助力
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和也が、向かう竜都は、北にある連峰が奥武との境になり、西南の位置に大和が有る、竜人達が治める大地となります。竜人とは、地球から日ノ本を、取り出し惑星へと変化させる過程で、白龍・黒龍・赤龍・応龍・八岐龍・五頭龍・九頭龍等の龍族が、ある特定の人々に力を与え、進化させた存在です。
通常時は、身体の一部に龍の鱗が有る事と、強靭な生命力が特徴である。戦闘時は、龍の力を身体に宿し竜人と転身する事が出来る。あくまでも、危機回避の転身ある為に、他の転身する種族より体力の消費量が多いのが特徴です。
その中でも、戦闘に特化した竜人は、神官と呼ばれ特に龍神との波長が合った者だけが龍人となる事が出来る。現代確認されている神官は、八人いる。
竜都の東に河が流れているのは、四神相応の呪法秘術を用いたもので、竜人達の都である、竜都の東に河を、獣人達の都である、虎州の西に、道を、鳥人達の都である、雀陽の南に大池を、海獣人達の都である、奥武に山を、配置したものである。畿内と大和の東西南北にも、それに置き換わる物が配置され、それぞれが有る事により、国々の結界を強力にしているのは、十年間への終戦後の事で有ります。
和也もまた、戦乱に深く係わった一人で、竜都にいる戦友で、未来予知を得意とした、水鏡京子の下へ赴こうと考えたからで御座います。それに、和也には、かつての戦友達に直接会い、自分の口から伝えなければならない事が有るのです。十年前、各地の都市に散って行った戦友達から、文のやり取りをしていた。だが、情報を、漏らさない様にしていた為、大まかな内容しか伝えていなかったからです。
この時の和也は、闇の進行を感じながらも、急激な力の胎動を、感じていなかったのが、大きかったのです。その為、風景を楽しむ、余裕が有りました。それに、敵が優位にあっても、負け戦も楽しむ強者たれ、そして、徐に笑いながら戦況を、引っ繰り返しちまえとの教えが、身体に染み付いている事が、原因か知れません。平穏な十年間の間も日々の鍛錬量を、増やしていました。かつての戦友からは常備鍛錬人間と呼ばれていました。
2
和也の現在いる場所は、茶店を出て峠の中腹辺りおり、目の前に、連盟協会に護衛された荷馬車とすれ違ったところです。
連盟協会とは、星和元年の六ヶ国会議時に創設された協会で、国に帰属する事無く市民の安全を守る組織である。
現代の支部所は、六ヶ国の都に配備されて要るだけである。各村に配備晴れていないのは、各国の関所を緊急警備時以外無条件で通行を許された組織のためである。協会加入には厳正な審査が有り、見習いから始まり、階級取り決めは、段級位制を用い、級位者を準連盟員と、段位者は、正連盟員と呼ばれている。
団体行動する時は、六人組行動する。内訳は正一人準二人、見習い三人が、一般的である。各国に配備されている人数は全員で約四百人よって、一国に要る連盟協会員は、約六十五人である。そのため、各国は、自国の警備兵を各村に配備しているのが現状である。
ほかに、探求者協会がある、創設は連盟協会と時を同じして出来た組織である。
こちらは、その地域に出現した、迷宮区の攻略を目的とした者達である。有段者は、両協会に登録している。迷宮区には、予め特殊な結界が張られており協会登録者以外の人は、入る事が出来ない。そして、出入りの時間が協会ないで管理されている。そのため、犯罪を抑止する為に設立された物である。村の場合は、連盟協会と同じように地域の警備をする。ただし、関所の通行は一般人と同じ扱いである。
『流石は、京子さんが創設した組織、統率力が高いようだ。』
と考えていた時、連盟協会の一人から声が掛かる。
「少し時間は、宜しいか。」
「なんぞ、様かな。」
振り返り和也が、答えると、殿の人間が近づいてくる。
「貴殿は、竜都に行く目的は何用か、答え得て頂きたい。」
「成程、良い目をしておられる。私は、旅の兵法者だよ。争いを望む者でもない、これでも医師でもあるしね。」
和也は、その男の眼を見て答える。
「それを、信じろと言われるのか。」
「成程、道理だね。ならば、これを提示しておこう。」
和也は、懐から一枚の鱗札を渡す。男は札を見ると驚きながら声を上げる。
「両協会の特別階級、世界に四人しかいない階級。失礼致しました。これはお返しいたします。」
札を、和也に返し、頭を下げる。
「気にするなよ。君ほどの男、中々いない。私の様な流れ者が、自分の担当国に入る。それも、他の人間では対処出来ないほどの強者となると、心配にもなる物だよ。君は、そのまま強く成りたまえ。」
和也は、そう言うと、男の肩を叩き、更に続ける。
「では、私は、失礼するよ。君達も、依頼をがんばりたまえ。それが、組織を強くし、人を増やす要因となる。国々の繋がりを太くし、それが、平和への懸け橋となるのだから。」
和也は、振り返らず旅路へと戻る。良い心を持つ後進が、芽吹いている事を、感じながら道をひた進む。
3
暫く進むと、竜都へと続く街道筋の関所へ、差し掛かるのでした。関所の辺りから、人々の悲鳴が、聞こえて来たので、和也は、間髪を容れず走り出す。そこには、関所にいた人間を襲う妖魔の姿が有った。そこにいる一人の旅人が言葉を漏らした。
「裏街道からの零れ妖魔だ。」
昔の裏街道と言えば、関所を通過したくない者が利用していた道の事だが今の日ノ本で、裏街道を通る人は、少なくなっていた。人があまり通る事が無いので、妖魔が強く成り数を増やし、関所まで押し寄せて来たのだ。
和也は、一人の役人に噛み付き、辺りを牽制する妖魔に近づく。妖魔の牽制を無視する様に。妖魔を、蔑む様に声を掛ける。
「猿山の生活は、飽きたか、違うなら帰った方が良い。」
「誰が、猿か我は、鵺。我が食事を邪魔する事は許さん。貴様も我が糧となるが良い。」
噛み付いていた者を脇に落として、和也に、駆け寄り右腕の爪で薙ぎ払う。和也は、避ける事無く立ちつくしている。見ている人々も、声が出せないでいたが、和也の声が、暢気に掛かる。
「攻撃は何時、始まるのかな。それとも、それが攻撃だったのかな。なら、悪い事をしたな。格が違い過ぎる様だ。指一本で、相手してあげよう。」
左の人差し指を立てて、構える様に鵺と対峙する。鵺は、立ち上がり和也と対峙する。和也は、見上げる様にしながら、鵺に声を掛ける。
「大きいね。ここで、暴れたら、他の皆さんの迷惑になる。少し向こうに行こうか。」
言い終わると鵺に近付き、人間の水月に指を突き刺す。
鵺は、悲鳴を上げながら後ろへ吹き飛び、大きな音をたてる。和也は、懐から一枚の呪符を、取り出し役人に渡し、言葉を添える。
「これを、使いたまえ。その傷なら、この呪符を傷口に、当てて置きたまえ、呪符の効果で、回復するだろう。」
そう言い残し鵺の後を追う。大地に塞ぎ込む、鵺に声を掛ける。
「まだ、生きているよね。」
鵺は、跳び上がる様に起き上がり、吠える様に、捲し立てる
「人間如きが、我に勝てるはずが無いのだ。人間は、餌にすぎん。」
「猿が、日和っているのか。私を、人として見ていると、痛い目に合うよ。」
鵺は、吼えながら右腕で薙ぎ払って来る。和也は、人差し指を、鵺の右腕に添えて、反時計回りに指を回す。そうすると、鵺の巨体が、その動きに付いて行く様に引っ繰り返り大地に大きな音と共に倒れる。鵺は、直ぐに起き上がると、和也に連続攻撃をしていく。和也は、人差し指一本で、全ての攻撃を捌ききる。そして、和也は、突如鵺に話し掛ける。
「もう、後がないけどどうする。」
鵺が、後ろを見るとそこには、大きな岩山が有った。全てを覚ったかのように、鵺は、最後の攻撃を和也に、仕掛ける。和也は、その攻撃を、一寸で見切り、躱し一歩踏み込み、眉間に人差し指を添える。
「良く見ておけ。それが、現生で見る最後の景色だ。」
和也は、人差し指気を籠める。そうすると、鵺の後頭部から、破裂すると共に鵺の断末魔の叫びが辺りに響く。倒れてくる鵺から離れ大地へ倒す。
4
和也が、鵺と闘っている丁度その時、残された人々は、呪符を渡された役人は、傷付き倒れる役人の傷口に呪符を、押さえ付けた。そうすると、傷口が直ぐに塞がり、回りに付いていた血液も消えて行く。傷付いた者の顔に血の気が戻り呼吸が穏やかになる。その者が、目を、覚まそうとした時、けたたましい悲鳴が聞こえてくる。その声に驚き、気が付いた、役人が、声を掛ける。
「俺が受けた傷は、致命傷に思えたが古河、何が有った。」
古河と呼ばれた役人が、答える。
「いきなり現れた、旅人が、妖魔に立ち向かって行きました。そして、その傷なら、この呪符で、治るからと言い、呪符を、渡してくださいました。」
「その者には、礼をせねばならんな。」
古河の肩に手を掛け、立ち上がる役人。
「高野様、あの傷から急に立ち上がっては、危険です。」
古河の不安を余所に高野は、答える。
「まるで、傷付いたのが嘘の様に、回復したわ。」
高野と古河が話していると、辺りから、数多くの、妖魔の悲鳴が、響き渡る。
その後に、藪を掻き分ける音が近づいて来るのが聞こえる。辺りに居た役人や、武士達が、皆刀に手を掛ける。そんな中藪から、辺りに声が、掛かる。
「まあそんなに、殺気立つ事は無いよ。辺りに居た、強そうな妖魔は、片付けといたから、当分の間は湧く事無いでしょう。」
和也は、通行手形の代わりに、鱗札を提示する。役人達は、自分たちの役目を、忘れている様だったので、声を掛ける。
「これが、通行手形の代わりだ。早く審査を終らせてくれ。」
言われて行動する役人たち、その札を見て、全てを納得した顔をして、和也にこう告げる。
「良い旅をお続け下さい。」
「良い旅にする積もりだよ。竜都も、綺麗ないい場所だね。」
そう言い残し、和也は、竜都へと足を向けるのでした。
峠を下りながら、紅葉の木漏れ日の中を、歩むのもいい物だと、考えていた時、腰を掛けるのに、丁度良い岩を、見つけるのでした。徐に腰を下ろし辺りの紅葉を肴に、酒を一献傾けるのでした。
『酒は、美味いし景色良し。久々に筆でも動かすか。』
懐より帳面と矢立を取り出す。墨の濃淡で風景を描き、最後に左下に名前を入れる。そして、筆を矢立へと戻す。
『水墨画でここまで描ければ十分か。岩絵具が有ればもう少し…。休憩終わり。』
和也は、立ち上がり、歩み始める。それでも、景色を愛でる事は忘れない。峠を越え、平坦な道へと入り、川沿いの道に入る。川沿いにある宿場町に差し掛かった時丁度昼時となったために、飯屋へと足を運び、直ぐに注文をする。
「焼き魚定食を一つ頼む。」
茶を啜り食事が来るのを待つ、書き入れ時で、他の人も同じ注文が多かったのかそこまで待たずに注文の品が来る。
「お待たせしました、焼き魚定食です。」
一汁三菜と香の物が膳に上ってくる。その、一品一品を楽しみながら腹に入れる。最後に茶を啜り一息を入れる。会計を済まして、店を後にする。
和也は、川沿いの道を東の山へと歩を進め始めました。川のせせらぎを、耳にしながら、紅葉の景色を楽しむ。物見遊山に赴く者や、旅人の中に紛れながら足を進めておりました。川沿いの宿場町から、何の足止めも無く、歩を勧める事が出来たのですが、山麓の山代村で問題が起こる。
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山代村に入った時、和也は直感的に、何かが起こると感じた時に、村の大道理を塞ぎ、群がる野次馬を見て和也は、頭を抱え考え込んでしまいました。
『今日に入り、四回目の厄介ごとですか、勘弁して下さいよ。さてさて、次の厄介ごとは、何ですかと。』
そんな事を考えながら、事の次第を確かめる為に、縫う様に先頭まで歩を進めるのでした。その途中、娘の親の声も聞こえてきた。そして、辺りを見渡し事の流れを理解する。
盗賊が十人と人質の娘一人、対して青年一人と、探求者協会人間が数人そこから導き出される答えは、和也は、こう考えた。
『探究者と盗賊が争い、探求者が傷付き、青年が盗賊を傷付け、盗賊が人質を取った。こんな所だろうな。』
さらに、辺りを見渡すと、行く道を完全に塞がれているのが見て取れた。盗賊に伏兵らしき気配も感じられない。旅路に付くために少しの助力を考えてもおかしくない流れでありました。
『一番良いのは、気付かれず素通りする事、人命優先で行きましょう。相手の頭は、ちょっと出来るみたいだし。』
それと同時に、人質を取っている盗賊の正面へ移動しながら、足場に有る石を足の爪先で弾き上げ右手に掴むそして、誰にも気付かれない様に、人質を取っている盗賊の反対側に石に気を籠め指弾する。指弾は、誰にも当たらず家屋に当たる。その瞬間盗賊の頭が、その方向を見て叫ぶ。
「そこに、要るのは誰だ。」
その声に全ての人間が目をやる。その刹那、和也は、人質を取っている盗賊に詰め寄り人質を自分の方へと連れ出し、盗賊に軽く攻撃をする。そして、五間ぐらい吹き跳ぶ、余りの事にその場で言葉を漏らす。
「跳び過ぎでしょう。それは、せっかく軽い攻撃だったのですが…。もう少し手加減を覚えも少かね。」
そして、何時の間か、娘を野次馬の中にいる娘の親もとへ返し、青年の横に着き声を掛ける。
「早く終わらせたいので、力を貸しますよ。」
「御助力感謝します。では、行きます。」
二人は、別に行動し始める。盗賊で、まともに動ける者は、七人おり、隊列としては、五人と二人に分かれていた。和也は、素早く、五人の方に踏み込み、一人に人体の急所である、明星に軽く触れる。それでも、二間位吹き飛ぶ、それを見て、呆れたように声を掛ける。
「この程度の腕でよく、盗賊なんて出来ていたな。戦乱のころの奴等は、もっと歯応えが有ったものだが…。実に、嘆かわしい事だ。」
盗賊たちが、左右から匕首を振るって来る。和也は、二人の攻撃を見切り、どちらも二本の指で白刃を止めてへし折おる。そして、その二人に、それどれ、急所である、月影と稲妻に軽く触れる。
「私と、対峙するなら、最低八方向からの攻撃をお勧めします。と言ってももう二人しかいませんか。そちらも早く終わらせてくださいね。」
和也の、言葉が終わった瞬間後二人がその場で倒れる。そして、八人の盗賊を縄で縛り、足元に倒してから宣言する。
「私は、もう手出ししません。後は、任せましたよ、青年。」
それは、始まってから、ものの数秒の事であった。
青年の方はと言うと、和也のその言葉が、こちらの開戦の合図となった。
「計算外だ。こんな事、この村、こんな強い奴が要るなんて聞いちゃあいねえ。どうなっている。おい。」
「済みません、頭昨日までこんな奴らが要るなんて報告が無かったものですから。」
青年の動を読みながら、二人の盗賊が話し合いする。腹をくくったのか二人で攻撃を仕掛ける。青年は、攻撃を受け流し、隙を付いて、攻撃を加える。致命傷を狙った攻撃でなく、攻撃後に出来る一瞬の隙に薄皮に傷を付ける様に、何度も繰り返して行き、相手の戦力を削ぐ戦術を繰り返していく。最後には、二人とも刀を、落とし膝を地に、付けさせたのである。和也は、柏手をしながら青年に声を掛ける。
「素晴らしい腕だ。まさか、実戦で見切りの練習をするとは、昔の誰かを見ている様だった。」
「御助力が有ったからこそできた事です。遅ればせながら名乗らせて頂きます。鷹野京士浪と申します。」
「私の名は、天原和也。またどこかで会う事が有るだろう。私は、旅路を急ぐ故に失礼するよ。」
和也は、簡単な挨拶と名乗り合いをして足早に村を後にするのでした。和也にも、村人から声が掛かりましたが、こう答えました。
「申し訳ないが、急ぎの用が有りますので、礼なら京士浪殿に御願いします。」
村の人々や協会の声を背に紅葉を楽しみながら山奥へと進んでいきます。この、京士浪との再会は数日後の事で御座います。京士浪のこの後の事は、その時に語られる事になります。