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104.平和の祭典3日目6

「カトリーヌ嬢……。ウィルの婚約者候補なんだろ。俺に聞かれてもなあ。特に言うことはないよ」

「ちょっとちょっと。僕がカトリーヌと婚約とか有り得ないから。そんな話になったらカトリーヌと僕の2人で阻止するよ。そうじゃなくて!家同士とかそういう事を抜きにして、カトリーヌ嬢本人についてルークの印象はどうかな、と」

ルークが僕の質問の意図を勘違いしているようなので、改めて聞き直すと、ルークは少し困ったようだった。

「どうって言われてもな。ウィルこそ、どうして婚約は有り得ないんだ?この舞踏会で事前にペアを組んでるんだから、可能性としてはありだろ?」

確かにルークの言う通り、この舞踏会で踊るということはそういう意味があったのだ。冗談じゃないよなあ。

「うーん……。可能性としてはそうなのかもしれないけど、カトリーヌ嬢と結婚している僕のイメージができないというか……。あっ、カトリーヌ嬢は良い娘だとは思うけど……」

カトリーヌとの結婚を回避するためなら僕はあらゆる努力ができそうな気がする。

「そういうものかな。じゃあ、さっき羨ましいって言ってたのは何でだ?」

ルークからしてみれば、羨ましいって言ったり、結婚は無理と言ったり、僕の言動は不可解に思えたのかもしれない。

「それは……なんていうか、カトリーヌ嬢があんまりにも幸せそうに踊ってるものだから、ルークはさておきカトリーヌ嬢が羨ましくなっただけ。なんか良いなって」

僕の言葉を聞いたルークはしばらくじっと僕を見ていた。

「羨ましいのはカトリーヌ嬢で、俺のことは特に別に羨ましくないってことか?」

「……まあ、そうなるね」

ルークに改めて念押しで言われると、何だかあられもない気がして僕はちょっと居心地が悪い気がした。

「……なるほどな。それなら色々合点がいく」

僕の言葉にルークは納得がいったらしい。

そうして頷きながらルークは言葉を続ける。

「だったらウィルもエレノア王女と踊って来ればいい」


………………。


「……………ええっ?!」

ルークの返答は僕の予想外だった。予想外すぎて頭の中で3回くらいルークのセリフを反芻する。何故ここでエレンの名前が……?


僕が余程驚いた顔をして固まっていたのだろう。ルークがわざわざ発言の意図を説明してくれる。

「俺はダンスが上手くないから、カトリーヌ嬢が幸せそうに踊っていたとすれば、その……俺に好意を抱いているからかと。それが羨ましい、というなら、ウィルだって好きな人と踊れば良いだろ?」

ルークから発せられた好きな人という単語に思わず反応してしまう。

「僕がエレンを好きって、そういう事!?」

「そうだと思ってた」

ルークは顔色も変えずに平然と言ってのけた。

「違うよ!!エレンは幼馴染で……」

それに対して僕の慌てようときたら。きっと滑稽に違いない!

「そうか?」

「そうだよ!駄目だよそんなの」

「別に踊るくらいは駄目じゃないだろ」

「踊るくらいって、エレンは忙しいから無理でしょ。っていうか、そもそも男女として好きとかじゃないし!ルークこそ、カトリーヌ嬢はどうするの?」

目の前のルークの言葉を目いっぱい否定し、拡散した思考を元に戻すかのように首をぶんぶんと横に振り切り、僕は話題を微妙にずらした。

「別にどうもしない」

「カトリーヌ嬢のことは何とも思ってないという事?」

「ここ数日で会ったばかりだぞ?個人的な感情がどうとかなんて言われてもな。好意を寄せられれば悪い気はしないが……そんなの誰だってそうだろ?」

「そりゃそうか……」

出会って3日、お互い一目惚れでもなければ、そう簡単にはいかないか。

「でもウィルは違うだろ?あれだけいつも一緒だものな。考える時間は充分あった」

またエレンと僕の話!

せっかく逸らした話をまた戻してくるルーク。狙ってやってるのか、無意識なのか。

「やめてよ、ルーク。エレンのことは恋愛対象として考えたことない」


ドクン


言った瞬間、心臓が大きく鼓動する。

…………!?なんだ、これ……。


「自覚がないならそのまま無かったことにするのも良いかもな。時間が解決する、良くも悪くも」

心臓の鼓動を宥めるようにゆっくりと息をする。

「ルーク、それ、どういう……」



言いかけた僕の言葉が終わりを告げる前に、2人の会話は突然現れた騒々しい声たちにかき消されてしまった。

「やっぱり!!ディーノ様のお皿、料理それだけですの?少なすぎますわ!」

ディーノとカトリーヌ嬢が言い争いをしながらこちらに戻ってくる。

「こんなもんだろう?!お前こそ女のくせにそんなに取ってどうするつもりだ。そんなに食べる女、見たことないぞ」

「それはコルセットがキツイからですわ!殿方の前では食べないだけで、陰ではこのくらい皆食べてます!!」

「そ、そうか。知らなかった」

言い争ってるけど、あれはあれで息が合っている……のか?若干ディーノが押されているように見えるのは気のせい……?

とにかく、ルークの意味深な言葉は2人の騒々しさに押されて僕の中に沈んでいったけど、刺さった小さな棘のように心の奥に引っかかったのだった。

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