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20.ウィリアムの誕生日3


「1枚も食べられなかった・・・・・・。」

ギルが落ち込んでガックリと膝を抱えている。

「おい、未来の王が大変気の毒な様子をしているが。」

「ウィル、反省しろよ。」

ギルは守りきった。

しかし失った代償も大きかった。

あの様子では暫く口を聞いてくれないかもしれない。ライラが何やら必死でギルを慰めている。

その時、エレンが小さくキャッと叫んだ。

「ルーク、すごい汗だわ!顔も真っ赤。」

「これは一体・・・?急に息苦しくなった。動悸もする。」

「脈拍が上がってる!」

・・・まさか、クッキー中毒?!


結局その後、倒れたルークはルークの仲間たちに引き取られていき、ライラとディーノは落ち込んだギルを慰めるために彼を外に連れ出した。

生徒会室には僕とエレンが2人で取り残されている。


「急に、静かになったね。」

静まり返った生徒会室で、ポツリと僕が呟く。そうね、と頷きながらエレンが言葉を返す。

「ウィルがあんな子どもっぽいことすると思わなかったわ。」

ああ・・・・・・そうだよね。言われるとやはり落ち込む。

「でも、お兄様には悪いけど、私はちょっと嬉しかったかも。」

なんで?と問いたげな僕の表情に気づいてエレンが言葉を続ける。

「最近、お兄様をライラさんに取られたような気持ちになってしまっていて・・・。こんな子どもっぽい感情、恥ずかしいって思っていたのに、ウィルも同じだったのねって思ったら、安心したというか。」

そういえばエレンはブラコンだったんだと思い出す。

「そっか。」

それからエレンが持ってきた鞄からガサゴソと何かを取り出す。

こんなタイミングで申し訳ないけど、この後は渡す時間が取れなさそうだし当日に渡したかったから、と言われて差し出されたのは僕の誕生日プレゼントだった。


綺麗な包み紙を開けると、そこにあったのは万年筆。


偶然にも先程ライラに貰ったものと全く同じものだった。

「エレンって本当に・・・」

「えっ。気に入らなかった?」

「ううん、その逆。すごく嬉しい。ありがとう。」

僕は心底嬉しそうな顔をしていたんだと思う。エレンはちょっと頬を染めて視線を彷徨わせた後、よかった、と呟いた。

僕の好きな物を、知識として知っていて贈ってきたライラと同じものを、エレンがくれた。本当に僕のことを考えて一生懸命選んでくれたのが伝わってくる。心で感じて、僕の好きな物を分かってくれている。


「早速試しても?」

生徒会室にあった紙に万年筆を滑らせる。

「すごく書きやすい!」

調子に乗った僕は、別の紙にエレンのイラストを描いた。前世で散々描いたマンガ絵のエレンだ。

「あら、ウィルったらいつの間に絵なんて嗜むようになったの?随分変わった画風だけど・・・・・・。何だか可愛い絵ね。」

「これ、エレンだよ。」

「私?!ちょっとつり目が強調され過ぎていない?目だってこんなに大きくないし、手足もこんなに細くないわ。」

「そうだけど、でも雰囲気でてるだろ?」

まあ確かに、と納得した様子で、エレンは紙に描かれたイラストの自分をみて微笑んだ。

それを見て僕も目を細める。

「ねえ、この絵、私が貰ってもよいかしら?」

エレンが訊ねる。

「いいけど、今なぐり書きしただけのものだし、よければもっとちゃんとしたのを描こうか?」

エレンの言葉に前世の絵描き心が疼いた。

「それもお願いしたい。けど、これはこれで大事にしたいの。ね、お願い。」

僕は、「絶対に誰にも見せないで、恥ずかしいから。」と前置きして、「いいよ。」と答えた。

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