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22.学力テスト

学力テストの結果が学内の掲示板に貼り出されている。

ギルが1位だ。

連日生徒会の仕事をこなしてこの結果だ。さすがとしか言いようがない。

「ライラは2位か。学力も優秀とは。」

益々欲しくなった、とディーノが呟いているのが聞こえた。どこぞの悪役みたいなセリフだ。

学内2位は確かに凄いが、僕は彼女の成績の秘密を知っている。



遡ること一週間前―――


ライラが裏庭で隠れるようにして男に会っている現場に遭遇した。

「いつもありがとう。」

「いいんだ。しっかりやれよ。」

男の方は、慈愛に満ちた表情で目を細めてライラの頭をぽんぽんと軽く叩く。男から荷物を受け取るとライラはそのまま行ってしまった。

男の名はアルベルト・フェラー。攻略キャラクターの1人で、身長185cm、蟹座のB型。

海運王の息子にして、ゲーム中に出てくるお助けアイテムの仕入れ販売人である。黒髪にたまに金がかって見える瞳。何かの願掛けをしているのであろうか、後ろ髪のひと房だけ切らずに三つ編みにして服の中に隠している。

ライラがアルベルトから受け取ったものは、恐らくゲーム中に主人公がアルベルトから購入出来る便利アイテムの一つ、使えば勉強効率が格段に上がる文房具「東大ペン」だろう。


ライラを見送るアルベルトに声をかける。

何とかアルベルトに接触しようと思っていたが、ここで会えるとはラッキーだ。怪しい商品を売っている手がかりが欲しい。

「外部の方ですよね。ここで何をなさっているのですか。」

白々しいが、僕は建前上はアルベルトを知らないのだ。

「私はアルベルト・フェラーです。フェラー商会の者で、ここには商品の納入に参りました。この学園の購買で購入出来る品の6割くらいは我社のものですよ。」

「しかし、女学生と随分親しげなのですね。」

「さっきの彼女とは幼い頃からの付き合いでね。仕事のついでに顔を見に来たのだが、誤解をさせてしまったようだ。」

顔はにこやかながら、じろりと品定めするかのように全身を上から下まで見られた。気分の良いものではない。

それに幼い頃からの付き合いだと?ゲームにそんな設定はあったかな。

「それはすみません。実は最近、学園で校則違反の物品の持ち込みが増えていまして。個人が各自で持ち込んだような感じでもないのですが、業者の方なら何かご存知ではないでしょうか。」

これくらいでは抑止力にもならないだろうか。

「うーん。ここにも色々な業者が出入りしているからねえ。今のところ心当たりはありませんが、何かないか気をつけておきますよ。」

それから、とアルベルトは付け足すように言った。

「学食に行くことをお勧めしますよ。美味しいパンが入荷した所ですから。」

そういうとアルベルトは行ってしまった。

その後、バレないように尾行などもしてみたが、その日は特段怪しいことはしていないようだった。



「ウィルは3位ね。」

エレンの言葉に回想が中断された。

「ん、ああ。僕は当たりをつけるのが得意だからね。それでもギルにはかなわないよ。」

「ライラさんが2位か、凄いわね。」

僕に続きエレンも10位以内には入ってる。別に悪い成績では無いと思うが、思うところがあるのか落ち込んでいる。

「お兄様や貴方に負けるのは何時もの事だけれど、ライラさんが頑張っているのを見ると、同じ女性としてもう少し頑張らないといけないと思うわ。」

この世界は、前世の"私"からしたら酷い事だなとは思うが、女性は卒業したら何処かの家に嫁ぐのが良しとされており、勉強の出来不出来は重視されていない。学校に入るのだって、将来の伴侶候補を探すためだ。それでもエレンは学ぶ事が好きなようで、上の方は男ばかりが占めているランキングで上位にいた。東大ペンを見てしまっている僕はライラよりエレンがよほど偉いのは知っている。

「ライラの事は何ていうか・・・。特待生で入ったくらいだもの。予想通りだよね。次の試験は僕も本気出して頑張ってみようかな。エレン、2人で間違えたところ復習でもする?」

「そうね!私、今やる気に満ちてるから捗りそう!」

「図書室でも行こうか。」


2人で廊下を歩いていると、中庭から揉み合っている男女の声が聞こえた。

「お前のせいで、順位が下がった。」

「女のくせに。」

「女に負けた事を親に言い訳出来ない。」

「貴女、最近ギルバート様やウィリアム様、ディーノ様、ルーク様に近づき過ぎでは無い?身分をわかってらっしゃるの?」

4、5人で1人の女子を追いつめている。女子は予想はついたがライラだった。エレンはすぐさま走り出し、あろう事か揉み合いの真ん中に飛び出した。僕はエレンを追いかけ、エレンを庇うように前に出た。

「貴方達、何をなさっているの?」

「エレノア様、ウィリアム様!」

ライラを責め立てていた男女は驚いて一歩後ろに下がった。

「何をしていたか、聞いている。」

僕はなるべく、凄味がでるようにそいつらを睨んだ。

「・・・あの、その、何でその女を庇っているのでしょうか?その女は庶民で・・・」


「皆さーん、そこで何しているのでしようか?もう、放課後なので、各自、寮もしくはお家に帰りましょーう。」

現れたのは茶色いふわふわの髪、開いてるか開いていないかわからない緑色の目、背がひょろりと高く痩せ型だが、締まるところはしまっている細マッチョの男性。眼鏡が優男感を高めている。

彼は攻略対象者 ルノワール・リーベントだった。


先生の登場で、文句を言っていた生徒達は帰っていったが、僕の背中の後ろに隠したライラがビクッと身体を怖ばらせたのが気になった。

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