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109.お菓子作り

バレンタイン前日。

材料と調理器具を抱え、僕とライラは連れ立って生徒会室へ向かう。僕にギル宛てのお菓子を作らせたいライラと、ライラにギル宛てのお菓子を作らせたい僕と、ギルにあげるのだったら他の人にも用意せざるを得ないと考えているライラの思いが錯綜し、建前としてはお世話になった人全員に配るシフォンケーキを作るのだ。生徒会室で生地を作ったら、学食にあるオーブンで生地を焼いてもらおう。


生徒会室に行くと、ギルが書棚の整理をしていた。

「ギル……!何故ギルが整理を?」

予想してなかったギル本人の存在に僕は驚いた。これでは、バレンタインのサプライズ感が薄れてしまう。

「以前から気になっていたんだ。良く使う場所だし、時間が出来たからな。ウィルとライラは?今の時期は特に仕事はなかったと思ったが、その荷物はどうしたんだ」

驚いている僕とは裏腹に、ライラは満面の笑顔で元気にギルの質問に答えた。

「ウィルがバレンタインに、ある人にプレゼントしたいそうでーす!だからこれからケーキを作るの♡」

ちょっと待て!何だその、メインで作るのは僕で私は手伝うだけみたいな言い方は!

「はあっ?何言ってるんだよ!僕は手伝うだけだろ?作るのはライラだろ?!逆だろ逆!!」

「またまた、恥ずかしがっちゃって~」

「違う!絶対違う!意味が違くなってる!」

ライラとギャイギャイ言い合いをしていると、ギルがため息をつきながら言った。

「……要するに、バレンタイン用のお菓子を2人が作る、という事か」

ギルがきれいにまとめてくれた。2人、と言ったところでギルが少し淋しそうに見えたのは気のせいだろうか。

「私がいては邪魔だろう。きりが良いところまで終わらせたら退室する」

「……」

ギルの言葉に僕とライラは思わず顔を見合わせた。

「別に全然邪魔じゃないけど……。むしろ邪魔なのは私なのだけど……。そうだ、良かったらギルも一緒に作る?」

思わずライラがギルに提案をする。

「しかし、私が作ったケーキなど、貰っても微妙じゃないか?……特に、ライラがケーキをあげる相手にとっては」

ギルの顔が曇っている。ライラがあげる相手と言いながら誰を想像しているのだろう。

「確かに……微妙かしら?」

ライラが考え込みながら僕の方を見る。待て待て待て、ギルを悲しませてどうするんだ!本末転倒も良いところだろう!

「何言ってるんだ、ライラ。それなら僕の立場はどうなる?自分で材料用意して、自分で作ったものをライラから貰う僕の立場は?」

慌ててライラの言葉に反論する。どうしてこう、ライラって地雷を踏みに行くんだろう。フォローするこちらの身にもなって欲しい。

「ギルにも!ケーキを贈る予定なんだよ」

「お世話になった皆に作るケーキなの。っていうか、ウィル、ケーキ貰う気満々なの?あげるなんて一言も言ってないんですけど」

「今更そこ?!材料買ったの僕なんだから食べたっていいだろ?」

僕達2人のやり取りを見てギルは納得がいったらしかった。


「自分で作ったものを貰うのは微妙?どうかしら、ギル?」

ライラが再びギルに訊ねると。

「そういうことなら……構わない。むしろ一緒に作ったことが良い思い出になりそうだ。私にもやらせてくれ」

袖まくりをするギルを見た途端ライラの瞳が輝き出した。

「そう……共同作業って良いわよね……!」

ライラは僕とギルを交互に見ながら頬を紅潮させている。

そんなライラを幸せそうな微笑みで眺めるギル。

勘違い……してるかな。するよな、そりゃ。

ライラはギルとケーキを作ることを喜んでいる訳ではなく、僕とギルを頭の中で勝手に絡めて萌えてるだけなんだけど……。

ライラの口が半分開いて、いかにもマヌケ面をしている。

一体ライラの頭の中では僕とギルは今どうなっているのだろう。

でも、ギルが幸せそうだから、まあ良いかな。

ギルの神々しい微笑みを前に、僕はライラへの邪推を頭の隅に追いやった。

こうして僕達3人の、バレンタインのお菓子作りが始まった。

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