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プロローグ2

窓から柔らかな日差しがさし、時折外に見える木々がざわめいたかと思うとカーテンを風がゆらす。

ここは聖パトリック学園医務室――つまりは授業はサボりである。


入学式で盛大に卒倒しした僕は、そのまま謎の高熱を出し3日3晩もの間、意識混濁状態となったらしい。その後快方に向かったが、念のため合計で一週間の自宅療養となり、今日が学園への登校初日だ。しかし突然蘇った前世の記憶を持て余した僕はここでこうしてゴロ寝というわけだ。


自分と誰かを比べた事は無かったが、成る程、僕は銀色の髪、碧眼の瞳、すらりとした身長にフォルムは中肉中背だが実際は程よく鍛えられた身体、顔立は甘く整っていて、更に低音ボイス。美形かと言われれば間違いなくそうだ。ご婦人方や使用人には笑うと仔犬の様に愛嬌があり、隙があって良いと言われていた。乙女ゲーム攻略対象のイケメンだと言うのならば納得である。


「ときプリ」――前世でプレイしていた乙女ゲーム――は、聖パトリック学園高等部に主人公ライラ・スペンサーが入学してから卒業までの3年間の間に攻略対象のキャラたちと恋愛をしたり学園生活を楽しんだりする恋愛シミュレーションゲームである。

恋愛対象となるキャラクターには同級生や上級生、後輩に教師やその他学校関係者なんかがいる。もちろん、自分もその中の1人だ。

彼らとの親密度をあげるには、各キャラ毎の会話イベントで好感度の高い受け答えをしてポイントを積み重ねるほか、学業や運動、文化活動などのステータスも重要になってくる。そうして、主人公が卒業を迎える3年後、その時点で主人公と1番仲の良いキャラクターとのパラメーターが十分に高ければ恋愛END、足りない場合は友情ENDとなる。「ときプリ」の特徴として、主人公のパラメーターによって発生するイベントが様々に変わる。例えば、ギルとの恋愛ENDを目指して全てのイベントを回収しようとすると、ギルだけではなく別のキャラクターとの親密度もある程度あげる必要があるし、1度他のキャラクターとの恋愛ENDを見ておかなければ発生しないイベントもある。この複雑なシステムのため、全てのイベントスチルを集めるために前世の僕は「ときプリ」を何周もプレイしたものだった。なにせ同人活動をするくらいにはまっていたのである。創作物(うすい本)にオリジナルとの著しい矛盾がないようにキャラ設定まわりの情報に気をつかったり、セリフのキャプチャーをとったりと、割とマメなオタクだったと思う。

はじめは、蘇った記憶は前世のものでも何でもなく全て妄想で、自分の頭がおかしくなってしまったのかとも考えた。

しかし、記憶が蘇る前と後で決定的に違うことがあった。

萌え絵が描けてしまうのである。

遠近法がようやく編み出されたこの世界にあって、この画風はかなり特徴的というか異彩を放っている。前世でいうところのレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロのような画が一般的なこの世界に、目が大きくて顎が小さいデフォルメされたイラストは果たしてどう受け止められるのだろうか。

取り留めもない思考は突然のドアのノックで中断された。

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