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53.ソロモン・グランディ事件

今回の一連の事件は、ローザンヌ商会地区代表のローザ・ラビエールが犯人ということで決着がついた。ローザの今後はというと、どこか地方の砦に幽閉されることになるそうだ。

王立軍の尋問によってローザが自供した所によれば、ローザはギルのハンカチをライラから盗んだそうだ。薬物を販売する際には、ベールを被り、髪型や服装なんかもライラの真似をしていたという。ライラがギルやフェラー社と懇意にしている点が利用された形だ。

問題の薬物については、“フェラー社”のラベルは偽造されたものだということはわかったが、肝心の大元の出どころは不明のままらしい。パンに混入された毒物は、ソロモン・グランディ事件で使われたものとはまた別のもので、こちらは入手ルートも特定されている。犯人グループの自白で、ライラの親父さんのパンは、偽業者が回収した後にそっくりそのままエーズ川に廃棄されていたことがわかり、ライラがとても怒っていた。


誘拐された(と言うことになっている)王子と王女を見事に助け出したことで、ライラとアルベルトは国民からちょっとした英雄扱いを受けている。そして僕は知らなかったが、ライラとアルベルトは身寄りのない子どもばかりが何人も失踪する事件――こちらもローザンヌ商会の関与が疑われている――もついでに解決していたようである。

これらの活躍が認められ、ライラとアルベルトは国から勲章が授与されることとなった。

当の本人たちは、「おかげで商売繁盛」だと喜んでいる。実利主義というか、即物的である。


生徒会室で、ルノワール先生がギルと僕に事件の顛末について語ってくれた。

ルノワール先生が言うところでは、

「ローザンヌ商会は元々の拠点が隣国メールスブルグにありましてね。おそらくローザは大元からの指示があって動いていたのでしょうが、検挙できたのは国内にいたローザまで、ということです。本当の黒幕は当然別にいるでしょう」

とのことである。

「先生……。ローザンヌ商会以外の別の団体が今回の事件に絡んでいる可能性はないですか?」

質問をしたのはギルだ。

「着眼点がさすがですね、ギルバート君。実はある人物がローザンヌ商会と組んでたという黒い噂もありますよ。我が国の転覆を狙っているとか何とか……。物騒な話です」

「そういう意味でも、ライラさんの活躍は見事でした。勲章の授与は、その人物に向かっての勝利宣言、という意味にもとれますね」

それから、と最後にルノワール先生が付け足しで言った。

「今回の件は、ギルバート君にはとても良い結果になったと思います。幸運でしたね」

「先生、それはどういう……」

「さ、先生はこれから職員会議です。面倒ですが仕方ありませんね。これで給与をもらっているのですから。働いてきます~」

風に吹かれた柳のように、先生は行ってしまった。


この所のドタバタ続きで、僕はまだあの日、ライラに問い詰めた際の答えを貰えないでいた。

つまり、ライラの「目的」である。ギルやルーク、ディーノに僕と攻略対象全てに積極的に関わっていく乙女ゲームの主人公としての目的。

ライラには、「時間ができたら話す」と言われているが、いつになるやら。

もうそろそろ、もう一度催促しようかと思っていたのだが、ルノワール先生と入れ替わりでライラがやってきた。

「ウィリアム様、ちょっとお時間いいですか?」

「ライラ嬢。そろそろ催促しようと思っていた所だったよ。ギル、ごめん。僕、ちょっと外すね」

ライラと二人きりになれる所に行かないと。

ギルの視線が痛い。

やましいことは何も無いのに言い訳ができないのが辛い。


そうしてライラと僕が来たのは、校舎の端の庭の一角。以前、僕とライラが自己紹介をしあった場所だ。


「前にウィリアム様に聞かれた、私の「ときプリ」での目的をお話いたします。」


そう言うと、ライラはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。


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