執行猶予一日目 エプソード:大晦日
”「正月」それは、日本で一年の始まりを祝う日のことである 日本人は元日から3日間、おせちやお雑煮を食べながら、駅伝やお正月番組を見るのがならわしなのであるこの物語は正月を嫁(予定)と過ごした男の物語である ”
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「映姫様、小町さんの仕事の手伝い終わりましたよ。」
やりたくて手伝ったわけではないが、大晦日に女性に残業させるというのも放ってはおけない。
「そうですか、すみません。うちの小町がまじめにやってくれれば迷惑をかけることも無いのですが。」
「まあ、そういうところが小町さんらしくていいんじゃあないですか。」
今日は大晦日。晦日というのは三十日とも書き、つまりは月の終わりを指す。12月ありその最後の月が最も大事なので大という字が付くらしい。
自分は日本人(ドイツのクォーターだが)なので、アメリカのように花火をバカみたいに打ち上げたりはしないが、年越しそばを食べながら、除夜の鐘を聞くというのを家族で毎年していた。
自分が死んだのは確か11月の終わり頃でこの地獄ではたらきだしてもう1ヶ月経つ。地獄では物食べずとも生きていけるし、食事というのは娯楽のようなものなのだろう。
「映姫様は正月はどう過ごすんですか?仕事ですか?」
「来年は休暇を貰って過ごそうかと思います。今年のお正月は仕事でしたから。」
お正月でも死ぬ人は減るわけではないし閻魔の仕事というのは終わりが見えない。見た目で言えば、同い年か1つ上くらいの見た目の少女なのだが、まったく頭が下がる。
「四季様~。今年の仕事終わりましたよ~。」
事務所のドアを開けて、小町さんが入ってきた。
「ちょうどいいところに。小町さんは正月はどう過ごすんスか?」
「正月?たまの休みだし1人で寝てるか酒飲むかのどっちかかな。」
「楽しそうっスね。映姫様も1人ですか?」
「ええ。家族はいないので私1人ですけど。」
その時、自分の脳裏に一つの考えが浮かんだ。
「映姫様、小町さん、だったら3人で過ごしませんか?」
「おお!アタイ賛成!いいですよね四季様?」
「え?はい、いいです...けど、どこで過ごすんですか?」
「そりゃあ、四季様の家ですよ。四季様の家で新年会やりましょうよ!」
「新年会、いいですね。やりますか!」
自分の意見により新年会をやることになった。別に仕組んだというわけでは無いが、映姫様の家に行くというのは嬉しい誤算だ。嫁(予定段階)の家に行けるのだ。今も血の鼓動が早くなっているのがわかる。
「では、元旦に私の内に来るということでいいですかね。」
「了解しました。」
「はーい。わかりました。」
「そういう小町が一番心配なんですけどね。」
「はいはい、わかりました。じゃあ解散!」
会話ははずみ、もう9時になっていた。自分は映姫様の家を知らないので小町さんが迎えに来て一緒に行くことになったが、映姫様がそれでは心配だというので地図を貰った。事細かく書かれていて映姫様の正確がうかがえる。最近はこの字さえも可愛らしく思える。字を見るだけで心がウキウキする。
自分は夜遅くまで起きるのは大嫌いなのですぐ布団に入った。年の変わり目を見たいとは思うのだがいつのまにやら日が登っているというのがいつものオチである。日の出が見られれば自分は満足なのだが。
まさか、こんなに早く映姫様の家に行けるとは予想外だった。少なくとも1~2年、いやそれ以上かかるだろうとは思っていたが、たった1ヶ月でお呼ばれされるとは。結婚も遠くないのではないのかと思いながら眠りに着いた。
初夢というものには最初に富士山、2番目に鷹、3番目に茄子が出てくるといい年になるらしい。思うにそんなものは関係ない。自分の好きなものが出てくるの初夢がいい年に決まっている。