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30.序章

最近、医務室に行きたくて仕方がない。

お腹がすくと食事がしたくなるのと同じような生理的な欲求に近い。

医務室は僕とライラの次の恋愛イベントが発生する場所である。恐らく、ライラ側がイベント発生条件を全て満たしたのであろう。

これがゲームの強制力なのかと思うと怖い。

ライラについて知るためにはイベントを進めるべきなのだろうが、ゲームの強制力を前にして僕はまだその覚悟ができないでいた。

すると恐ろしいことに、僕が医務室に行くように、この世界がライラに味方しだしたのだった。


「ウィリアム君、医務室にこの荷物を届けてもらえませんか?」というような先生からのお願いに始まり、擦り傷、突き指、打撲など、医務室にご縁がありそうな状態に次々と陥るようになったのだ。

その度に皆が医務室に行くように進めてくる。ホラーでしかない。

恋愛イベントでは、僕はライラを口説かなくてはならないので、大怪我とか悲惨な状態にはならないだろうという思いで何とか心を保っている。


講堂に向かうと、ギルとルークとライラの3人に出会った。

「ウィル、顔色が悪いぞ」ギルが心配そうに話しかけてきた。

かと思うと、額をくっつけて熱を計られる。

隣でライラが萌えているのがわかりイライラする。

「微熱がある気がするが、医務室へは……」

「行かない」

きっぱりと言い切る僕を見て、ギルが溜息をつく。僕の医務室嫌いは皆に浸透しつつある。

「医務室に行ったほうがいいぜ」

ルークも僕の額に手を当てて熱を計る。ライラは特に反応なし。ライラの好きなカップリングはウィリアム×ギルバートだということも最近分かってきた。何てことだろう、前世の“私”と一緒じゃないか。

「ウィリアム様はどうして医務室をそんなに避けるのですか?」

他人から見ればあどけないライラの言葉に最近は無性に腹が立つ。誰のせいでこんなに不調続きだと思ってるんだ。誰のせいで医務室を避けていると思ってるんだ。

心配そうに僕に差し出されたライラの手を払い除け、思いっきり彼女を睨みつけた。

「お願いだから放っておいてくれ」

これにはライラも驚いたようだ。何か言いかけていたが、僕は無視してその場から走って逃げた。


その後、ライラが頻繁に僕を追いかけるようになった。僕を怒らせてまずいと思ったのだろう。

ライラとは会いたくないので避けようとするのだが、ライラの方が一枚上手なのか、ゲームの強制力なのか、どうしてもライラと鉢合わせしてしまう。

しかし、その度に僕は「話すことなどない」と、ライラを冷たくあしらい続けた。

これだけ塩対応をしているのに必死になって僕を追いかけてくるライラ。いい加減に僕を解放してほしい。拒絶しても拒絶しても立ち上がってくるライラが、得体の知れないモノのように思えて恐怖を覚える。徐々に疲労が僕を蝕みはじめた。


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