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其の一話

1、新たなアイドール




ーーーーーーーーーーーーーーーーーぷろろ~ぐーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そこは・・・東京のアキハバラの某所。 ビルの地下深くにあるラボラトリー。


テニスコート一つは入りそうなだだっ広いフロアに、何やら小難しい機械が一杯在る。


フロア右のカプセルベットを前にした白衣の男は、カプセルの中に眠る裸の若い女性を見ている。 男は、大人びたインテリ然としたイイ男である。 眼前に掛かる髪を揺らして、裸の女性の顔をじっと黙って見つめていた。


一方、寝ている女性は、可愛らしさと綺麗さを兼ね備えた若い女性で。 生きているのか、はてさて死んでいるのか・・・。 まるで絵本に出てくる眠り姫のような感じであった。


そして・・・・徐に。


「フフフ・・・あはははは・・あーっははは、いよいよだ・・・いよいよ・・・・」


と、白衣の男性は笑い出し、タイル張りの天井を見上げた。


「出来ね~な。 何が悪いんだろう? う~ん、コレで後は眼を覚ますんだがなぁ~」


再度女性を見つめて、頻りに悩む白衣の男。


男の後ろには、少し間を置いてテーブルが在り。 カップヌードルの閉め忘れた蓋が開いて、湯気を上げていた。


すると。 男性の左側、様々な部品や工具が置かれている重厚な金属のテーブルの隅で、この場に似合わぬダンシングフラワーのような、白い百合の花がクネクネと花の部分を動かしては。


「イツマデアノマンマ? マスター、ヌードルガノビチャウヨ」


と、喋るではないか・・。


「ん? あ゛-----っ、ヌードル忘れてた!」


男は、急いでカップヌードルに向かった。


さて、カップヌードルを啜る男は、映画俳優にでも成った方がいいのではないかと思うぐらいにいい男だ。 柔らかい黒髪は、眼や耳に掛かり柔らかい印象を与える。 整った顔は知的で理性的。 歯は白く、瞳は切れ長で、鼻も程よく高い。


更に、背も日本人男性にしては中々高く、180位はあるだろう。 すっきりとした痩せ型で、立った姿は凛々しさを感じさせる。


彼は一体何者なのだろうか。


そして、カプセルに入っていた女性は・・・一体。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


20xx年、春。



毎日の乗降客数150万を超える東京のデジタルマーケットシティ、“アキハバラ”。 電化製品ならなんでも揃い、デジタル家電の聖地でもある。 メイドやコスプレ姿の者が街に居たり、ゲーム、映像ディスクの類から、様々なご禁制品まであるモンスターシティー。


その、アキハバラの駅前に近年オープンしたのが、地上150階を超える高層ビル。 その一階の入り口では・・・。


「お帰りなさいませ、ご主人さま!」


笑顔で可愛いメイドさんがお出迎えしてくれる。


【シャ・ン・グリ・ラ】


理想郷と名づけられたビルの一階には、今や大人気のコスプレメイド喫茶が有り。 進化し続けるアキハバラの名物に成っている。 安心価格の料金設定に、最新デジタル技術の装置で行われるイベントや、有名アイドルなどによるサイン会や握手会。 明るい店内、入りやすいオープンテラスも二階にあり、駅から伸びた連絡通路からも来れる。


だが、施設はコレだけに留まらない。


地下1階は、イメージコスプレクラブとして、夜になると踊る女の子やヲタクやオジサンが集まる盛り場に。 更に地下2階は18禁施設・・。


地上部も、3階から5階までは、レストラン街。 6階から10階まではデジタル家電の販売フロア。 15階までは、ゲームから映像・音楽ディスクに、本やコスプレ販売店などが入っていて。 16階から上50階までは、他社オフィスが入っている。


そして51階より上は、この【シャ・ン・グリ・ラ】の会社の専用オフィスとなっていた。 


さて、今、働いているメイドの女の子の中には、人であって人では無い者が居る。 人工的に生み出されながら、人間と同じ感触の肉体を持つ“ヒューマノイド”と呼ばれる彼女達。 この技術を初めに、数々の天才的な発明で特許王と言われ、このビルを経営しているのが・・・。


「いらっしゃいませ。 我がシャングリラに、何をお探しですかな?」


と、ロビーの受付で立派なスーツに身を包み、接客をしている男がそうだ。


あの、冒頭では地下のラボラトリーに居た男で、名前は≪神主 鷹博:カンヌシ タカヒロ≫35歳。


現実に、十年前。 アイドルとしての初ロボットであるアンドロイドを生み出して、莫大な利益を上げた人物だ。


人と同じ外見で、中身は防犯にも役立つロボット。 今や、女の子を置く店に一台はあるアンドロイド。 全く普通の人とは見分けがつかない。 しかも、人工知能を使って学習し、コミニュケーション能力も高い。


しかし、やはり生身の女性には、その価値が敵わないのが現実。 そして、その進化系がヒューマノイド(人工人間)である。 しかし、今だ完全に自立・独立した知能のヒューマノイドは居ない。 まだ、研究途中なのだ。


こんな彼だから、学会や倫理を重んじる人々からは、“マッドサイエンティスト”とか、“変質科学者”と言われている。


しかしながら、無償の純粋無垢で人を愛せるヒューマノイドの要望も高く。 姿の見えぬサイエンティストと異名を付けられ、雑誌などでは“ミラージュ神主”と書かれる彼。 そんな彼にに逢いたいと思う人の数も、毎日尋常の数では無い。


さて、神主は受付から姿を消して、今度はメイド喫茶の更衣室ロッカーにいた。 彼は気分転換に、こうして各階の店に顔を出しては、従業員として勝手に働いているように見せている。


現実の表向きの経営は、親友の男女数人に任せていて。 彼はもっぱら研究開発の日々であった。 この男が、影の経営者と知る者は、会社でも極僅か。


だから。


「あ、カンちゃんだ~」


「ホントだ、久しぶりぃ~」


「マジで、2週間ぶりっぽくない?」


彼がメイド喫茶に出れば、こんなセリフをメイドの格好をしたバイトの女の子達から貰いながらも。 メイドの女の子達と結構仲良くやって居て、神主自身はウエイターをする。 メイドの女の子達からは“時々バイトの男”とも呼ばれている。


「カンちゃ~ん」


神主の元に、一人のメイド姿の女の子がやって来た。


「ん? ミエコか」


張りの有る甘い声よし、やや童顔の愛らしい顔でルックスよし、気配りや気の回る八方美人で性格よし、89・56・85のスタイルでボディーよしの人気メイドのミエコである。 やや胸元が見えるような姿で、指名率ナンバーワン。 毎日ファンの男性に貢物を貰い、日常の服装もかなりのおハデさんな19歳。


ミエコは、神主の腕に絡み着いて、


「ね~ね~、カンちゃん。 今度、デ~トいこ。 ね、奢るからさ」


神主は、此処では貧乏バイト中年で通っているのだ。 だから、よくバイトの女の子に奢られる。


(全く、今時の若いコは恐れを知らん)


神主は、常々最近の若い女の子気持ちが解らない。 自分のような男でも、無防備甚だしい。


「まぁ、気分が乗ったらね~」


イケメンで、中年の魅力溢れる神主に想いを寄せる女性スタッフは多い。 だが、本人の自覚は微妙にズレる。 知性という点では自負があり、格好も付けるが。 ルックスにおいては、自覚も無いし。 興味が無いらしいのだ。


「ミエコちゃ~ん、ご指名来たよ~」


午後の日差しが入る窓側から来た別のメイド姿の女の子が指名を告げに来た。


「ハ~イ」


ミエコは、神主に近づいて、胸元を見下ろせるようにして上向くと。


「じゃ~ね。 デ~ト誘ってね~」


と、お客さんの方に行く。


(ま~ったく)


呆れている神主に、バーカウンターに居るスキンヘッドで格闘選手のような巨人男が。


「おう、カン来たのか? 休日で人手が足らん。 ウエイターに入れや」


「へーい」


神主は、社長代理の面々の友人として雇われているように装っている。 間隔週1で入ってるバイトウエイターなども、珍しいものだ。


神主は、メイドの女の子達や、お客のヲタクを見て、日々の研究のアイディアに役立てている。 こうゆう事をする事に、疑問もなにも持たない男なのだ。 いきなり思い立った様に長旅にも出れば、3日もゲーム三昧でいたり、気が向くとこうしてバイトにもやって来る。


「注文入りま~す。 コ~ヒ~とぉ~、ケーキミックスひとつ~」


メイドの女の子の声があちらこちらで上がり、神主は出来上がった料理やドリンクを運ぶ。 運ばれたテーブルでは、メイドの子が受け取って、ご主人さまなる方々にオススメしてる。


「ラッキ~ジャンケン、プイプイパ~」


何だか解らない呪文を唱えるメイドと、お客を見て。


(オワタ・・・セカイはオワタ~)


と、神主は呆れて思った。 


さて、様々なアニメやゲームの女の子のキャラクターが、店内を彩る。 ホログラフィックスの踊るキャラクターや。 3D映像のリアルな姿で、流行のアニメソングを歌うアイドルキャラクターのオブジェも見受けられる。


2階店内の奥には、アニメやゲームのワンシーンをカラオケならぬ、なりきり吹き替えでメイドの女の子と遊べるルームもある。 自分で映像を持ち込みなので、なかなかどうしてお客の層も幅広い。 


こんな感じで、今やメイド喫茶業界の変化の流れも速く。 もはや、アンドロイドには擬似ではなく、人と同じ物が求められていると神主は考えていた。


(ん~、生身の女の子は売れると思うんだよなぁ~)


今の研究は、まさしくそのアイドルを生み出す為の研究だ。


神主は、夕方まで働いて。 時間になったら早々に地下に舞い戻った。


専用の地下通路で、地下四階まで降りてから、卵型のエレベーターで一気に深い地下に降りた。


エレベーターが止まった地下500メートルの神主のオフィス。 開いたクリアーブルーの扉の外に出れば、左右に観葉植物が床に埋まっている大理石のような石の床・壁をした通路が延びる。 途中の出っ張った壁に掛かった白衣をスタイリッシュに纏い。 神主はラボラトリーに入った。


すると・・。


「ん?」


左の奥に在る巨大スクリーンのコンピューターの手前にある椅子に、何者かが座っている。 スクリーンには、神主の記憶させてあった、アクション映画が流れていた。


「・・・まさか・・・ミシェル・・・?」


神主がそう口に出した時、座っていた人物がこちらを向いた。


神主は、やや驚きの眼差しで歩いて行く。


向こうも、椅子から降りて歩いてきた。


裸の女性・・背丈は160くらいか。 胸が形の良い張りを見せて、歩くたびにプルプルと揺れている。 可愛らしく麗しい顔立ちで、彼女は笑ってる。


神主は、女性まであと五メートル手前までで立ち止まり。


「ミシェル・・・起きたのか?」


すると・・・。


ミシェルと呼ばれた全裸の女性は、笑ってクビを傾げて。


「タカヒロ様ですね。 ミシェルで~す。 よろしくおねがいしまぁ~す」


やや甘えた感じの透き通る声。 声優にでも使えば人気が出そうな・・・・。


(フム、何で起きたんだろう・・・・。 ま、いいか。 私が天才と云うことにしとこう)


こうして、ミシェルは生み出された。


彼女は、完全な人間の肉体と心を併せ持った人工人間なのだ・・・。 もはや、彼女の脳は制御された人工知能ではなく。 完全に人と同じ、自由な感情の芽生える脳であった。


神主は、白衣を脱いでミシェルに投げた。


ミシェルの頭から前面に白衣が被って隠れる。


「それを着てなさい。 どうやら、お前の服を上にお買い物だな。 どれ」


神主が携帯を取り出して電話を掛けるのを、白衣を着ながらミシェルは微笑んでいる。


神主とミシェルは、こうして生活を共にする事に成った。 

どうも、騎龍です^^


知り合いと共同で生み出したミシェルのノベルです^^


このノベルが、ある意味でミシェルに命を吹き込む物と思って書いています^^


これからのご愛読、よろしくお願いいたします^人^

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