其の二話
2、動き始めた心
ミシェルが目覚めた次の日の事。
「ん・・・」
神主は、ぼんやりと目を覚ました。 何だろう・・・目の前に何か見えている。 ピンク色・・・・文字・・・・少し左右に伸びていて・・・。
「んあ?」
気付けば、何時の間にか横に寝ているミシェルの胸だ。 じーっと見ているウチに、神主はいきなりミシェルの胸を触ったではないか。 しかも、軽く揉んでみると。
「いや~ん・・あはぁ・・」
ミシェルが眼を覚まして、甘い声を放つ。
神主は、身を起こした。 上半身はハダカで、下にはトレーナーズボン。
「ミシェル、起きたか?」
眼を覚ましたミシェルは、左手で胸を押さえながら身を起こして。
「はぁい」
と、恥かしそうに・・・。
神主は、ミシェルに。
「ミシェル、なんで一緒に寝た?」
少しぼんやり気味のミシェルは、
「だってベットが一つしか無いんですぅ」
「フム」
ミシェルの上はTシャツ、下は下着のみ。 髪も解けて色気がある。
「ミシェル、胸を触られて感じたか? 触られて嫌だったか?」
ミシェルはベットから出て、立って神主を見ると。
「イヤ・・ではありませんけどォ~。 なんか恥かしいですぅ・・。 それに、感じるのは普通です」
ベットの上の神主は、頷いて納得する様子。
「フム・・・生体反応も性感帯反応も羞恥心も女性意識も学習完璧だな」
ミシェルは、少し赤らめた困り顔で。
「タカヒロ様、あのぉ・・毎日触られるのですか?」
神主も起きて、ベットより抜けると。 顔を洗いに洗面台に向かいつつ。
「定期的に触るだろう。 ミシェルの反応がどう変わるか、調べないと」
と、言いながら内心。
(学習機能に、人間の精神の指導要領が多すぎたかな? 拒絶反応が出るかもしれないな)
あくまでも、ロボットを扱うような神主である。 神主は、基本的に女性との恋愛はしたことが無い。 イヤ、むしろ恋愛などは詰まらないモノとすら捉えている。 神主は、女性にモテ囃されるが、自身は研究一筋人間であり。 全ての行動は調査・開発・発見に求める追求のみ。
神主は、そうした人間だった。
さて、寝室であり私室でもあるこの部屋で、神主はコンピューターに向かい、ミシェルの行動のアレコレを打ち込む。 崩れた髪形、羽織っただけのYシャツ、いい加減な姿ですら神主はデキル男に見えてしまう。
太陽と同じ光りを放つパネルライトが、部屋の天井一面に填まっている。 眩しい程に明るい、朝陽に包まれているようだ。 この部屋は、神主のバイオリズムに合わせて照明が変わっていくのだ。 12畳の間取りの広い部屋は、観葉植物が部屋の四隅や神主の向かうデスクを仕切りのように囲っていたる。 インテリアとしても、空間に緑の調和を与えて、殺風景さを打ち消していた。
「ハイ、タカヒロ様」
ミシェルが、コーヒーを入れてくる。 昨日買い与えられた短いビニールのようなピンクのスカートに、Tシャツ姿。
「ん・・・ん?」
神主は、コーヒーカップとミシェルを見て、チョット驚いた顔で。
「ミシェル、お前・・コーヒーの入れ方知ってるのか?」
お盆を持つミシェルは、ニッコリ笑って。
「は~い、昨日の映画に出てました」
「ほぉ」
神主は、無造作にモニターに向かいながら一口含んで。
「んぐっ、ぶっ!!!!」
口の中に爆発物に近い衝撃を喰らった感覚を味わい、おもいっきり横の植物の根元に吹いた。
「グホっ、ゲホッ・・・」
咳き込む神主に、ミシェルは驚いて。
「タ・タカヒロさま・・?」
神主は、胸焼けを起こした。 恐ろしいまでにショッパイコーヒーで、香りも異臭を突き抜け刺激臭に近い。
「げほげほっ・・ミ・・ミシェル砂糖と塩が・げほっ・・間違ってる・・・・。 それに、コーヒーの量が・・・濃過ぎる・・・うげえっ!」
ミシェルは、困って。
「あれぇ、見ていたのとちが~う」
と、キッチンフロアに走った。
「げふぅ~、これは教育必要だな・・」
神主も、渋い歪んだ顔でキッチンに向かった。 水で口を濯いでから、キッチンスペースを見てみれば・・・。
「おいおいおいおいおい・・・・」
新しいコーヒーのマメが、袋から半分は無くなっている。 しかも、ミシェルが自分でまたローストと云うか、焦げるまでオーブンで焼いて。 それから擂り鉢で粉々に粉砕したようだ。 コーヒーではなく、炭汁を飲んだような物だ。
「ふぅ・・。 死ななかっただけマシか・・・」
神主は、不気味な冷汗すら掻いていた。 ミシェルにコーヒーメーカーとエスプレッソマシーンを見せて、作り方を教えた。 殺されては堪らない。
流石は、神主の生み出したミシェル。 遣り方を覚えれば、一発で作れるように・・。
「仕方ない、今日は生活に必要な事を全て教えるか」
神主は、年中開発・年中フリーな人間だ。 どう生きようと縛られるものは無い。 のんびりと、教育実習に入った。 なにせミシェルは大切な実験体。 生活に困らないように、教育することにこれからの観察の楽しみも広がると云う物だ。
ミシェルも、肉体は人だから当然栄養は食事から。
まず、料理。
「いいかミシェル、フライパンはこうして使う」
神主が、見事な手さばきでチャーハンを作る。 幾つか料理を作って見せた。
ミシェルは、目をパチパチさせて観察していた。 そして、ミシェルに遣らせて目玉焼きを作らせれば・・・・。
「よっとぉ」
思い切り振り上げたフライパンから天井にブっ飛んだ目玉焼きは、天井にベタリと張り付いて下りてこない。
「ミシェル・・・力の入れすぎだ・・・」
眉間を押さえて、神主は困った。 ミシェルは、神主に対しての全てに無抵抗になるよう教育されているが。 基本運動能力は、オリンッピク選手並み。 人工的に生み出した強化筋力に至っては、軽自動車を軽々持ち上げる力を備えている。
二人で昼食をしてから。
「よし、ミシェル。 次は洗濯だ」
(これは大丈夫だな、全自動だから・・・)
と、思った神主が甘かった。
ミシェルは、色落ちする物と神主の白いYシャツを混ぜようとするし、洗剤のボトルをそのまま口を開けて洗濯機に放り込む。 そして、やっと仕上がった服を、おもいきり畳もうとしてシワクチャにするし、アイロンを服の上に置いて黙って・・・焦げる変化を見るに終わった。
神主は、掃除を教えるのは止めた。 精密機器を壊されたくなかったから・・・・。
「最後だ、ミシェル。 これは使い方を覚えておきなさい」
神主は、ミシェルにラボラトリーの一角を占めるある装置の一つの前に連れて行った。 まるで、6畳間のカラオケルームがガラス部屋のようになった場所。 中にある機械で、色々な歌や踊りの練習が出来る。 ミシェルは、アイドルモデルの試作品だから、歌と踊りは自分で率先してするように行動思考に記憶させてあるのだ。
「うわぁ~。 タカヒロ様、踊ったりしてみていいですか?」
ミシェルは、嬉しそうに聞いて来る。
「ああ、構わないよ。 夜まで、使って遊んでみなさい」
ミシェルは、にこやかに自動ドアのルーム内に入って行った。
(う~ん、ミシェルは生々し過ぎるかな・・・。 今思うと、もう少し機械的な方が良かったか?)
神主は、ルーム内で歌いだしたミシェルを見ながら、そう思う。
機械の説明をして、ミシェルと神主の慌しい一日は、終わった。
さて夜の7時頃。 神主は、ミシェルに入浴を教える為に、二人で風呂に入る事に・・・。 しかし、まずは脱衣所で神主を気にするミシェルは、中々服を脱がなかった。
さて、風呂場に入って神主は、石鹸をスポンシに軽く擦って泡立てて。
「いいか、こうして洗うんだ」
ミシェルも神主も3畳ほどの洗い場にお互い裸で居る訳で・・・・。 湯気のけむる風呂場にて、神主は自分の体を洗ってみせる。
ミシェルは、やや赤らめた顔の興味津々といった感じの眼で、神主の肉体を見ている。 特に・・・筋肉とか・・・腰のくびれとか・・・アレ?
「ドキドキ・・・ドキドキ・・・」
「要らん事云うな」
自分が洗い終える前に神主は、ミシェルに体を洗わせて、今度は自分がミシェルの体を洗う様子を見る。
「もっと全身を洗いなさい」
とか、アドバイスを言っても。 ミシェルは、神主に見られている事にどうも集中出来ない様子だった。
さて。 神主は、先に湯船に浸かってミシェルを見て。
「ミシェル。 お前、そんなに俺に見られて恥かしいのか~?」
ミシェルは、神主に背中を向けて首を左右に。 しかし、赤らめた顔も、神主に背中を向けて居るのも、明らかな恥かしさの現われだ。
「ふむぅ・・。 こんな事インプットしたかぁ~? 俺?」
神主は、ミシェルに。
「ミシェル、こっちに向きなさい」
すると、ゆっくりとミシェルは神主の方に向く。 どうも、怖がっている訳では無いが、顔を赤らめて変なのだ。
「ミシェル、今日の感想は?」
泡に塗れた手で胸を洗うミシェルは、モジモジとして。
「・・・神主様と・・お風呂・・・」
「それだけかぁ~?」
「は~い・・・」
神主は、呆れて湯気昇る天井を見つめたのである・・・。
どうも、騎龍です^−^
ミシェルの2話目ですわ^^;
いやいや、難しいな〜^^; アイドル関係の小説・・・^^;
ご愛読、ありがとうございます^人^