46.青年探偵団
「ラビエールさん、素敵な女性だったわ。若く見えたけれど、お幾つなのかしら。あと学内でもいつでも聞いてって言っていたけれど、どういう事かしら?」
「何言ってるの、エレン。ローザ・ラビエールは同い年だよ。同じ学園の生徒じゃないか」
「ウィル、どうして知っているの?!」
エレンの大きな声がレストランに響く。
僕とギルとエレンは、ローザンヌ商会の帰りにレストランで軽食を取っていた。
ディーノだけは、「契約書を読み込みたい」と言って先に帰ってしまった。仕事熱心にも程がある。
「そりゃあ、知っているよ。学園の生徒全員の名前と顔は覚えているんだ。学園の生徒たちは、将来この国の中核を担っていくわけだし、なるべく多くの人に声をかけるようにもしているんだよ。ローザはライラと同じで高等部からの編入生だから、エレンはあまり印象がないのかもしれないね」
「学園の生徒全員?!」
口をあんぐりさせているエレンを余所に、ギルが淡々と言う。
「ウィルが言うなら間違いないな。これで私も確信が持てた」
「お兄様も、ラビエールさんを知っていたの?」
「いや、私は知っていた訳じゃないが、さっき分かったんだ」
どういう事?と首を捻る僕とエレンにギルが説明してくれた。
「ローザンヌ商会が用意した契約書と、以前ライラをウィリアムの名前で呼び出した手紙の筆跡が同じだったんだ。紙質も同じで外国製。我が国の紙は、技術が高いからもっと薄いんだ」
再び、エレンの口があんぐりと開く。
「……お兄様、筆跡鑑定できるの?」
「何言ってるんだ、エレン。偽造サインを見破れないようでは、私の将来の仕事は務まらない」
そんな事ないと思うけど……とブツブツ呟いているエレンは置いとくとして。
「待って、ギル。それ本当?ライラが水濡れになった時のことだよね」
「ああ。ローザ・ラビエールとは、そういうことをするような人物だということだ。そんな所とは契約は結びたくない」
だからギルは、契約を流そうとしていたのか。本当にギルはライラが好きなんだなあ。
……まてよ。
「ねえ、ローザって、ギルがライラにハンカチ渡したの知っている可能性があるよね」
この一連の事件の真犯人は、前世の知識ではフェラー社の同業他社。
これはもしかすると、もしかするかも。
「リストの1番はじめで、さっそくビンゴかもしれない」
僕はギルとエレンに顔を寄せるようにいうと、小さな声で僕の考えを話し始めた。