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48.作戦決行

作戦といっても、地味なものだ。

お昼前頃に学食にパンを納品しにくる業者に怪しい点がないかを探るのである。

ちゃんと正規の業者なのか、怪しい第三者がパンに変なものを注入しないか、変なパンにすり替えられないか……などなど。エレンは、僕達の動きをローザに悟られないようにローザの注意を逸らす役割だ。

パンも、必ず最低3個は買って、その辺の小鳥たちにあげている。正直、フェラー社のよいお客様だ。

作戦を開始してから、見張りも気が緩みそうな4日後に事件は起こった。

いつものように見張りをしつつパンを買おうと学食に向かう僕に向かいからやってきたルークが話しかけてきたのだ。

「よお、ウィル。今日は学食のパンは食べられないぜ」

今まで知らなかったが、ルークは学食のパンがかなり好きらしい。ほぼ毎日入荷したての頃を見計らって買いに来ているようだ。僕がパンを買い始めてからというもの、毎日学食近辺で出くわしている。おかげでルークにも僕がパンを買いに来た事がすっかりバレてしまっている。しかし、パンが食べられないとはどういう事か?

「何で?まさか、1人で全部買い占めたとか言わないよね?」

今のところ、怪しい動きは何もない。数メートル先にそれぞれ待機しているギルとエレンからも、異常無しのサインが送られてきている。ちなみに、今日はローザが休みなので、エレンも見張りをしている。

「まさか、だろ。さっき、いつもより早めに入荷してたから買って食べたんだ。一口でヤバいと思って吐き出したよ。学食のおばちゃんに言って回収させたよ」

「腐ってたって事?」

「いや、毒が入ってた。俺って、前にライラが作ったクッキーを食べ過ぎて倒れたことがあっただろ。あれ以来、妙なものを身体に入れると鼻と口が効くようになったんだ。耐性もついたみたい」

あれ、でもライラのクッキーに毒が入っている訳はないから、変だなあと気楽に悩み出すルーク。

「本当に毒?間違いない?」

「学食のおばちゃんも同じこと言った。で、『んな訳あるかい。』っていって、パンを口に放り込んだから、危ないと思って背中を叩いて吐き出させたんだ。そしたら、落ちたパンくずを拾って食べたネズミが苦しみだして吐いたよ」

見れば、学食の方がざわつき始めている。

僕はすぐさま、『異常発生』のサインのポーズをとってギルとエレンに知らせると、業者が使う出入口に向かう。

ルークも後ろからついてくる。

「なあ、今のって何かのサイン?これ以上なんかあるのか?」

説明している暇はない。気になるなら勝手についてくればいい、と放っておく。


学園の裏門でギルとエレンと集合する。

見れば、フェラー社の社員であるという証の腕章をつけている業者が急いで学園から出ようとしているところだ。

僕達は、近くに停めてあった馬車に乗り込むと、業者に気づかれないように後を追うように指示を出す。

足は重要なので、作戦の開始とともに常に馬車は待機させてあったのだ。

「なあ、なんでこの馬車、準備整ってるの?」

ルークが乗り込みながら聞いてきた。

「シーッ!これから悪者退治よ」

エレンが真剣な顔で適当な事を言う。


業者は、郊外の邸宅に入っていった。

見るからにフェラー社の工場ではない。

「ウィル、ビンゴだな」

ギルが僕の肩を叩く。

追っていたフェラー社の業者に、毒入りパンと、ここにきてルークも事態を飲み込みはじめたようで大人しくしている。

さて、この場所を警備隊に報告して……と思っていた所で、後ろから声をかけられる。

外国語で、何を言っているのかはわからない。しかし、雰囲気からするにこの邸宅の関係者だろう。あっという間に大人数に囲まれる。


こうして僕達はあっさりと敵の手に捕まってしまった。


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