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伯爵令嬢と思い出の花  作者: 藤代みやこ
1/1

1.唐突な決定

見切り発車です。最後まで頑張ります。

あれは、よく晴れた日のことだった。

真っ白な花が咲き誇る庭園で偶然出会った妖精の様な少年を、私は今でも忘れられないでいる。















「えっと…、お父様、それ本気で言っているのですか?」

「本気も何も事実だよ。今朝先方から手紙が届いた。驚きだねえ、今をときめくウォレス公爵家の嫡男様がうちのセシリアに一目惚れだなんて。良かったじゃないか。」


良いご縁だよ~、と暢気な父親のブラッドの言葉に若干の目眩を覚えつつ、なんとか次の言葉を探す。


「いやいやお父様良いご縁なのは分かる。それはもう良縁だってことは痛いくらいに分かってますよ。相手は公爵家、しかも現王太子殿下と従兄弟であられる嫡男様が、家格が伯爵なだけで大きな力も持ってない我が家と婚姻を結びたいだなんて…。有り得ないです。あまりにも良縁過ぎます。美味しい話すぎて逆に何か胡散臭い!!つまりやだ!!」


胡散臭いだろどう聞いても!!なぜ我が家なのか。

うちなんて領地の広さこそあれど圧倒的に農業が8割を占めるドのつく田舎貴族だよ。特産品のうちのワインは有名ですけども。それ以上でもそれ以下でもない普通の…。ん?一目惚れってさっきお父様言った?


「気付いた?一目惚れだって。…セシリアに一目惚れねぇ。ないことでは…ないんじゃない?多分…。」


首をかしげて呟く。心配になったからって声に出してそう何度も手紙を読んでどうするのよお父様。

あまりに父親が言葉を濁すので言っておくが、私の容姿は決して悪くない。父親似の目は薄い緑でお気に入りだし、肌だってスキンケアには気を使っている(主に侍女が)。茶色い髪なんかは光の具合でキラキラと光って見えるから、よくお友達の子爵家の娘ヘレナから羨ましがられる。

ただ、それ以上に大きな個性があるわけではなく…本当にどこにでもいる貴族の令嬢の範囲なだけなのだ。


「おい親父そこは言葉を濁すんじゃない!!……ゴホンッッ、お父様、いくらなんでもその言い方は酷すぎますわ。」

「娘よ、隠せてないから。」


全く、昔からお転婆だとは思っていたが…とブラッドが頭をおさえる。


「まあまあブラッド、セシリアがお転婆なのは今に始まったことではありませんわ。これでもこの子ご婦人方からの評判はとっても良いのよ。この間もアーキン侯爵家の大奥様にお褒め頂いたの。」

「アイリーン…」


母がのんびりとした調子で涙目の父を諭す。そうです、お母様もっと言って。


「でもまあ永遠に猫を被り続けられるような器用な真似はセシリアには出来そうもないし、相手が一目惚れだーって言ってる間にさっさと捕まえときなさい。セシリア、例え相手の一目惚れ発言が嘘でも捕まえたらこっちのものよ。」

「うわあああんお母様までひどい!!」


それ娘に言う言葉じゃ絶対ない!!何?それでお父様もひっ捕まえたって?…聞かなかったことにしよう。


「ひどいものですか。17歳、そろそろ結婚の話が出てもおかしくないでしょう。結婚出来そうにないのなら別にそれはそれでよろしいかとも思っていましたがこんな風にお相手に是非にと言われるのならば、母として当たり前の反応です。」


母親の言葉に頷くしかない。正論だ。


「…まあ確かに何故セシリアなのかは気になります。しかし、ウォレス家は悪い噂を昔から聞かない全うなお家ですし、今の御当主様も奥様もとても良い方ですし。特に奥様のエイダ様は正義感に溢れた方なのは有名です。ご長男なんてこの間近衛団の副団長に任命されたとか。ご令嬢の間でも有名でしょう。金の髪と王家の紫の瞳を受け継いだ"紫の騎士"のことは。」


つまり、と一言おいて、


「こちらとしては断る要素も断れる要素もひとつもありません。いじめられたり殴られたり無視をされたり…そんな酷い扱いをされる場合なら帰って来ても構いませんけど、何も知らない内からいやいやするのは許しませんからね。セシリア、分かりましたね?」


こちらから断ることは出来ない、と。


「………分かりました。」









セシリア・オルグレン、17歳。

どうやら婚約者が出来るようです。













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