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57/164

57.3人で

ライラと話していると、中庭の遠くにギルの姿が見えた。すかさず、ギルに手を振り立ち上がって声をかける。

ギルもこちらに気づいたようで、そのまま近寄ってくる。


「ギル!まさか探してくれていた?」

「あまりにも遅すぎて少し心配していたんだ。こんな所にいたのだな」

ギルの言葉に、いつの間にかもう日が沈みかけている時間になっていたことに気がつく。

「深い話をすると時間があっという間ね。続きはまた2人になった時に、ウィル」

ちょっと待て。ライラに悪気は無いのかもしれないが……。いきなり意味深にそんな誤解させるような物言いをするんじゃない。愛称で呼んでいいとは言ったものの、こんな風に使われてはギルの反応が気になる。

「……ライラと和解したんだ」

ギルに説明をする。精一杯誠実に答えたけれど、ギルの様子から拭いされていない何かを感じる。


「それはそうと、ギルのハンカチ、あんな風に利用されてしまって本当にごめんなさい。盗まれてしまったのは、本当に迂闊でした」

深々と頭を下げるライラ。

ずっと謝りたかったのだが、ローザンヌ商会に捕まらないように身を隠して事件を追っていたから謝る機会を逃してしまったとライラは説明した。

「いや、ハンカチにしても、迷惑を被ったのは私よりもライラの方だろう。貴女は悪くない」

それに、ハンカチがあったお陰で犯人を推察する役にもたった、とギルが話す。


「事件を追っていたって言ったけど……ローザンヌ商会に1回は捕まったんだよね?」

僕は少し気になっていた疑問をライラに尋ねてみた。前世の記憶では、「ときプリ」のストーリー上、そういう流れになっていたからだ。

何故そういう流れになるかというと、捕まった所を救出される恋愛イベントがアルベルトルートで発生するためである。

何者かに監禁され、不安に震える主人公。敵地に潜入し、主人公を助け出したアルベルトは、今まで秘めていた主人公への想いを口にし、主人公を抱きしめる。スチル絵で窺い知るその表情には、主人公が無事だった安堵と、失っていたかもしれない苦悩が混ざりあっていた。

―――という、発生させればアルベルト攻略確定のイベントなのだが。


「何言ってるの。捕まるって分かっててみすみす捕まる私ではないわ!」

ライラが仁王立ちをしながら腕を腰に当てて得意気に言う。

「えっ。捕まってないの?1回も?」

意外な返答に、僕はちょっと驚いてしまった。謎の商会が出てくる事件が発生するくらいにアルベルトと親密になっているくせに、肝心の恋愛イベントは進めていないとは、どういう事か。

「そうよ。……なによ。私がそんなにドン臭くみえる?」

どうやら本当に捕まっていない……。じゃあ、アルベルトとの恋愛イベントは外したのか……。

良かったな、ギル。ライラはアルベルトに抱きしめられてないし、愛の言葉も囁かれてない!

良かった良かったと謎に笑う僕を横に、ギルが口を開く。

「ずっと行方がしれず身を案じていたが、まさか事件を解決してしまうなんて、本当に驚いている。遅くなってしまったが、この後少し話せないだろうか?」

ライラは元気よく答えた。

「いいわ!」


ライラの返事にギルは少し戸惑ったようだった。

それはそうだろう。

恐らく、今までのライラだったら、「光栄ですわ」とか「嬉しいです」とか、せめて「良いですわ」くらい丁寧な言い方をしていたはずだ。

それがいきなり元気よく「いいわ!」では、誰だって面食らうというものだ。僕に前世を暴露して、オタクトークで盛り上がっちゃったもんだから、そのままの空気を引きずっているような気がしてならない。大丈夫か?


ギルはライラと2人で話したいはずだ。

僕は空気を読んでそのまま何も言わずに退散することにした。

ギル、頑張れ。

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