14.手作りクッキー
ルーク、ルーク何処だ、居た!
グラウンドの端のベンチに後ろ姿が見えた。
「ルーク、今いいか?」
「ウィル?何か用か?」
ルークの口にはこんもりとクッキーが詰め込まれていた。
「そのクッキーどうした?」
若干、顔が引きつってしまったと思う。
僕の顔を見て不思議そうにルークはこちらを見ている。ちょっと考えた後ハート型のクッキーを1枚僕に差し出した。
「食べたいならやるが?ライラがここのところ毎日くれるんだ。手作りらしい。俺の為に作ったから誰にもあげるなとの事だが、素晴らしい味だからお前もどうだ?」
「いや、僕はお腹がいっぱいだから、遠慮しておくよ。」
実際にラブリースマイルハートクッキーは見た事がないので見た目だけで判断出来ない。名称からしてハート型なのは確かだ。食べてみるべきだろうが食べたくない。
「本当に美味しいぞ。令嬢なのにライラは料理も上手なんだなぁ。」
バリバリとさせているクッキーの量は多分一袋20枚くらい入っているのではないか。
「毎日、その量くれるの?」
「美味しいから、直ぐに食べきってしまうな。これを食べてる間はライラの事を考えてしまう。早く手合わせしたいな。」
と話しているルークの瞳は密かに熱がこもっているようだった。
「ルーク。」
僕は彼の気持ちが純粋なものだと知っているので、切なくなってしまった。
しかも、ラブリースマイルハートクッキーはフェラー社製。手作りは嘘だから!!
ルークのクラブの後輩が遠くからルークを呼んでいる。
「ルーク先輩、ランニングしませんか?」
「了解。・・・じゃあ、走りに行くよ。ウィルまたな。」
と立ち上がり、クッキーの袋を僕に渡した。「残り1~2枚しかないし、ウィルに少し渡したくらいでライラも怒らないだろう。食べてみろ、美味しいから。」
太陽を背に、爽やかスマイルを残してルークは行ってしまった。
手元の袋の外側には、ラブリースマイルハートクッキー20枚入とご丁寧に書いてあった。思いっきり商用に見えるのに、手作りだと信じてるのかルークは・・・・・・。恋は盲目。見えていないんだ。
僕はとたんにギルのことが心配になった。




