を飛ばす。 このクラブでステージに上がる者は、生半可な歌声やダンス力では無理なのは誰でも知っている。 クォリティーの高さも、ちゃんと定評になって居る訳だ。


「歌ってー! ミシェルっ!!」


「踊ってーっ!!」


と、賑やかな声が叫ぶ。


ま、神主が連れてくる今までのアンドロイド達は、歌も踊りも上手くて人並みを外れていた。 だからショウでは何時も大盛況。 しかも、今日は生身の女の子のアイドルが登場との触れ込みで。 ミシェルを知らずとも、ショウに期待して見に来た客も多い。


ミシェルは、可愛らしい微笑みでゴンドラから手を振り。 緊張も見せずに、


「みなさ~ん、ミシェルで~す。 今日からがんばりま~す」


ややユルいキャラの喋りながら、声がハッキリ通って爽やかに聞こえる。


ゴンドラがステージに下りて、神主が寄って手を貸せば。 ミシェルは、神主の手を借りてヒョイっとゴンドラの柵を乗り越える。 下のアングルから見ている男性客は、チラチラ下着が見えて口笛が飛んだ。


ミシェルは、いきなり変わったダンスミュージックに踊りだして。


「“恋のダウジング”からっ、レッツゴー!!」


遂に、ミシェルは歌いだした。 踊って歌って・・・。 アイドル声なのに、何故か優しく響く透明感。 派手ではないけど、スタイリッシュに踊りを決めて、振り撒く笑顔と澄んだ瞳からの視線・・・。


ミシェルのアイドル性に魅了されて、フロアは一気に一つに成って行く。 一曲一曲が終わるたびに口笛やコールが飛んで、全員がミシェルに釘付けになっていった。 


舞台の裾で見ている神主。


(お~お~、やはりミシェルは今までのミシェルと違うなぁ~)


と、かなりの満足気だ。


神主は、試作レベルでのミシェルイメージで、アンドロイドのロボットで土台の試行錯誤を繰り返していた。 どのアンドロイド達もミシェルを産む為のアイドルロボットであり、進化の先の究極形態が、今のミシェル。


声だけで、歌を流したミシェルも有ったし、踊るだけのミシェルも有った。 だが、ミシェルとして、人の形でのミシェルは今の彼女が正真正銘。 神主の求めていたモノが、現実になったのだ。


何曲も歌うミシェルに沸いた夜は、過ぎる時の速さを麻痺させて。 夜遅くまで客達を虜にしていた・・・。


深夜12時。 ミシェルのサヨナラまで、お客は帰らず。 噂で集まって来た後からのお客で、クラブは満員を超えた。 ラストナンバーの【涙のソウルヴォイス】のバラードナンバーで、客席は歌声に聞き惚れて静まり返ってしんみりとしたが・・・。


歌い終わった後。


「ミシェルゥーっ、また来てねーーっ!!!」


「アンコールしてくれーーっ!!」


「ミシェル最高ーーーっ!!」


去るミシェルに、騒ぐ声は収まらなかった・・・。

どうも、騎龍です^^


ミシェル第三話・・・・何処までいけるかな^^;


のらくらがんばりますんで、よろしくおねがいします^^;



ご愛読、ありがとうございます^人^

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