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37.夏期休暇

ソロモン・グランディの事件を受けて、学園はいつもより数日早く夏期休暇に入ることになった。

邸宅から通っている生徒はそのまま休みに、寮生はそれぞれ数日から数週間程度の事情聴取を警備隊から受けた後に休みに入り、寮の入口は常に警備隊が見張っている。


ソロモン・グランディは病院で意識を取り戻し、入院先で薬物の入手先について王立軍の担当者から事情聴取を受けている。学園からは数ヶ月の停学処分を言い渡されており、王立軍の事情聴取が終われば暫く実家へ帰る。恐らく両親からこってり絞られることだろう。


事件後、まことしやかに生徒達の間に噂が流れた。

ライラ・スペンサーが薬物の密売をして、ソロモン・グランディを殺そうとした。ライラは王家に恨みを持っており、罪を王族に被せるために、王子から盗んだハンカチを現場に残していった。


ライラはいつの間にかいなくなっており、そのまま学校にも寮にも戻ってきていない。

ライラがどこからもいなくなってしまったことが噂の信憑性を高めてしまっている。


「これで、夏期休暇だな」

講義が終わると、ギルが椅子から立ち上がりながら言った。

「なんだか……色々あってスッキリしないままだわ」

エレンの言う通りである。

事件は当日以来、あまり進展がない。少なくとも生徒側にはあまり情報は入ってこない。

「ライラさんもあんなことになってしまって……。お兄様からハンカチを盗んだとか、事件の犯人だとか。根も葉もない噂を気にして学園に出てこれないのでしたら気の毒だわ」

そうだね、とエレンにうなずきつつも、恐らくライラは噂を気にして学園を休むようなタイプの人間ではない。

それはギルも感じているようだった。

現在起きている事件は、アルベルトの攻略ルートで発生する恋愛イベントに付随するものだろう。ライラが殺人未遂で疑われるのも、フェラー社の薬物が犯行手段なのも、思い当たる節がある。ただ、ギルのハンカチは前世でゲームをプレイしていた時には出てこなかった。


「ウィル、ちょっと良いか?この後相談があるのだが」

ギルが僕に?

「あら、私がいるとできない話なの?」

エレンが不貞腐れているが、すまない、と謝る兄が本気なのを察して、あまりごねずに席を外してくれた。

僕とギルは何となく校舎の外に向かいながら小声で話しだす。

「それで、相談って?」

「事件の時にソロモン・グランディの部屋に落ちていたハンカチの事だ」



「警備隊には紛失したと話したが、実はあれはライラに貸していたものだ」

どうして?という顔をした僕にギルが続けて話す。

「お前には話していなかったが、前にライラが嫌がらせを受けてびしょ濡れになったことがあったんだ。その時に、私のハンカチでライラの髪を拭いた。どうしても洗ってから返すというので、そのまま渡してしまったんだ」

「……なぜそれを警備隊には言わずに僕に?」

「警備隊に言えばライラが疑われると思ったんだ。王室のハンカチが落ちていても、国内ならまず私やエレノアは大丈夫だ。しかし、ライラはそうもいかないだろう」

「……ギルが内緒にしていたのに、何故かライラが王室のハンカチを持っていたって噂が流れているよね」

「ああ、それも不思議なんだ。でもまずは、ライラに直接会って、ハンカチの件を聞きたい」

「わかった。それで、僕にライラと会うのに協力して欲しいわけだ」

「悪いな、ウィル」


こうして、ライラ探しの夏期休暇が始まった。

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