Eplogue:そして、またいつか出会うその日まで。
どれだけ眠っていただろう。
目が醒めると、知らないはずの記憶を持っていた。
けど、違和感なんて感じられない。
まるで自分のことのように、しっくりとくる。
――――まあ、俺が知っている人だからかもしれないけどな。
「で、悠ねぇが度々変なところを見ていた理由はこれか」
どこを向いても目線より少し高い位置に、24:15:43と数字の羅列が並んでいる。
多分、これが俺に与えられた残り時間なんだろうな。
てか、ガチで余裕ないくらいの時間だな、おい。
こんな短時間で悠ねぇは俺をしっかりと案内していたんだから、本気で尊敬し直さなきゃな。
「さて、と。案内する人は、と……。――――ああ、いた」
白く何もない空間に、一人の老人が訪れていた。
前に会ってからどのくらいの月日が経ったのだろう。髪はすっかりと白くなり、背もだいぶ縮んでいた。
それでも、一目見ただけで誰なのか思い出せる。
だってその人は、俺の事を大事に思ってくれていて、文句を言いながらも俺のことを思ってくれていた、大切な人だから……。
「いかんいかん、俺が泣いてどうする。俺が泣かせる側になるんだから、こんなことで泣いていたら埒が明かないぞ……」
涙もろいのはうちの家系のいいところでもあり、悪いところでもあるよなぁ。
こんな時に泣いてしまったら、案内人としてよろしくない。
「よし!」
両手で頬を叩いて、気を引き締めなおす。
……もちろん、痛みなんて存在しないし、辺りに音が響くこともない。
それでも、生きていたころのいつもの癖は、最期まで……いや、死んで暫く経っても、体に染みついて離れることはなかった。
正直、悲しくないと言ったら嘘になる。
でも、過ぎ去ってしまった過去を悔やみながらも、今を生きているみんなと生きた記憶は、決して辛いものじゃなくて、笑いながら思い出せるから。
自分が生きていたという実感は、今もこの魂に宿っていると、俺はそう思っている。
どれだけ楽しく愉快な生活をしていても、どれだけ悲しみに暮れた生活をしていても……。
どのような道を歩んだとしても、結局、人生は一度きり。
――――ならば今度は、救いを求めて嘆く彼の手助けをするのは、きっと自分の番だ。
「初めまして、寺田朝陽さん」
驚かせないようにゆっくりと近づいた俺は、案内人として精一杯の笑顔で兄貴に話しかけた。
《fin》




