真坂 姫奈
4年前に遡る。
まだ、俺達は中学生だった。
俺には仲のいい3人の幼馴染みがいた。
海斗に、恵美子に、姫奈。
皆、幼稚園からの付き合いで、俺達はお互いに信頼しあっていたと思う。
ある日、学校からの帰り道で、姫奈が泣いていた。
その日は、姫奈は部活で、俺達より遅く帰る筈だった。
「どーしたんだよ。姫奈。」
姫奈は顔をあげると、涙を拭いて「なんでもない。」とだけ言葉を発した。
「なんでもないわけねぇだろ。話してみろよ!仲間だろ!」
姫奈の突き放すような言動に腹が立った俺は、強い口調でそう言った。
姫奈は一瞬だけ俺の顔を見ると、悲しそうな顔で口を開いた。
「仲間、ならさ。お願い。今は、なにも聞かないで…。」
俺は姫奈にそう言われて、大人しく引き下がるしか無かった。
姫奈はそれから、三ヶ月が経ったある日、突然この世からいなくなった。
死因は首を吊っての自殺。
第一発見者は俺と海斗、それから恵美子だった。
その日、姫奈と遊ぶ約束をしていた俺達は、集まって姫奈の家に行った。
姫奈からは、「鍵、空いてるから勝手に入っちゃっていいよ。」そうメールが届いていた。
姫奈の部屋に入ると飛び込んできたのが首を括った姫奈の姿だった。
首吊りの死体は一番、酷い姿になる。そういう話があるが、それは本当のことだった。
俺達は姫奈を下ろすと、すぐに警察と消防に連絡をした。
姫奈のベッドに遺書が置いてあることに気がついた。
細く綺麗な字で、鉛筆書きで、遺書と、小さくしたためている。
開けて中を見た。
きっとこの手紙は義人に海斗に、それから恵美子の3人が読んでいることでしょう。
私は今日、旅立つことに決めました。
ごめんなさい。
嫌われたり、気持ち悪がられたり、避けられたりしたら嫌だからずっと言えなかったけど、私、部活で苛められてました。
物を隠されたり、悪口を言われたりそんな軽いものから、殴られたり、蹴られたり、それから、一番酷かったのは、………を食べさせられたことです。
あるときは、私は………を無理やりさせられたことがありました。
嫌でした。
毎日毎日、繰り返されました。
もう耐えられません。
ごめんなさい。
私は消えます。
でも、私は許せません。
私がいなくなっても、平然と生きていく人達がいることが。
義人、海斗、恵美子、最後に、一つだけお願いがあります。
私の仇をとってください。
私の代わりに、苦しみをあじあわせてください。
私の代わりに、アイツらを、殺してください。
これだけが、私の望みです。
義人、海斗、恵美子、今まで仲良くしてくれてありがとうございました。
こんなお願い事をしてごめんなさい。
でも、私にはあなたたちしかいないのです。
どうか。お願いします。
手紙には、ぐちゃぐちゃに線で消された部分があった。
そして、涙なのか、水に濡れた跡がいくつもあった。
そして、手紙には、復讐して欲しい人達だろう。名前が書かれた紙も入っていた。
「やってやるよ。姫奈。」
そう言って立ち上がったのは、海斗だった。
この日から、復讐の計画を、3人で綿密に練り始めたのだ。