41.調査
別荘に着いた。
「ギルとウィルは東の二階の端の2部屋を使ってくれ。一応客室の中で1番良い部屋なんだ。エレンとお嬢さん達は二階の真ん中の部屋で、今案内させる」
「ルーク色々ありがとう。セグルス、私は後で良いから、先にエレンとお友達の事をやってくれ」
ギルは広間のソファに座り、僕に隣に座れと目で合図した。
「では、アリアナ嬢、ミーシェ嬢、マリア嬢、また夕食の時にでも話そう」
僕は馬車で有意義な萌え語りをした3人に手を振る。3人は侍女と一緒に一足早く部屋に行った。ギルとこれからライラを探す算段をしなくては。すると突然、ソファ越しの背後に気配がした。
「……何で?」
気付けばエレンが後ろに立ってた。
「なんであんな話したの?」
話し出さない僕の背に向かって熱い視線が突き刺さる。視線だけで怪我をしそうだ。
「………なんか、怒ってる?」
「なんか、じゃないわよ!どうしてあんな話したの?!答えなさいよ!」
「あんな話ってどんな話のこと?」
「恥ずかしくて言える訳ないじゃない!」
「でも、どの話か聞かないと答えようがない。」
それはそうだけど……と今までの勢いがゆるむエレン。
「わかった。あの娘たちに話したことを全部そのまま話すから、エレンが言っているのはどの話のことか教えてくれる?頷くだけでいいから。そうしたら理由も言えると思う」
そういうと、僕は立ち上がり、ギルやルークには聞こえないように、内緒声でエレンの耳元に話し始めた。
「まずは、新入生歓迎パーティーで僕とエレンが踊った話。あの日のこと覚えてる?エレンに諭されて、僕は子犬のようにしょげてしまったよね」
エレンの顔が真っ赤になる。
「違うわ!その話じゃない!」
「じゃあ、カフェテリアで新作スイーツを食べた時のこと?エレンがどうしても食べたいって言って……」
「それも違うわ!もうやめて!」
顔を赤くしながら両耳を手でふさぐエレン。
「それなら、エレンが僕の傷の手当をしてくれた時のことかな。あの時、僕はね……」
「聞かない、聞かないわ!そんな恥ずかしい事。ウィルのバカ!」
もう参りましたとばかりに、顔が赤いのを隠すように僕の胸に額をつけてくるエレン。
僕はエレンの肩を抱くと、
「機嫌直してもらうから部屋に送ってくるね。ちょっと待ってて、その後話そう」
とギルとルークに言った。
ルークはギルの前に座り、お茶を飲んでいる。
「ギル、あの2人は何時もあんな感じか?」
「あんな感じと言われればずっとあんな感じだ」
「前から思ってたけど、仲良すぎだよな」
「ああ、私も仲間に入れて欲しい」
「……お前達双子は、ウィルの事好きすぎるんだな」
「まあな、ウィルが帰って来る前にルーク、君には本題を話そうと思う。ここ最近のライラについてだ」
僕がエレンを部屋まで送って帰ってくる間に、ギルは今回の休暇の目的をルークに話したようだ。つまり、ライラに会いに来たと言うことだ。ルークも学園内にライラが犯人だという噂が流れている事は知っており、彼女の事を心配していた。ルークも同行したいと言うので、荷物を置いて早速ライラが居るであろうエマの別荘へ3人で出かける事にした。
結論から言うと、エマの別荘にはエマは来ているが、ライラとは一緒でないと言うことがわかった。
「一体どういう事だ?」
「親にも自分の居場所を隠しているんだ……」
「とにかく、周辺でライラらしき人物が来ていないかを聞き込みしてみよう」
次の日から別荘に滞在している間、釣りやボートやお嬢様方の相手の合間を縫って僕達3人で聞き込みをしたけれど、ライラは見つからなかった。
「事態は思っているよりも深刻なのではないだろうか」
ギルの呟きが印象的だったが、これだけ探しても見つからない事が、逆に僕にライラの居場所を確信させた。
ライラは、きっとアルベルトと一緒にいる。




