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163.王様の耳はロバの耳(ライラ視点)

確かにこれは大スキャンダルだわ……。



国民の大多数は失望するだろうし、王妃派は勢いづくだろう。なにせ、愛を貫くという事は世継ぎが産まれないという事なのだから。

国民は政略結婚の意味を王子に思い出してもらい、その義務を遂行することを期待するだろう。だけど、そもそも政略結婚するにしたって、王子の相手が誰かわかったら相手から倦厭される要素になる。

BL好きだったらともかく、普通の女性は男が好きな男に嫁ぎたいとは思わないはずだ。



ギルの言う通り、これは公にできることではない。アスティアーナ国の利益に反するもの!



それはわかっているし、誰にも言わないとギルに大見得切ったばかりだけれど……。



身体の中心から自然と湧き上がる、誰かとこの喜びを分かち合いたくて仕方ない気持ち!

こちとら前世から合わせたら15年以上もウィリアム×ギルバートに人生費やしてるんだもの。

悲願達成!

大願成就!

人生における革命的な瞬間に、感情を殺して貝のように押し黙るなんて人間らしくない!ストレスでハゲそうだわ。

それに、私には私の喜びも全て理解して、しかも絶対に他言しない人がいるじゃない!

ーー願わくば、もっと共感的理解というか、キャーキャー一緒に盛り上がれたらいいんだけど、まあそれは贅沢ってものね。

多くを望みすぎてはいけないわ。



そうして私は、内なる熱狂を解き放つために、羽のような軽い足取りで目的の人物に会いにいく。

どこにいるかは脳内完備のMAP機能で追跡できる。



「ア・ル・ベ・ル・トー!」



アルベルトは私に呼ばれるといつものように振り返って挨拶をした。

「ライラ、えらく機嫌がいいな。声が弾んで鈴みたいだ。何か良い事でもあったのか?」

「うふふ。わかる?教えて欲しい?」

「おいおい。また焦らすつもりかよ。本当は言いたくてたまらないくせに。早く言えよ」

「こればっかりは、そう簡単に教えることはできないわ!絶対に他言しないと誓うまでは!!」

「あーはいはい。誓う誓う。で?」

「駄目よ。遊びじゃなくて真剣な誓いなのよ」

私の抗議にアルベルトは右手のひらを胸に当てて誓いのポーズをとった。

「こうか?ほら、俺が約束破ったことなんてなかっただろ。誰にも言わない」

「それで良いわ。絶対に秘密だからね。アルベルトにだけ特別に教えてあげるわ……。まずは深呼吸して。目を閉じて」

「そんなに大層なことなのか?早く言えって」

「そんなに焦らないで。落ち着いて」



素直に深呼吸して目を閉じたアルベルトに近づき、耳元でささやく。

……つもりだったのだけど。

「アルベルト。もう少し屈んでくれないと届かない」

「……。何だってここまでしなけりゃいけないんだ……。ライラがキスしてくれるっていうなら喜んで屈むんだが」

「はいはい。冗談はいいから早く!秘密を知るのに多少の苦労はつきものよ」

「ったく……」

ぶつぶつ文句をいいながらもアルベルトが屈む。

私はアルベルトの耳元に向かって、ありったけの熱い思いをこめてささやいた。



「絶対誰にも言っちゃいけないけど………ギルバート様がウィリアム様とついに結ばれたの!!」


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