58.ギルバートとライラ(ギルバート視点)
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ウィリアムがいなくなった後、ウィリアムのいた場所に今度はギルバートが腰掛ける。
「どうやら貴女は何かが吹っ切れたようだな」
ギルバートの言葉に、そうね、とにっこり笑うライラ。
「ようやく、夢を叶えるために進むことができた気がします。それがとても嬉しくて」
滾々と心の底から沸き立つような幸福感が形をとるとしたら、きっとこんな笑顔になるだろう。この人はこんな風に微笑むのかとギルバートは思わず目を細める。
「良ければ、いなくなっていた間にどうしていたのか聞いても良いだろうか」
「いいわよ。でも、事件ばっかりだったから、あんまり面白くはないと思うけど……。ギルは休暇は楽しめて?」
「私か?そうだな……」
こうして、ギルバートはようやく心を取り繕わない本当のライラと出会った……と思ったのも束の間の出来事。
さっきからライラの話を聞いているが、ことある事に出てくる「アルベルト」という固有名詞がとても気になる。ライラの話を聞くほどにアルベルトが如何にライラにとって大切な存在かを感じずにはいられない。自分に不本意な結果になったとしても、聞いておかなければならない事がある。
「ところで……話を折ってすまないが、アルベルトとはあなたの何だろうか?」
ライラにとっては思ってもみない質問だったようで、奇妙に思われてしまったようだ。不思議な顔をして、疑問を口にしつつもライラは答えてくれた。
「何って、ギルは変なこと聞くわね。親友というか、同士というか、仲間というか……」
「それから?」
「それから?って言われても……幼馴染だから家族みたいなものね」
「家族……」
そう語るライラの顔は色恋の混じっているものではないようだった。まだ恋人では無いのだろう。でも、時間の問題かもしれない。
「それにしても、本当に大変な中で近くに貴女の味方がいて良かった。すごく心配していたんだ」
再び事件に話を戻す。当時の心境を思い出すと自然に表情が曇った。
「ウィルに、学園で私の嫌な噂が立っていた時にギルが否定してくれていたと聞いたわ。私の噂を否定したって、ギルには何も良い事があるわけではないのに……私の味方をしてくれて、ありがとう。あなたは離れていても、私を守ってくれていた」
「貴女をずっと見ていた私だ。貴女の事は少しは知っているつもりだ。噂が間違っている事は明白だった」
ライラはギルバートの言葉を聞くと、意外そうに少し目をぱちくりさせて答える。
「……そういう所がきっとギルバート様なのよね。私にはそんな風にしてもらう資格が無いのにね。でも、本当に嬉しかったの。もう一度言わせて、ありがとう」
資格とは何だろうか?そもそも、そういう所がギルバート様、とはどういう意味か?ライラの話に疑問もわいたが、今のこの雰囲気を壊したくなくて、ありがとうと笑う彼女の顔が眩しくて、それをこのまま見ていたい気持ちが勝ってしまった。
「どう致しまして。私の事は遠慮せずいつでも頼ってくれて構わない」
「王子様にそれを言われるのって凄く光栄だわ。何でも叶えてくれそう」
今度はライラが悪戯っ子見たいにクスクス笑う。本当のライラは、こんな風に子どもみたいにコロコロと表情が変わる女性なのだと、ギルバートは気付かされる。
ずっとこの時間が続いてくれれば良いのに。
そんなギルバートの思いとは裏腹に、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。




