表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/37

Eplogue:そして、またいつか出会うその日まで。

 どれだけ眠っていただろう。

 目が醒めると、知らないはずの記憶を持っていた。

 けど、違和感なんて感じられない。

 まるで自分のことのように、しっくりとくる。


 ――――まあ、俺が知っている人だからかもしれないけどな。


「で、悠ねぇが度々変なところを見ていた理由はこれか」


 どこを向いても目線より少し高い位置に、24:15:43と数字の羅列が並んでいる。

 多分、これが俺に与えられた残り時間なんだろうな。

 てか、ガチで余裕ないくらいの時間だな、おい。

 こんな短時間で悠ねぇは俺をしっかりと案内していたんだから、本気で尊敬し直さなきゃな。


「さて、と。案内する人は、と……。――――ああ、いた」


 白く何もない空間に、一人の老人が訪れていた。

 前に会ってからどのくらいの月日が経ったのだろう。髪はすっかりと白くなり、背もだいぶ縮んでいた。


 それでも、一目見ただけで誰なのか思い出せる。

 だってその人は、俺の事を大事に思ってくれていて、文句を言いながらも俺のことを思ってくれていた、大切な人だから……。


「いかんいかん、俺が泣いてどうする。俺が泣かせる側になるんだから、こんなことで泣いていたら埒が明かないぞ……」


 涙もろいのはうちの家系のいいところでもあり、悪いところでもあるよなぁ。

 こんな時に泣いてしまったら、案内人としてよろしくない。


「よし!」


 両手で頬を叩いて、気を引き締めなおす。

 ……もちろん、痛みなんて存在しないし、辺りに音が響くこともない。

 それでも、生きていたころのいつもの癖は、最期まで……いや、死んで暫く経っても、体に染みついて離れることはなかった。


 正直、悲しくないと言ったら嘘になる。

 でも、過ぎ去ってしまった過去を悔やみながらも、今を生きているみんなと生きた記憶は、決して辛いものじゃなくて、笑いながら思い出せるから。

 自分が生きていたという実感は、今もこの魂に宿っていると、俺はそう思っている。


 どれだけ楽しく愉快な生活をしていても、どれだけ悲しみに暮れた生活をしていても……。

 どのような道を歩んだとしても、結局、人生は一度きり。

 ――――ならば今度は、救いを求めて嘆く彼の手助けをするのは、きっと自分の番だ。


「初めまして、寺田朝陽さん」


 驚かせないようにゆっくりと近づいた俺は、案内人として精一杯の笑顔で兄貴に話しかけた。



《fin》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ