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55.将来の夢

この国は議会制の君主主義だ。

国王をメンバーに含む王立議会でほぼ全ての政が行われている。

王立議会のメンバーはほぼ世襲で、ギルが王位を継げば当然ながら王として議会に参加するし、僕も公爵家の嫡男であるので、家督を継げば議会メンバー入りだ。議会メンバーは少数精鋭で、この議会で決定した事項は社交シーズン中に各貴族達に通達される仕組みだ。軍部はまた別の独立した機関だが、軍部の代表が議会メンバーに名を連ねている。

一般のものが議会メンバーになる方法がない訳ではないが、王族1名、貴族2名、軍部関係者1名、聖職者1名の推薦状が必要であり、さらには国王の最終審査がある。実質不可能な条件といっていい。これで一応、建前上は全国民に政治に参加する機会を与えているということにしているのだが、あまりにも狭き門である。支配階級が既得権益を行使できるように政が行われるのはどこの世でも同じ……どうやらそういう事らしい。例えそれが乙女ゲームの世界であっても。

そんな、一般人には手の届かない不可能な条件を、乙女ゲームのだいたい逆ハーレムルート(※ルノワール先生以外)を辿ることでライラは達成しようとしているという訳らしかった。


「私、この国の未来を創るわ!!」

なんだかライラの瞳が輝いている。


「だから、あなたの推薦状が欲しくて親密度をあげようとしていました。でも、どうしても必要なの。勝手なお願いですが、ウィリアム様、協力してくれないでしょうか?」


ライラの目的もわかり、逆ハーレムルートでないということで、僕の胸に安堵が広がる。


「今回の事件、ライラ嬢の手腕は見事だし、その力をこの国のために使うことは、この国のためになるだろうね。友達の……ギルの心を弄んでいることは許せないけれど、君の事情もわかる。借りもできちゃったしね。いいよ、推薦状くらいなら協力しよう」

邸宅からの脱出、あのままライラが来なかったとしたら、僕達はもっと大変な目にあっていたはずだ。犠牲も出ていたかもしれない。それに関して、僕はライラに借りができたと感じていた。それを返す良い機会だろう。

きっと、先達にライラがディーノに提示した条件も、推薦状だったのだろう。ディーノが安堵した理由もわかる。


それに、と言葉を続ける。

「僕のことは、今後はウィルと呼んでくれて構わない。君のこともライラと呼ばせて貰おう。転生者同士、仲良くしよう」


ライラは嬉しそうに笑いながら言った。

「ウィル、ありがとう!それから……ギルのことだけれど、もう大丈夫そうなの」


「大丈夫?どういうこと?」

ここ最近、ライラが笑顔でいる時に良い話を聞いたことがない。


「この事件で国中に英雄として名前が知れ渡ってしまったおかげで、国王陛下から直々に推薦状が貰えそうなの。だからもうギルは攻略する必要はないのよ。ウィリアム、あなたにあげるわ」

「ええっ!ちょっと!」


ギルがライラに利用されなくなることは喜ばしいはずだ……。なのに、何故だろう、この複雑を通り越した悲しい気持ちは。こうもあっさり言われるだなんて。ギルの気持ちを考えてとてつもない寂寥感に襲われた僕は、深く長く、息を吐いた。

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