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17.出待ち

本日3話目投稿です。

放課後、僕は学園の購買併設のカフェテリアのテラスで佇んでいた。


「ヘイ、ウィル!こんな所で何してるんだ?」

汗を太陽にきらめかせたルークが話しかけてきた。

「・・・人間観察。」

「フェッ?!暇なら練習つきあってくれよ。」

「暇じゃない。」

しかし、実際暇である。

「ときプリ」では、主人公のライラはよくこの辺りでアルベルトと会話をしていたので、ここで張っていればアルベルトに会えるかと思ったのだが・・・。

本でも持ってくれば良かった。鞄には教科書くらいしか入っていない。

「ルーク、僕が奢るからさ、タンドリーチキンでも食べていかないか?」

話し相手が欲しい。

「悪いが練習が詰まっているんだ。ウィルも気が向いたら来いよ。」

じゃあな、とルークは行ってしまった。


人々をぼーっと眺めていると、エレンの姿が見えた。エレンも僕に気づいてこちらにやってくる。

「ウィル、カフェで休憩かしら?」

「まあ、そんなところ。エレン、いちごパフェは食べたくない?」

「ごめんなさい、今日はクラブの話し合いがあるの。」

エレンにもあっけなく振られてしまった。

「エレンにウィル、ここで会うのは珍しいな。」

ギルまでやってきた。

「ウィルがいちごパフェを食べたいんですって。私はこれから別の用があって行かなきゃならないのだけど。」

待って、僕が食べたいわけじゃないけど。

「そうなのか?給仕を呼ぼう。すみません!こちらにいちごパフェをひとつ!」

王子の声が朗々と響く。

「ギル!ギルも食べていこうよ!」

1人でいちごパフェなんて食べたくない!

「ウィル、すまない。ディーノに生徒会室にくるよう呼ばれているんだ。ディーノは別件の用事もつまっているらしく、急いでいるようだし行くよ。」

悲痛な叫びはギルの過密スケジュールの前に敗れた。

悲しいが、もう諦めるしかない。

「わかった。僕も後から生徒会室に行く。仕事も溜まっているからね。」

早くアルベルトに会えますように。

エレンとギルがいなくなって、ほどなくしてからいちごパフェが運ばれてきた。

店員さんの気遣いか、パフェに2本ささっているスプーンが悲しい。あ、これ、それとも標準装備でスプーン2本なのかな?


パフェを男一人で平らげてもアルベルトが現れる気配はない。

本当に暇だ。

こうなると、ノートにイラストの練習でもしたくなってくるな。

万が一誰かに見られたら恥ずかしいし、特に顔のパーツは衝撃的だろうからやめておくとして・・・。

どうもさっきから、女生徒がよく通りがかるんだよな・・・。よし、この世界の洋服のヒダの入り方を研究しよう!

そうして僕は通りがかる人々の洋服のスケッチをノートに描き始めた。


・・・


結局アルベルトは現れなかった。


「あれ?ウィル、まだいたの?ずっとここに?何で?」

練習が終わったのだろう、爽やかな顔をしたルークが通りすがりに話しかけてくる。

僕のノートには、びっしりと通りすがりの人々ー主に女生徒ーの洋服や体のパーツが描かれている。これだけ見たら大変危ない人物だ。

「ルークはうるさい。」

慌ててノートを鞄にしまい込んだ。家に帰ったら破棄しよう。

ふと見ると、ディーノとライラが並んで歩いている。

「ディーノとライラ嬢?!」

思わず出た言葉に、ルークも2人に気がつく。

ギルの言っていたディーノの用事ってライラとのデートの事か。もちろんギルは知らないのだろう。

2人の距離は近く、仲睦まじ気である。

なんとなく、前世で大学生の同級生がデートに忙しくしている中、うすい本の締切に追われていた日々を思い出した。特に冬コミ前は寂しかった。

ルークが前髪をくしゃりとさせ、呟いているのが聞こえた。

「・・・別に、俺は俺でがんばるだけだ。」

視線の先にはライラ。

ルークの思うところがわかり、僕までもが切なくなる。それもこれもラブリースマイルハートクッキーのせいだ。なんて罪深いクッキーなんだろう。

「ルーク、気にするな。お前の方が男にもモテる。」

「やめてくれ。」

苦虫を噛み潰したような顔をして、ルークは行ってしまった。


ルークも行ってしまうと、途端に寂しくなった。ライラももう寮に帰っているだろうし、僕ももう切り上げよう。

「エレン、クラブは順調かい。」

「ええ、楽しいわ。色々と工夫もしてるの。今日も色々なアイディアが出たわ。」

「何よりだね。」

この聞き知った声は・・・。

「ウィル?まさかとは思ったが、まだここに居たのか。」

やっぱりギルとエレンだった。

「まさか、あれからずっと居たの?」

エレンがルークと同じことを聞いてくる。

「もしかして寝てしまっていたのではないか。お前は最近根詰めすぎだ。今日はもう一緒に帰ろう。ウィルが気にしていた生徒会の件も、私がやっておいたから大丈夫だ。」

なんて優しいんだろう。自分だって忙しいのに、こんな訳の分からないことをしている僕の分まで・・・。


「ありがとう、ギル。」


アルベルトに会うのは別の方法を考えよう。

僕は少し泣きたくなった。



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