第104部
第44章 神の社
目が覚めると、地べたに引っ付いていた。
「う、動けない?」
翔平が目が覚めると、目の前に、佳苗が転がっていた。
「佳苗!佳苗、大丈夫か?」
佳苗は弱弱しくも、大丈夫と言った。だが、一人見当たらなかった。
「長見はどこに?」
「翔平の、ちょうど後ろ側だ」
長見の声が足の方から聞こえてきた。その時、上から神の声が聞こえた。
"さて、もう立ってもいいぞ。今のはすまなかった。この世界に適応できるかどうか検査させてもらっていたのでな"
/他の神は集会を開くらしい。急ごう。父も来ているほどだ。何らかの重大事件が起こっているのだろう/
翔平が立つと、小さな小屋が見えた。佳苗は、ここに降り立つ衝撃で、足をくじいたらしい。立てずにいるところ、翔平が見つけ、おぶって行く事になった。
「翔平の背中って、温かいね。このまま眠ってしまいそう」
「そこで寝るなよな。こっちは大変なんだから」
後ろでは、長見がその光景を見ていた。
「なんか、兄妹みたいだな」
少し笑いながら、早足で、彼らに追いついた。ちょうど、追いついた時、その小屋に着いた。
"ようこそ、神の社へ"
カオス神が中へ誘導した。
中は、広かった。床は木で出来ており、そこに、座布団が12枚置いてあった。さらに、椅子がひとつ置いてあり、それぞれが、ちょうど、正十三角形を描くようにしてあった。そのうち、すでに、椅子以外の7つは埋まっていた。さらに、神は2つに座ったため、残った3つにそのまま座る事になった。そして、カオス神が、それぞれを紹介した。
"私から、時計回りに、イフニ神は、もう知っているな。それに、サイン神、アントイン神、エクセウン神、ガイエン神、カオイン神、スタディン神、クシャトル神だ。スタディンとクシャトルは、君達も伝説とか写真とかで知っていると思う"
「ええ、ところで、あそこの椅子は誰が座るんですか?」
"あの椅子は、我らが父が座るのだ。その者の名は、誰にも唱える事は出来ない。我々神ですらも。だが、いつの日にかそれを唱える者が現れるだろう。その者を契機として、"
少ししてから、帽子をかぶった、少しくたびれたような感じの人が入ってきた。
「やれやれ、みんな、揃っているな」
"父よ、今回の集合には何の意図があるのでしょうか?"
カオス神がその人に質問する。
「我は、おぬしらを作った事が正しかったのだろうか、むかし、おぬしらが作った人間と言う存在をはじめて見た時、素晴しい物だと思った。だが、宇宙空間がそれぞれあり、それぞれに神がおり、だが、ひとつの宇宙空間には、神が宿れなかった。そこにエネルギーが流出し続け、危機的状況になった。今でもそれは存在はしているが、完全には断絶しておらん」
その人はそう言った。そして、こう続けた。
「断絶を完全なものにすると、こちらのエネルギーがよどみ、世界の均衡バランスが崩れてしまうのだ。それを防ぐためにも、完全にふさいではならん。シャウドの人々にも、神々が必要かもしれないな…さて、誰をたてるか…」
視線は彼らに集まっていた。
「え?俺達ですか?」
"やってくれるか?この場にいる、神以外の存在は、お前達しかいないのだ"
カオス神がこちらを見ている。不意に、スタディン神が話した。
「大丈夫だ。自分達だって、神になるのは正直怖かった。でも、一度なったら結構楽しいぞ」
「神が神を作る。このままいったら、いずれ、この世界は滅亡するな」
その人は言った。
「分かりました。しかし、あなた達も危ないですよ。なにせ、教団があなた達を狙っていますから」
"ああ、そうだったな、まず、その教団を壊滅させてからだな。お前らが神になるかどうかは"
ガイエン神が話した。
`さて、君達は、いったんこのまま戻る。しかし、時が満ちれば、君達は自然にこの世界にくる事になる`
"じゃあ、教団の総本部がある所に連れて行ってあげよう"
「それは、どこなんですか?」
長見がカオス神に言った。
"それは、スカイフェアだよ"
その途端、目の前が激しく回りだし、そのまま気を失った。
"やれやれ、神の気に長い間晒され続けたからか"
「私達は、そんな事なかったのにね」
"スタディンとクシャトル達は、元から魔力が非常に高かった。こいつらは、魔力は、どうにか170台だ。そのせいで、魔法系には弱いんだな"
カオス神は、彼らを軽々と担ぎ上げ、そのまま運んでいった。
「あれ?ここは?」
"気がついたか。ここは、俺が作り出した仮想空間だ。起きてからじゃないと、運べないからな。さてと、全員を叩き起こしてくれ。すぐ出発だ"
長見は、翔平と佳苗を起こし、この仮想空間から出て行った。
"さてと、ここがスカイフェアだな。お前達が向こうに行ってから1週間は経っている。警察官が大量に動員されてあちこちを捜索してる事だろうな。だから、俺達は、これから再び変装する事になる"
カオス神は、体、身長、体形、性別、見た目の年齢。全てを変えた。
"これが、君達の名前だ。よく憶えときたまえ。職務質問時にはこれを言う事になるからな"
「私は、安藤愛海だって。11歳?私、もっと上の人の方がいい」
"贅沢言うな。俺だって、こんな格好したくはないよ"
そう言いながらも、カオス神は、女性の姿も気に入っているようだ。
"この世界には、日本人系が多いからな。俺の名前は、高田セリカだ。アメリカ人とのダブル"
「そこまで決めなくても…俺は、えっと、近藤伸次だと。郵便局職員?34歳ですか」
「さてさて、自分はどうだろうな。山口菜緒…女性ですか…それに、19歳って、また微妙な年齢で」
"さてと、これでそれぞれの名前が決まったな。これらは、みな、旧WPI機関、現在の魔力増強教団の職員でもある。では、行こう。教団総本部は、あそこにある"
カオス神が指差した方向には、とても高いタワーがあった。
「あれは?」
"魔力増強教団総本部、重力発電の受け口にもなっているタワーだ。あそこの全ての階で、教団の事務所となっている。さらには、我々がいなくなっている間に、さらに、4柱の神が取られたという。残っているのは、ガイエン神、アントイン神、それに、元々宝玉自体が存在しない、スタディン神とクシャトル神。以上だ。宝玉を利用して、神の社に行くためには、元々の7つだけで事足りるが、今では、エネルギー分野をスタディン神とクシャトル神に分けている。だから、神の社への扉を開くのも、彼ら兄妹の役目だ"
「それって、事実上、封印されたもの同然じゃないですか。どうやって、行くんですか?」
"最後の手段としては、空間自体を歪ませる。その時発生するエネルギーは、莫大な量になる。それを、一気に圧縮すると、非常に不安定ながら、神の社に繋がる道が出来る。そこを通るんだ"
「それに必要なエネルギーは?」
長見がいった。
"少なく見積もっても、2.7543×10^900Jね。早い話が、超大型戦艦一隻丸ごと潰したか、惑星1個を消滅させるぐらいの量ね。で、これが最低推測量になる"
「そんな量は、どこにもないから、事実上不可能と、そう言う事だね」
神に問いただす。カオス神はうなずいた。
そして、教団総本部前に到着した。
「このタワーは、発電塔とも呼ばれている。高さ2890m、総従業員数4万5千人。この宇宙で2番目に高い人工建造物。但し、宇宙エレベーターは除くけども」
長見が説明した。見上げると、雲より高くあった。だが、恒星が重力崩壊、ブラックホール化してから、すでに、数百万年と言う時が過ぎているこの町には、光は、人工の光しかなかった。それでもなお、昼夜が繰り返されているのは、それぞれの担当しているこのような巨大建造物の一番高い所から、光を発しているからである。
長見達は中に入って、受付の所に行った。人がいなかった。仕方ないので、館内図だけもらって、立ち去った。