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4.葛藤

「久しぶりだな」

講堂に入り、席に着いた途端に話しかけられた。もうすでにもうすぐお昼と言う時間だが、入学してからずっと授業を受けていないことに気づき講堂へ向かったのが悪かった。さらには、もう少し避けておこうと思っていたはずなのに、顔馴染みを見つけてついうっかり隣に座ったのも悪かった。

「ああ、ギル入学式ぶり」

「全く、心配したぞ。ウィル。あの後すぐに面会を申し込んだのにヴォルフ家からは面会謝絶だといわれ、エレンも私もどれだけ心配したか。」

「ああ、悪かった。原因が良く解らないのに国で一番大切なお前達を病気の僕に会わせる訳にいかないだろう。」

本当は気持ちの整理が付かなくて、会ってどうにかなったら不味いと、全力で拒否してたんだが。それは秘密にしておく。

「そんな事!」

と突然授業中に立ち上がった王子に何事が起こったかと、皆が注視する。ギルは大きな声を出した事を皆に詫び着席した。

「今度そのような事を言ったら、王宮の会合ででる食事をお前の分だけ全て豆料理にしてやるからな、2度とそんな事考えるな。」

斜め下を向きむすっとした表情でボソッとそう言われた。

豆のボソボソした感触が小さい頃から苦手な僕はめったに豆料理は食べない。王宮で出るもの全て豆料理⁉︎残したら周りに何を言われるかわかったものじゃ無い。地味に嫌な嫌がらせだなぁなんて思った。同時に心配してくれたんだと思い大事にされていることが嬉しくなった。

隣の親友をじっと見る。髪色と同じ節目がちのまつ毛が長く、キラキラしてる。不満そうな顔も自分の為だと思えば、中々貴重で可愛くなって、、、。萌え。



「だあ―――!!」

今度は僕が席から飛び上がった。何なんだと周りがざわざわし始める。僕は片手を高々と上げ

「すみません。鞄を医務室に忘れました。」

と言い、出来るだけ焦って見えないよう、優雅に廊下へ出た。


昼休み、誰もいないのを確認し庭に突っ伏しながら、ライラは平気だったのに、、ちょっと、絆されたのがいけないんだとか。ぐるぐる思考の渦に飲み込まれてた。

「今度はこんな所にいた。」

近づいてきたのはエレンだ。

「やっと来たと思ったら早々に消えて貴方本当に大丈夫?」

エレノア・ディア=アスティアーナ、愛称エレン、ギルの双子の妹、僕の幼馴染だ。双子だけあってギルと似てはいるのだが、彼女は目が少しだけつり目になってる。もしかしたら、幼い頃から僕とギルの少々?ヤンチャなところを正したりしてくれてるうちに、そうなってしまったのかも知れない。申し訳ない。

凛とした雰囲気、端整な顔立ちの知的美人と表現するのがあっているだろうか。ギルと同じ色の髪は腰まであり、成長とともにすらりと伸びた手足は折れてしまうのではないかと思わせるくらい、繊細だ。肌は白く、唇は艶やかで日差しを浴びてどこもかしこもキラキラ光っている。流石王女様だ。

眩しいなと思いながら、僕は見上げた。

「ああ、問題無い。午後からはちゃんとする。」

「本当に大丈夫?嘘だったら豆料理食べさせるわよ。」

思考回路が兄と一緒らしい…。

「兄妹で似たような事言うのやめてくれ。」

「あら、貴方は基本何をしても、兄と同じく何でも無いようにすぐにこなしてしまうでしょう。だけど、豆料理だけはばれないように端に避けたり、近くの犬にあげたりしていたわね。間違って口に入れた際には顔が思わず歪んでしまっていたもの。わかってるのよ。」

「苦手なだけで、子供みたいに食べれないわけではないよ。」

と、冗談は置いておいてと言いながら、彼女が僕と同じ目線になり真っ直ぐにこちらを見た。

「本当に困ってる事は無いの?」

彼女の絹のような手が、僕の右手に置かれた。

真剣にこちらと向き合おうとしてくれているが、自分も先程どうしていこうか決めはじめたところなので、何と説明していいかもわからない。

時が止まったかのようだった。

ガサガサっと近くの茂みが揺れた。

そこに立っていたのは、先程医務室から逃げたライラだった。

ライラも僕達に気づいたのだろう。強ばった表情で固まっている。さっきの今でとても気まずいが、それは向こうも同じはずだ。女性に気遣わせるのも申し訳ないので僕の方から先に口を開く。

「君は、さっきの。また同じように逃げる?それとも僕に少し自己紹介をする時間くらいくれるかな?」

内心テンパリ気味だが、それを微塵も見せないようにわざとゆっくりめに話しかける。表情もつくりこんだので、相手には余裕たっぷり不遜な男に見えているはずだ。

ライラは一瞬、話しかけられて安心した様子をみせたが、すぐに今度はなんて返答したらよいのか困ったようにもじもじしている。

「僕はウィリアム・ヴォルフ。隣はエレノア・ディア=アスティアーナ。どちらも高等部1年だ。」

「…私はライラ・スペンサーです。同じく高等部1年です。先程は失礼しました。少し、驚いてしまって。」

隣で僕達のやりとりを静かに聞いていたエレンも口を開く。

「よろしくね、ライラさん。仲良くしてくださると嬉しいわ。」

そうして、優雅に微笑むとスカートの端をつまんで上流階級風のお辞儀をする。完璧な所作だ。しかし、その後、僕の方に向いて話だしたエレンは、マナーなんてどこへやら。さっきとの落差が著しい。

「ちょっと、ウィル。'さっき'って何よ。女の子が逃げるようなことって何をしたの?しかも今だってやたら格好つけちゃって!本当は豆が苦手なこと、ばらすわよ。」

「エレン、落ち着いて。急にどうしたんだい?それに豆が苦手なことはばらすもなにも、今君が喋ってしまったからバレてしまったよ。」

「はい、確かに豆が苦手だと聞こえました。」

そんなやりとりをしていると、さらに状況をややこしくしそうな人物が現れた。ギルバートだ。

「ウィル!そこにいたのか。エレンも。医務室にいないから探したぞ。・・・そこにいるのはライラ嬢?3人でどうしたんだ?ウィル、いつの間に彼女と知り合ったんだ?」

矢継ぎ早に質問してくるギルに、いつもと様子の違うエレン。

ああ、なんだか面倒臭いことになりそうと僕は思った。

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