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77.乙女心と乙女心

豆料理に豆スープに豆のデザート。

え?何で?

食堂の一角で、僕は目の前に広がる豆料理とエレンの顔を交互に見た。

「どうぞ、召し上がれ」

「いや、無理。頼んでないよ。エレンの方にあるのが、僕の頼んだものな気がするけど……?」

「そうよ。交換したの」


なぜだ?

僕は暫く考えた後、僕の目の前の豆スープをスプーンですくってエレンの口元に持っていった。

「あーん」

僕のしている事の意図が解らないと言った様子でエレンが僕を凝視する。しばしの沈黙の後、はっと我に返ったエレンが早口でまくしたてた。


「ウィルのバカ!何で私に食べさせようとしてるのよ!わかる?これ嫌がらせなんだからね」

「そっちだったかー!嫌がらせなのか、食べさせてもらいたいのか、どっちか迷って。で、何怒ってるの?」

話を聞きながらお互いのトレーをさり気なく交換する。


「ウィルが絵を描く事、秘密だって言ってなかったかしら……。どうしてライラさんも知ってるの」

「そっか、ごめん。僕が恥ずかしいといったのを覚えておいてくれて、秘密にしてくれていたんだね。ライラに見られた時、秘密だったからこそ、あんなに全力で僕は止めに入ったんだろ?結果、バレちゃったけど」

「それにしてはライラさんの反応が違ったような。すごく、以前から知っていました感があったわ」


それ以上聞いてくれるな。説明すると長くなるし、本当にどうでも良い事だ。ステテコ云々はどうか忘れて欲しい。


「僕の絵みたいな絵を昔に見た事があって、感極まったらしいよ」

「ウィルみたいな絵を描く人が他にもいるのかしら?珍しいわね。それよりも!あの後、ライラさんに2枚も描いてあげたでしょ」

ライラ〜。まさかまさか、見せて回ってないよな?嫌な予感がする。

「この前、私の持っている絵をもう一度見せて欲しいってライラさんが訪ねてきたの。ウィルに了承を得ていないから迷ったけど、一回見てるし断わるのが難しかったから見せたわ。その時、自分も貰ったと言って、お兄様とアルベルトさんの絵を見せてくれて、如何に素晴らしいか語ってくれたの。1時間はかかったかしら。私の持っている絵もとても褒めてくれたわ」

絶句である。1時間も可哀想に。

前から思ってたけど、ライラは人の都合を考えないタイプだな。

見せて回られたらたまらないので、人に見せるならもう描かないと脅しておこう。

ライラ対策を考えながら、絵描きの性で感想を聞きたくなった。

「エレン、僕の絵をどう思った?」

「両方とも凄く良かったわ!特にお兄様の格好良さと優しさが良く出ていた。隠さなくても良いと思うの。私のも皆に自慢したいくらい。ライラさんも貰ったって聞いて、寂しかったから豆料理くらい良いと思うわ」

寂しかったから、僕は豆料理の刑になりそうだったのか。



「ウィルの絵か。私も何かの機会に頂けないだろうか」

それまで黙って横に居たギルが発言した。

ギルいたの?状態である。


「何の絵がいいかな?ギルの為なら直ぐにでも取り掛かるよ。あと、あんまり人に見せないで欲しい」

「個人での鑑賞用だ。心配には及ばない。……ライラの絵をお願いしたい。ライラがその、私の絵を持っているという事が嬉しくて…しかも良さを熱弁してくれていたんだろう?」

「あ、ああそういう事になるね。ライラはアルベルトの絵も持ってるんだけど…。聞いてる?ギル」

全然聞いている様子がない。とても幸せそうだ。

今まで存在感が無かったのは人知れず照れて身悶えてたからか!何かライラの気持ちと温度差を感じるけど。

せめてもの慰めに僕は一つ思いついた。

「絵柄はギルとライラにしてあげようか?」

久々にギル×ライラのカップリングイラストが描ける。これは自分も嬉しいな。

「!良いのか?」

「どうせ描くんだし、何でもいいなよ。誕生日だって近いんだし」

余程嬉しく思ってくれたのか、笑顔が眩しい。余りの神々しさにカップリング萌えとか思っていた僕は溶けてしまいそうだ。


「私もその…。その…」

下を向きながらもごもご言い始めたエレン。

何だろと思って見ていると、ギルが溜め息をつきながら、エレンの代わりに言った。

「エレンはウィルの姿絵が欲しいそうだ」

「ん?そうなの?エレン」

エレンが少し間を置いてコクリと頷く。


「僕の絵…。何?機嫌が悪い時に踏みつけるとか?ビリビリにしたいとか?」

「そんな事の為に描いてもらう訳ないでしょ!!私に対してどんなイメージなのよ!」

「え、じゃあ何に使うの?」

「普通に飾るのよ。普通に。お兄様にプレゼントにくれるんでしょ。私にだってくれたっていいじゃない。小さくても良いわ」

「良いけど。あ、わかったダーツの的とか?」

「ウィル、それ以上何か言うと口にこのスープ突っ込むわよ」

暫くやりとりを聞いてたギルが僕達2人の会話に割って入る。

「何に使うかは貰った人の自由だ。聞いてやるな」

ギルにまでそう言われ、それ以上の追求はしない事にした。


それにしてもプレゼントに自画像って、無いよな。自画像を描くこと自体が微妙だ。

前世で描いていたウィリアムのイラストは、甘いセリフを吐きまくるキザキャラに相応しく、やたら格好つけたポージングが多かった。

以前ライラが、自分のイラストを欲しがるのはナルシストだけだとかなんとか言っていたけど、それなら自分で自分を描く人は何なのだろう。

まさか、ナルシストにはならないよな?

そもそも、ゲームのキャラ設定からしてウィリアムってナルシストくさいんだよな。やだなあ。

そんな事を思いながら、エレンに絵を描くことを約束した。








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