71.後夜祭(ギルバート視点)
6回目の更新になる筈でしたが、昨日寝落ちしてしまいました。これで文化祭お終いです。
ライラと私がダンスを踊り終えると、夜空に花火が上がった。
「こんな演出あったっけ?ウィルが企画?成る程」とライラが仕切りにぶつぶつ話している。
美しい色とりどりの火花をライラと一緒に見上げた。
後夜祭、思い切ってライラをパートナーに誘った。
最近はアルベルトとばかりいるライラだから誘っても断られるかと思ったのだが、アルベルトは業者として文化祭に参加してて忙しく。
ルークも出し物があるようで手いっぱい。
ディーノとは、ソロモン・グランディの一件以来、何やら距離が出来たのかディーノから誘う気配はなし。
結果、ライラを誘う人は誰もいなかったようで、あっさりオッケーを貰えた。有り体に言えば暇だから来てくれたのだろうがそれでも嬉しかった。
ダンスを終えたライラは、近くに置いておいたぬいぐるみを取りに行く。今日、学園祭を一緒にまわっている時にウィルとエレンの出店で買ったものだ。学園祭を見ている間、他にも色んな物をプレゼントしようとしたのだが、全てライラに断られていた。ウィルの強引な押しによって、やっと渡す事が出来た。今日の事を思い出すきっかけになればいい。
ソロモン・グランディの事件があってから、以前ライラに感じていたよそよそしさは消えた。
しかし、以前はライラの方からも私を(デート……というのには余りにもおこがましいが)誘ってくれたりしていたのだが、最近はそれが全くない。
デート(おこがましい事は承知だが、他に適切な表現が思い浮かばないのであえてデートという単語を使う)自体は私が誘えば良いことなので問題にはしていないが、急にまったく誘われなくなると、私に対してライラはどう思っているのか不安になるというものだ。
一体、目の前の女性は私のことを異性として意識してくれているのだろうか。私からの誘い、アプローチの数々は少しはライラに届いているのだろうか。(プレゼントは度々試みるも、まったく受け取ってもらえていない。)
よそよそしさは無くなったとはいえ、以前その部分に関してはライラの中に開かない心のドアの存在を感じるのである。
生まれてこのかた、このような悩みを持つのは初めてだ。どう対処したものかもよくわからない。
ぬいぐるみを手に、花火を見ているライラはとても楽しそうだ。
「本当に素敵ね。花火なんて久しぶりに見たわ」
「ああ」
プラチナブロンドの髪が光を反射して、夜空の星のように煌めく。今日は髪をアップして後ろにまとめあげていて少しだけ出てる後れ毛が妙に艶めかしい。
サイドの髪がひと房はらりと落ちている。耳にかけてあげようかと思ったが、触れるのは躊躇われた。息をするのも忘れてじっと見ていると視線に気がついたライラがこちらを見た。
「なぁに?私ばっかり見てない?」
「楽しんでるライラを見ていたくて」
「変なギルね。花火を見れば良いのに。ほら、綺麗だわ」
「ああ、綺麗だ」
勿論花火の事ではない。
パパバッと最後の一つが上がったようだ。ああ、今日が終わってしまう。やっと掴んだ2人の時間。一瞬のように短く感じる。
「貴女は……私の側に居てくれるだろうか?」
ふと、呟きともとれる言葉が漏れる。
「そのつもりよ。絶対に議会メンバー入りしてギルやウィルと一緒に仕事をする」
迷いなく言い切るライラ。
そういう意味ではないのだが、と苦笑するが、これも私とライラの大事な絆だ。
後夜祭とともに1日が終わる。
帰途、ライラと取り留めもない話をする。
「そういえばギルはもうじき16歳ね。いよいよ王位継承に向けて色々準備が始まるんじゃない?」
「そう立場がはっきりと決まった訳ではない。父王も健勝であられるしね。ただ大人として認められるようになるというだけだ」
「そうかしら。私の状況に比べたら、ほぼ確定のように思えるけど。こんなに優秀な第1王子が成人するのだもの、国王様は安心されると思うわ」
「父の期待には答えたいな。まだまだだけど」
「ギルってば、真面目!」
早く父に追いつきたい。
……だけれど、父の隣にいるあの人に認められることは最早ないだろう。
一瞬そんなネガティブな考えが頭をもたげたが、ライラを目の前にすると、気弱な心は胸の奥底に沈んでいった。




