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真相解明

包丁を片手に、海斗くんの部屋についた。

地下室にいた美紗さんも一緒に連れられる。

まだ信用しきってないのか、ロープでの拘束がされたままだ。

「それで、密室殺人について、説明してくれよ。」

そう訊いたのは彰さんだ。

「密室殺人ですか?」

僕は惚けた。

「さて、なんのことかだかわかりませんね。」

太郎が苛立った様子で突っかかってきた。

「なにふざけてんだよ!早く密室の殺しの説明しろよ!こんな事件さっさと終わらせろ!」

今にも、顔から唐辛子の煮汁でも噴出しそうになっている。

「密室の殺しについて、ですか。それはそもそも、説明する必要すらないんですよ。」

一呼吸置いて、溜めてから言った。

「だって、密室で殺人なんて起きてないんだから。」

皆がなに言ってんだこいつ頭おかしんじゃねぇかって顔で僕を見てくる。

「どういう意味なんだ?」

彰さんが僕に質問した。

「今、お見せします。」

僕は包丁を振り上げて、海斗くんの死体に近寄って行く。

「こういうことです。」

その死体に思い切り包丁を突き刺した。

「いやあああああああああ!」

悲鳴と共に薊、美紗さんが顔をそらす。

「なにやってんだよ!」

そう僕を怒鳴りつけたのは太郎さんだ。

構わず、僕は胸に突き刺した包丁で、一気に下腹部まで縦に裂いた。

「バカッ!あんた!」

真央が僕に駆け寄ってくる。

しかし、本来なら吹き出す筈の血は一滴も流れず、真っ白な物体が…、綿が舞った。

「…え?」

皆が呆然とした光景でそれを見る。

皆、真っ赤な血が噴水のように吹き出して、部屋が真っ赤にペイントされる絵を想像していたのだろう。

「そう見ての通り。この海斗くんの死体は、ただの人形なんですよ。」

皆が黙って僕を見てくる。

信じられないと言った面持ちだ。

皆の驚愕した表情を見るのは悪くない気分だ。

プロのマジシャンはいつもこんな気分を味わっているのだろうか。

「そう。全ての殺しの犯人は、海斗くんなんです。」

説明を始めた。

「まず、僕がおかしいと思ったのは、海斗くんの死体でした。」

皆が首をかしげる。

「海斗くんの死体は足を切られて死んでいた。なのに、僕たちは誰も海斗くんの悲鳴を聞いていない。誠治さんに咲さんは、頭を切られていましたから、即死していたら悲鳴はあげられないけど、海斗くんは違う。悲鳴をあげられた。」

「次に、最初に皆でこの部屋を訪れたとき、血とは違う生臭さが混じってるのに、気がつきました。」

「そんなの、わかるの?あの酷い臭いの中で?」

驚いた様子で訊いてくるのは神名さんだ。

「はい。最初は何かわからなかったんですけど、今朝わかりました。それは魚の臭いだったんです。」

「魚の?」

薊が僕の手を握って、質問してくる。

「そうだね。じゃあ、この部屋で、魚をなにに使ったのか。なんだと思う?海斗くん人形についてる血だよ。」

「このペンションで出てくるメニューは、スマホのサービスで分かるようになってるんですよね。」

吉田さんに確認すると、吉田さんは首を縦に振る。

「それで犯人はその事を知っていた。前もって、ペンションで魚の料理が出てくる事を確認していたんでしょう。」

「犯人は冷蔵庫から魚を盗み出す。この部屋に人形を用意して、魚を切って流れた血を人形に振りかけた。だから大量に魚がなくなっていたんです。人間の血に見せかけられるぐらいの量の魚が必要ですからね。」

「ちょっと待って。」

ストップをかけたのは真央だった。

「なにかな。」

質問は受け付ける。

「こんなデカイ人形、どうやって運んだの?こんなのが入るようなカバンを、海斗くんは持ってたの?」

いいや。そんなのを持ってたら怪しまれる。

「持って無かったよ。これは、分割して運んだんだ。三つのバッグに分けてね。」

「そうだよね?そこの海斗くんの仲良し二人組。」

皆の注意がそっちに向く。

「じゃあ、アイツらも?」

彰さんが訊ねてきた。

「共犯者です。」

二人は首を横に振りながら、諦めたような顔をする。

「さっき、美紗さんにだしになっていただいた上で、確認したのはそれでした。見ましたよ。義人くんのバッグの中をね。綿が少し残っていました。」

さっき回収した綿を見せる。

「そうっすよ。人形についてバレてんなら言い逃れしたって意味ねぇや。どうぞ、説明続けて。」

「まず、誠治さんが殺された日の夕食、海斗くんを残して食堂を出た二人は、海斗くんの部屋で海斗くん人形を組み立てた。」

「海斗くんの部屋の鍵は君達に、義人くんに、…恵美子ちゃんであってたかな。二人に前もって、海斗くんが預けていた。」

「そして、君達と入れ替わりで食堂を出た海斗くんは、誠治さんを殺した。」

「海斗くんが逃げた場所は、義人くんか、恵美子ちゃんの部屋だね。殺したあと、どちらかの部屋に隠れた。」

「多分今は、恵美子ちゃんの部屋かな。義人くんの部屋は調べさせてもらったし、中にはいなかった。まあ、鉢合わせして返り討ちにあったら嫌だから、詳しくはあえて調べなかったけど。」

「前もって鍵を交換してた訳だな。」

頷きながら、金髪パンチが言う。

「あってるっすよ。」

僕は話を続ける。

「次に、いよいよメインディッシュの密室の謎なんだけど。これは簡単。海斗くん人形に真っ先に駆け寄った二人が、預かっていた鍵を人形の下に入れただけ。これで密室は完成だ。」

「最後の咲さん殺しだけど、これは海斗くんが隙を狙って刺しただけだ。ずっと二階にいた海斗くんは、ただ咲さんが隙を見せるのを、一人になるのをただ待てば良かった。」

「これで終わり。説明終了。呆気ない話だったね。」

以上で、僕は説明を終えた。

説明を終えると、皆が義人くん恵美子ちゃんを締め上げた。

真央が二人に怒鳴りつける。

「海斗はどこだ?言え!」

真央は恵美子ちゃんの中指を逆に曲げた。

「だから、二人のどちらかの部屋に隠れてるんだって。多分、恵美子ちゃんの部屋。」

僕は鳥肌を抑えながら真央に言った。

真央は部屋を飛び出して行った。

「指、かわいそうとも気の毒とも思わないけど、とりあえず、なんでこんなことしたのか聞かせてくれよ。」

僕は二人に訊ねた。

「そんなこと聞いてる場合じゃないよ。手当てしないと。」

薊は二人に近寄って、手当てしようとする。

「いらないっての。」

そう恵美子ちゃんが吐き捨てるように言った。

「あの真坂 姫奈っていう名前が関係あるんだろう。」

二人に訊ねる。

「そう、そうだよ。アイツらは、姫奈を、殺したんだ。」

そういって、義人くんが話し始めた。


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