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第103部

第43章 革命


第3惑星に降りたち、長見達が行った場所はスラム街だった。

「ここの、どこにいるんだ?」

そこの老人に聞いた。

「すいません、この辺りに、川守治巳さんがいると聞いたんですが…どこか知っているでしょうか?」

「ああ、それだったら、次の辻を右に曲がった3軒目の左の家だ」

「ありがとうございました」

長見達が行くと、老人は電話を入れた。


「えっと、右に曲がって、3軒目」

ついたのは、右と左に挟まれた、今にも潰れてしまいそうな家だった。扉がついていなかったので、そのまま中に入った。

「失礼します」

すると、黒光りしている銃口がこちらを向いていた。

「お前らは何者だ!」

奥からは、銃口に負けず劣らず黒い顔をした人が出てきた。

「私達も、大統領、いいえ、教団とか言う組織に追われてるの」

「そうか、だが残念だな。俺は他人を世話をするほどいい大人じゃない。さっさと帰れ」

銃はしまったが、それでも、こちらをにらんでいた。

「いや、まて。教団と言ったな。あの、魔力増強教団とか言うものか?あれには、俺も苦労されている。ならば、話は別だ。そこらの椅子にでも座れや」

椅子に座ると同時に、机の後ろから何かの紙が出てきた。

「これが、読めるか?」

「いえ、一切読めませんが、なんですか?」

「今の凡庸日本語と呼ばれるものが出来てから400年ぐらいだ。みんなに読めるのを元にして作られたものだが、それ以前の物は、このように旧日本語と呼ばれている文体によって書かれている。だが、これを読める人は既にこの世の中にはいない。だが、連邦政府が所有している、正確には強制的に接収した物だが、初代連邦憲法の草案を書き上げて、そのまま大統領にされた大島仁人と言う人の事を聞いたことがあるか?」

「いえ、ありませんが」

"会った事もないな。だが、噂を聞いたことがある。スタディンの親友であり、エアグループの4代目かそこらの社長だった、エア・アダムが、彼のAIを持っていたと言う話だったな"

「それだよ。その人は、西暦2030年〜2080年のいずれかの年に死んでいる。スタディンさんが、過去に戻った時を境に、世界の状況は一変しただろう。その時の大統領のAIだ。その人は、連邦政府が始動した時の人だ。今から見れば、750年も昔の人だから、旧日本語も読めるはずだ。読めたら、もうこっちの物。さまざまな研究が一気に進むだろう」

目をキラキラ輝かしながら言った。

「で、君達は、大統領に何の用なんだ?」

「彼女が所有しているネックレスを借りたいと思っています」

「あの、神の社に行くネックレスか?あれは、嘘っぱちだろう?そんな物を求めてどうするんだ」

"あれは、うそではない。何せ私が渡したのだから"

カオス神が言った。だが、川守が信じるわけがなかった。

「そんなのは、嘘だろう。ハハハ、神様なんて、この世界にいるわけないもんな」

"神がいないとするならば、この現象をどう捉える?"

カオス神はそう言うと、外にみんなを促した。全員が外に出た時、上をゆびさした。その後、下を指差し、呪文を唱えた。

"我が父なる力よ。我が母なる力よ。我、いまここに、魔獣を召喚し、この世を滅ぼさん。世界を混沌へと導き、宇宙の安寧を崩壊させん!"

その後は、何語か分からない言語で呪文と唱えた。そして、天からは、巨大な火の人形が。したからは、巨大な土の人形が現れた。

「これは?」

川守は悩んでいた。周りに被害を出しながら、しかし、神の存在を信じないとするならば、これらは一体なんなのか。そして、次々と逃げ惑う人々を吸収しながら、さらに巨大化していた。火の人形は、蛇のような姿に変わり、土の人形は、巨人のような形になった。


「分かった。神は存在する!これでいいだろう」

カオス神はこちらを振り返り、

"ああ、それでいい"

と言い、そして、二つの人形を再び元のあるべき姿に戻した。


再び家の中に入ると、川守が言った。

「で、ネックレスを手に入れたら、どうするつもりなんだ?」

「無論、神の社に向かう」

「神の社に行ったら、どうするつもりだ?」

「神々の力を借りて、この宇宙の外に行きます」

その途端に、川守は笑い出した。

「そんな所に行けば、死んでしまうぞ」

「だからこそです。神の力を授けた存在。神の父とも言える存在に会いに行きます」

「ま、がんばれよ。でも、目的はほぼ同じなんだな」

「どういう事ですか?」

長見が、不思議な顔をしていた。

「そちらはAI。こちらはネックレス。共通しているのは、大統領と言う存在だけ」

「そこだよ。共通項がひとつある。終身大統領は、教団の団長だという事を知っていたか?」

一同は驚いた顔をした。

「大統領が、団長?」

「そうだ、彼女の曽祖父が、イフニ・スタディンと言う人で、彼が、世界で最初に神になった人類だ。その末裔だ。神になっても不思議じゃないだろう。そんな人だから、みんなが担ぎ上げる。未来の担い手とか、適当な事言って。実は、裏から糸を引くつもりだった。だが、彼女は、大統領につくや否や、有無を言わせぬ方法で、終身大統領制を敷いて、絶対服従を強制した。我々は、この文面に、それを破壊するための強力な武器があると信じている。それを求めているのだ」

「ならば、私達は、彼女のネックレスを取るためにあなたと手を組みましょう。私達には、神が付いています」

"ああ、我々も協力しよう。元々の彼の信念は、このような独裁国家ではなく、世界平和を信念として、それを遂行するための機関としての連邦政府だったはずだから"

そして、ここに、革命軍が組織された。


さらに、1ヶ月と言う時間をかけて、革命の準備は着実に進んだ。

「選りすぐりの精兵達だ。明日、われわれの革命が実施される。終身大統領制を倒し、我々が政権を取り、よりよい社会を作り出すのだ」

みんな、気合が入っていた。そして、次の日には、大統領誕生日になっており、世界中から、嫌々出席させられる人達が続々と到着していた。

「この時を逃すと、1年後になってしまう。それをする事は出来ないし、さらに、我々が流す血は、未来の革命家達の生きる糧となるだろう。恐らくは、更なる未来。同じような状況が生まれるだろう。だが、我々は、今、この時代で戦う。明日がその時だ」


そして、翌日。大統領が現れた。バルコニーでにこやかに手を振っている。軍や一般人を動員して、さまざまな事をしている。この連邦の成り立ち、自分が即位したきっかけ、遥か昔の絶対王政をほうふつとさせるような内容ばかりだったが、そこは、うまく隠されていた。いま、バルコニーの前を通り過ぎているのは、第1師団陸軍歩兵中隊だった。銃を肩に当て、行進を続ける。そして、最後の一人が通り過ぎた途端に、革命が始まった。


連邦政府樹立以来、幾度となく革命騒ぎが起こった。だが、その度に、成功と失敗を繰り返してきていた。今回は、大統領の殺害を最初として、大統領府の占領、憲法の改正、独裁政治の永久廃止、一時的な権限掌握、その他さまざまな事をした。未来の人は、これを成功と称する事になると思われた。


「これが、彼女が所有しているネックレスだ」

そういったのは、現在、暫定大統領の職に就いている、川守だった。彼が指差していたのは、さまざまな宝石のネックレスが、うずたかく積み上げられている山だった。この大統領府の中を探して、彼女の所有物を全て競売にかけるのだった。だが、その前に、ネックレス類を、彼らが欲しいと言っているネックレスをあげるために、こうして山にしているのだった。大統領執務室の床には、カーペットが敷いていた。だが、そのカーペットが見えなくなるぐらいの量があった。

「どうだ?カオス神。この中にあるのか?」

"私によると、この中ではなく…"

ゆっくりと腕を挙げ、ある絵画を指差した。

"あの後ろの隠し金庫の中にある"

人を呼び、絵画をおろした。誰が描いたかわからないが、なかなかの腕前だと思った。

「これか」

川守が見たのは、絵画のぎりぎりの大きさの大きな金庫だった。真ん中には、ダイヤルが5つ付いており、さらに、鍵穴が4つ付いていた。

「さて、どれが本物だろうね。それに、全部本物だとすると、鍵はどこに?」

"鍵は、要らない"

カオス神が、金庫に近づく。周りの人は固唾を呑み、遠くから見ていた。カオス神は、金庫のダイヤル一つ一つに、手をあてがい、開けていっていた。全てが開くと、鍵穴の所に手を当て、ひねるような動作をした。すると、驚くべき事に、次々と開錠されていくのだった。

「さすが、神だ」

全てが開くと、自動的に開いた。中からは、財宝が山のように出てきた。

中世ヨーロッパの絵画、近代美術の彫刻、連邦が発足してからの現代を彩るさまざまな作品。それに、ゴッホ、ルノワール、ゴーギャンなどの、19世紀や18世紀に活躍した有名な人々の作品もおいてあった。さらに、今は見られない珊瑚、魚拓、大理石、数千カラットにはなると思われるダイヤモンド。そして、一番奥、小さな桐の箱が出てきた。これには、南京錠がかかっており、さらに、高感度センサーも付いていた。

「これが、神のネックレス」

"そうだ。この中から、特定の波動を感じる。この中に、神の社に行くネックレスが入っている"

「開けてくれませんか?」

"ああ、いいだろう。だが、その前に、すまないが、みんなこの部屋から出て行ってくれ。イフニ神はここに残ってくれ"

/なぜですか?/

"いいから"

全員出て行くと、内側から開錠不可能な神の魔法により、封鎖されてしまった。


数分後、中から扉が開かれた。

"入ってもいいぞ"

部屋の中に入ると、あれほどあった宝石や装飾品類は全て片付けられていて、真ん中に紋様が描かれていた。

「この模様は?」

"これは、この世界と神の世界を結ぶための扉だ。この円には、ウロボロスの蛇が描かれている。己の尾を噛む事から再生の象徴として、さまざまな所に描かれるようになった。そして、それぞれの点は、人の魂だ。扉を開くためには、人の魂を糧にして、蛇の力によって開かせる。だが、今回の場合は、このネックレスを使う。実際に、人の魂を使用すると、数万人は最低でもいるだろうからな。さて、神の社に行く人は、この円の中に入ってくれ。それで、このネックレスを発動させる"

翔平、長見、佳苗、イフニ神、カオス神が円の中に入っていた。ただ、革命の指導者であるあの人は、円の中には入らなかった。

"お前は来ないのか?"

「ああ、自分には、この国を正しい方向に導くという使命がある。それを果たさないと、そちらには行けないよ」

"そうか、では、行くぞ。みんな、心の準備は?"

答えを聞く前に、呪文を唱えた。唱えるごとに、下の図形がさまざまに動き出した。

"我、我が父の力に請う。我、我が母の力に請う。我、我が神の力に請う。我、我が僕の力に請う。我、神の社に行き、神の力を欲さんとす。我、神の社に行き、神の前に平伏さんと欲す!"

光が増して行き、世界が白くなった。そして、その直後、完全な闇が彼らを襲った。

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