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7.王子様の恋心

ギルと僕、ライラとエレンの4人で次の授業が行われる校舎に向かう。


「ねえ、ウィル、大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

「でも次の授業は運動能力測定でしょう。まだ体調が戻らないなら休んでいても・・・」

「だからこそだよ。今日の結果は学期の成績に大きく影響するし。それに・・・」

それに、見ておきたいものがある。


前世の知識では、ここで攻略キャラの1人、ルーク・バレンヴォイムとライラが接触するはずなのだ。

ルークは赤みがかった茶髪にヘーゼルの目をした精悍な青年だ。彼の一族バレンヴォイム家は王立軍に要人を輩出しており、彼自身もまた恵まれた体格と身体能力を有している。僕やギルとは中等部からの付き合いだが、例によって僕はルークの人となりや趣味嗜好、誕生日や血液型などを知り合う前に知っていた。今となっては前世の記憶だとわかるのだが、当時の僕はなぜだろうと首を捻ったものだ。ギルには、「やっぱり君には不思議な力が」と言われたが、当のルークはこだわりがないらしく、全く気にかけなかった。ルークは、自分がどうでもよいと思った物事に関しては全然関心を払わないが、自分が大事だと思ったことー例えば学食で受け取りカウンターが離れている人気メニュー2種類を同時に食べる方法の考案ーには執念を燃やすタイプの人間だ。頭は悪くないのだが、バカなのだ。ちなみに前世では、ルークファンの間で''野生のマッスル''という異名がついていた。


「"それに''?どうしたの?」

エレンの言葉に思考が中断される。

慌てて言い訳を考える。

「それに、良い所見せて心配しているギルやエレンを安心させないとね。」

これはこれで僕の本音である。エレンは応えるかわりに目を細めて笑った。


「では、エレン、また後で。ライラ嬢も頑張ってね。」

「お2人こそ。お怪我のないように。」

授業の行われる運動場につき、1度エレンとライラと別れる。


運動能力測定の授業では、男子は陸上競技にフェンシング、テニス、乗馬とかなりの数の測定項目がある。一方女子の方はというと社交ダンスに乗馬のみ。その乗馬も希望しなければ免除される。このあたりは前世に比べると封建的だなあと思う。女性が動きやすい格好で汗を流すのをよしとしない社会なのだ。


女子の測定項目が少ないこともあり、自然と 男子の測定会場に人が集まる。中にはお目当ての男子生徒に差し入れを渡したりする女生徒の姿も見える。ふと横をみるとギルが女生徒に囲まれている。

「あの・・・ウィリアム様、よろしければこれを・・・」

声の方に顔を向けると結構な数の女生徒たちが僕に差し入れを渡そうと待機していた。中には中等部の後輩もいるようだ。正直、僕も結構モテる。

「応援ありがとう。君たちが想ってくれる分、いつも以上に力が出せそうだよ。期待を裏切らないよう、いいところを見せないとね。」

その瞬間、背中に鈍い痛みが。ああ、これは知ってる。さっきもーー

後ろを振り返ると、エレンが僕の背中に再び手刀をいれていた。

「エレン?!さっき向こうに行ったんじゃ・・・」

「嫌な予感がして戻ってきたのよ!案の定!」

「何が?!」

手刀を入れられ続ける僕を見かねて、ギルがその場をとりもってくれ、エレンはしぶしぶ帰っていった。

「エレン、何だったんだ・・・。」

「エレンは本当にウィルに懐いているよね。」ギルが苦笑する。

懐く?普通は懐いた相手に手刀なんか繰り出さないのでは・・・と思うが、双子の兄の言う事を黙ってきいておく。


「ところで・・・話が戻ってすまないが、ライラとどこで知り合ったんだ?」

先程の話を流すつもりはないらしい。少しからかってやりたくなる。僕の悪い癖だ。

「ずいぶんとライラ嬢を気にするんだね。」

「そんなことはない!私はただ・・・」

耳が僅かに赤い。

「隠さなくても君の女性の好みはわかる。」

「ウィル、君には敵わない。・・・彼女は、私が今まで出会ったどの女性とも違うタイプだ。」

あれ?単なるからかいのつもりだったのに、まさかビンゴ?

運動能力測定が始まる。まずは短距離走。まずまずの出来。

「彼女は市井の学校に通っていたが、優秀な成績でこの学園に特待生として入学してきた。」

「ミドルクラス(中産階級)か。確かに特待生で授業料免除でもないとこの学園には通えないだろうね。」

次は走り高跳び。僕は自己ベスト。ギルは自己ベストを更新したみたいだ。

「なれない環境の中、このエリート学校で成績を維持するのは大変なことだろう。しかし、叶えたい夢があるからがんばると話していた。」

「へえ、ライラ嬢の叶えたい夢とは?」

次はアーチェリー。僕の得意科目だ。

「周りの人を笑顔にしたいと。たくさんの人が笑顔になるように、自分にできることを探したいと言っていた。」ああ、それ、1番好感度が上がる選択肢だ。これは、僕にとって朗報ではないのか。実際、目の前の友人は真剣な表情で、目には僅かな熱がこもっている。もう時間の問題なのかもしれない。

「・・・僕が医務室にいたら、ライラ嬢が入ってきて、僕に驚いてそのまま逃げていってしまったんだ。先程庭で偶然にも見かけたものだから、自己紹介をしたんだよ。でないと今後、気まずいからね。」

「そうだったのか。しかし、普通のレディなら君がいたら喜びそうなのに、ライラ嬢は逃げてしまったとは。・・・男性と2人で部屋にいることが耐えられなかったのだろうか。なんて清廉な人なんだろう。」

・・・なんだか勘違いしている。

しかし、ライラ嬢に思いを馳せるギルの表情はとても美しく、傍で眺めるのは眼福である。うん、いいものが見られた。萌え。

得意なアーチェリーは百発百中だった。成績が楽しみだ。

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