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音楽は誰のもの?

 ハラダは、太陽が昇りきって、そろそろ沈もうかとゆっくり放物線を描き始める頃に、まどろみの中から抜け出した。まだ夢の中をさまよっているような足取りで洗面所に向かう。鏡に映し出された彼の顔はしわくちゃで、黒々とした髪は方々に飛び散っている。仕事に行く前の彼はいつもこうだ。

 洗面所から戻ってきた彼は、夢遊病者から真人間へとすっかり戻っていた。髪を整え、顔はつるつるとして輝きを放たんばかりだった。昨日まで着ていたワイシャツを洗濯カゴへ投げ込み、ノリの効いた新しいシャツへと袖を通す。

 太陽が街並みをオレンジ色に染め上げ始めた頃、彼は今にも傾きそうなビルの一室に着いた。

 「課長、おはようございます。」

 いつも彼より早く来ている課長は、ハラダから見た唯一の上司だ。課長から見てもハラダは唯一の部下だった。

 「ああ、ハラダくん。おはよう。着いて早速だけど、今日のノルマを伝えるよ。」

 「ええ、是非ともお願いします。僕は、早く仕事がしたくてうずうずしてるんです。」

 課長の言葉に、なんとも嬉しそうにハラダは応える。

 「今日は金曜日だ。休みに浮かれた労働者達からカネを搾り取ろうと飲食店は手ぐすね引いていることだろう。その浮かれた飲食店たちからみかじめをもらって来てもらいたいんだ。」

 課長は柔和な顔をしている割に、「みかじめ」なんて似合わない言葉を使っているのを、ハラダは可笑しく感じた。

 「わかりました。場所は何処にしましょうか。」

 「そうだなあ。やはり、我々の初仕事だからね。他の人と街の飲食店に衝撃を与えたいよね。んーむ………。」

 課長はなんとも気難しそうに、目を瞑って腕を組んだ。少し間があった後、目を開けた。どうやらシンキングタイムは終わったらしい。

 「狂言町にしよう。多分この国で一番の繁華街だし。なによりここから近いし。」

 狂言町は夜になると、ネオンサインがあちこちで煌々と照りつける。蛾が光に集まり群がる様に、仕事を終えたホワイトカラーやブルーカラー、酒の味を覚え始めた若者、老若男女が国籍関係なく、その光に吸い寄せられていく。ネオンサインの下には飲食店があり、金曜ははちきれんばかりに店に人が入るのだ。

 「わかりました。それじゃあ、僕は先に下に降りて車をまわしておきます。」

 課長の話しを聞き終えるや否や、ハラダは指にかけた車のキーをくるくるとさせながらアパートのドアを勢いよく開けた。


 狂言町には車で行くには少し不便なので、近いところに車を止めてから、2分ほど歩いて日本屈指の繁華街へと向かった。

 まだ、空は真っ暗になる前だというのに、人は呆れる程にごった返していた。

 「ああ、この人ごみをかき分けながら仕事をするのかと思うと憂鬱だなあ。」

 課長はため息混じりに肩を落とす。雑踏の音がけたたましく、課長の声は消え入りそうに聞こえた。

 「課長、ぼやいてないでさっさと終わらせましょうよ。じゃあ、僕は、東側から回っていくんで、課長は西側からお願いします。」

 ハラダは、興奮しているのか、人ごみから発せられる熱気に当てられているのか、額に汗を滲ませ、ワイシャツの袖で拭っていた。

 「わかった。それじゃあ、5時間後にまたここで落ち合おう。君がいないと僕は車のキーが無いから帰れないんだ。」

 ぶつぶつ言いながら、課長は西の方角に向かって、雑踏をするするとすり抜けるように歩いて行った。


 ハラダが向かった東側は小さな飲食店が密集している。まずは、ノルマを達成させる為、数を稼ごうとそこへ向かうことにした。人の流れに逆らうように歩く。歩くと、3メートル間隔で客引きが立っていて、誰彼構わずに声を掛けて、店に引きずり込もうとしていた。当然ハラダも声を掛けられたが、ハエを払うようなジェスチャーでこれを追い払った。

 仕事は順調に進み、2時間ほどでノルマは達成した。一休みしようとハラダは、すぐ近くにあった小さな公園のブランコに座り、煙草に火を点けた。旨味を吸い付くして用無しになった煙を吐き出すと、くねりながら暗闇に昇っていくのをぼんやりと見つめていた。

 煙が空に溶け込んだのを見届け、視線を少し下に落とすと、公園の隣にレンガ造りの重厚そうなビルを見つけた。

 この時代には、巨大な3Dプリンターで家やビルを作ってしまうため、ハラダが見つけたようなレンガ造りなんて代物は旧石器時代の遺物にすら感じてしまう。

 興味を覚えたハラダはブランコを一漕ぎしてから飛び降り、レンガ造りのビルへと向かった。

 ビルは5階建てで、すこしずんぐりとしていた。初めは赤茶けていたであろうレンガも、長くから建ち続けているせいかすっかり黒ずんでいる。近くでまじまじと見ると、一つづつ積み上げられたレンガの繋ぎ目が血管の様にビルを駆け巡っている。丈夫そうだが、これを作るのにどれだけの労力がいるのかと思うと、想像するだけでぐったりする。

 ハラダはレンガに手をつき、貴重なレンガ造りの感触を覚えようとした。ひんやりと冷たい感触の中に、ちょっとした違和感をハラダは感じた。振動がするのだ。

 ハラダは空いていた手で携帯を出し、地震情報を調べた。しかし、地震は1週間前に起こったきりだった。ポケットに携帯を滑り込ませ、再び空いた手の爪を噛みながら、ハラダは張り詰めた空気の中で考える。そして、考えをまとめると、ビルの中に入り1階から順番に何やら調べだした。


 5階の一番奥の部屋だった。ドアに手を触れると微かに震えている。ハラダは確信した。

 階段を上がったため少し息が切れ切れだった。深呼吸をして落ち着いたところで、ドアを引いた。

 中はバーの様だった。ジャズだろうか。トランペットの音が響いていた。少しのカウンター席と、少しのボックス席。しかし全ての椅子に、まどろみの中にいるような顔をして尻を落ち着かせている客がいた。

 「すみませんが、今日は満席なので日を改めてお越し下さい。」

 カウンターにいる客の相手をしていた女性が、ドアまで小走りでやってきたと思うと、真心を込めて頭を下げた。

 「いえいえ、今日はお酒を飲みに来たのではないのです。それにしてもこんなところにバーがあるなんてねえ。僕、飲食店を巡るのが好きでして、危うく見逃すところでしたよ。」

 ハラダは頭を掻きながらはにかんだ。

 「そうなんですね。私のお店は祖母の時代から始って、ずっとこの場所でひっそりと続けてきているのです。」

 マダムの声は大きくはなかったが、客の耳を甘く蕩かしているジャズの音色の様によく響いた。

 マダムは仕事に戻ろうと、ハラダに背中を向けたその時だった。先程までにこやかに会話をしていた声とは別人の様な声で、ハラダは声を掛けた。

 「失礼ですが、こちらのお店は今日限りです。」

 マダムの動きはピタリと止まり、裂けんばかりに目を見開いて、ドアの前に悠然と佇んでいるハラダに目を合わせた。

 「ちょっと、どういうことですの!?この店が今日限りって…。」

 「言葉の通りです。ですが、これは最悪のケースの場合です。まずは落ち着いて僕の話を聞いてください。」

 マダムの声は、狭い店内を満たし、客の目は一斉にドア前に向けられていた。さっきまで甘く蕩かしていたジャズが騒がしくも聞こえていた。

 「まずは、自己紹介をさせてください。」

 慇懃そうに礼をして差し出した名刺には『音楽著作権保護団体』という団体の名前が書かれていた。

 「この『音楽著作権保護団体』というのはなんなのですか?」

 何とも怯えたような目でマダムは問いかける。無理もない。もしかすると、食い扶持がなくなってしまうのだから。

 「マダム、失礼ですが、先週発表された『音楽著作法』という新法は御存知でしょうか。」

 「いいえ、先週はお店を若い子に任せて、海外に新しいお酒を買い付けに行ってましたの。なので、自分の国の先週分の情報はすっぽり抜けてしまっているのよ。」

 いつの間にか、マダムが握りしめていたハンカチはすっかりもみくちゃになっていて、不安の大きさを伺わせた。

 「そうですか。それでは簡単に必要させていただきます。」

 最初にバーに飛び込んできた、はにかみがちなハラダとはすっかり別人で、獲物を狩るハンターの様で剣呑な雰囲気すらした。しかし、声はいやに落ち着いていて機械のような冷たさだった。

 「これから音楽を掛ける際は、いかなる理由があったとしても、我々、音楽著作権保護団体にみかじ…いや、失礼。使用料を払わなければならないのです。」

 急にフラッシュバックしてきた課長が脳裏に浮かんだせいで、頂けない言葉使いをしてしまいそうになったが、ハラダはかいつまんでだが的確な要約をマダムに伝えた。怯えたマダムを尻目に説明を続ける。

 「例をあげるとですね、今流れているこの曲。まず、歌唱印税として、20円をチェット・ベイカーに納めてください。そして、この詩を書いたアイラ・ガーシュウィンに20円、曲を書いたジョージ・ガーシュウィンに20円を払ってください。そして、CDの販売会社に20円、最後に、著作権を管理する我々に20円をお支払いください。計100円ですね。たった100円払うだけでマダムのバーは今まで通り素敵でエレガントなまま、次の世代にバトンタッチが出来るのです。」

 これを聞いていたマダムは、肩を震わせながら、もみくちゃのハンカチをさらにもみくちゃにしていた。

 しかし今度は、怯えからくる震えではなく、全身を怒りに震わせながらハンカチに怒りをぶつけていのだった。

 「それでは、私は一曲掛けるためにあなたたちに100円を支払わなければならないのですか!?そんな横暴があってなるものですか!」

 マダムは金切り声を上げてハラダに食ってかかった。

 「しかし、その横暴は国が定めたものなのです。我々は国の言うとおりにしているだけなのです。意見があるなら官邸にでもお行きなさい。」

 ぴしゃりと言い放った言葉はマダムに相当なダメージを与えたようで、すっかりその場に泣き崩れてしまった。

 ハラダはそんな姿には目もくれず店を出た。左腕に巻いた時計に視線を落とすと、課長と別れて4時間と半分が経過していた。

 初めての仕事だったが、ノルマを達成することができたことに満足感を覚えながら、冷たく張りつめた空気を切り裂くように待ち合わせの場所へと向かうのであった。


 かつての音楽著作権保護団体は、オンボロビルのボロ部屋を借りてひっそりと活動していた。

 しかし、新法が制定されてからというもの団体の業績は倍々で増えていき、一年経った今では、一等地にガラス張りのビルを建てる程になった。

 2人しかいなかった社員も、今では全国各地に事業所が置かれ、遠い地域にも団体の目が届くようになった。始業時間の20分前になると、本社のビルが膨れてしまうほどに従業員がなだれ込んで行く。

 ハラダの生活も激変した。薄汚れたアパートでの生活は早々に止め、庭付き一戸建てを購入した。会社までの道のりも高級車を転がし、綺麗な奥さんまで手に入れた。仕事も好調で、100人をまとめる部長になった。

 朝礼をそこそこに終えて、仕事に取り掛かろうと、自分のデスクに座ると、一本の内線が掛かってきた。電話を取ると、なんとものんびりとした馴染みのある声が聞こえてきた。

 「やあやあ、ハラダくん、お疲れ様。」

 「ああ、かち…社長ですか。おはようございます。まだ朝なんで疲れてもないですよ。」

 笑いながら言葉を返す。かつての課長は社全体を見回す社長になっていた。しかし、ハラダは課長が社長になっても、特に言葉を改めるでもなく、今までどおりの態度で接する。

 「君と話してると心が休まるなあ。みんな敬語で話してくるからなんだか堅苦しいんだよなあ。」

 社長も楽しそうに話している。自身が話していた通り、本当に心が休まっているようだ。

 「そろそろ、要件を言ってもらってもいいですか?部下が頑張って仕事してるのに僕が話してたら示しがつかないでしょう。」

 「なんだ、君も面子とか気にする質なのかあ。意外だなあ。じゃあ社長室に来てよ。久しぶりに顔も見たいしね。」

 楽しそうな声は、一方的にアポを取り付けて電話を切った。苦笑いしながら受話器を置いて、今日も忙しなく働く部下たちを横目に社長室へと向かった。

 社長室がある最上階から見下ろす景色は、蟻のように列を成して歩く人影と、薄っぺらなビルの頭だけである。

 何とも大仰な金メッキで作られた社長室の看板が、柔和な社長には何ともアンバランスで身の丈に合っていないといつも訪れる度に思う。

 「社長、失礼しますよ。」

 軽く挨拶をしながら、ノックもせずにドアを開ける。するとそこには、かつてボロボロのビルの一室で、ボロボロのパイプイスに座っていた見慣れた顔が、ふかふかそうな椅子に座って書類に目を通していた。

 「なんですか。その紙っきれは。」

 社長のいるデスクに近づきながらハラダは声を掛ける。

 「最近さあ、こんなのばっかり貰ってるんだよねえ。見てよ、あのダンボール箱の量。」

 社長が指差すドアの横には、ドアよりも高く積み上げられて山の様になっているダンボール箱があった。かつて居たビルの部屋を思い出させる乱雑さである。

 「これさ、全部苦情の手紙なんだよね。ほんとヤになっちゃうよねえ。こっちは法に則ってやってるだけなのにねえ。あ、ちなみに、これは君宛ての苦情だよ。」

 社長は笑いながら放り投げてハラダによこす。ハラダは足元に落ちた手紙を拾い上げて目を通す。

 『これから、この国を少しばかり変えさせて頂きます。』

 短く書かれた手紙は、か細く薄い字で綴られていて、今にも消え入りそうであった。しかし、消え入りそうながらも一瞬激しく燃えるロウソクの様な静かなる闘志を滾らせているようにも見えた。


 ハラダは社長と雑談をした後、自分のデスクに戻って一息つくと、パソコンの画面に「警告」の文字が浮かび上がってきた。どうやら自分のパソコンだけではないらしい。部下も少し動揺しているようだった。じっと液晶を見つめていると、動画のようなものがテレビのスノーノイズの様なものが混じりながら勝手に流れ出した。

 ハラダは仰天した。液晶には夥しい程の人が映し出されていた。動画の中の人間達は目から泣いていた。しかし、流していたのは涙ではなかった。頬に赤いクレヨンで線を引く様に真っ赤な鮮血が両の目から止めどなく溢れていた。それは画面に映っている全員が同じ様子であった。ただ赤い涙を流して、悲しみを湛えた目で何かを言うでもなくずっと見つめているのだった。

 慌ただしく働いていた部下もハラダもピタリと動きを止め、呼吸一つするのも憚られる様に思えた。

 永遠の様に思えた、無言の圧力の均衡を破ったのは液晶の向こう側にいる人間達からだった。

 真ん中に映っている女性が、何やら紙切れを掲げ始めたのだった。ハラダは近くにある液晶を遠くを見るように目を細めて、目に全神経を集中させた。


 『私たちは、あなた方の養分となって吸い尽くされた成れの果てです。皆さんからしたら赤ん坊がアリを潰すのと似た感覚で、私たちのお店に押しかけて無理難題を言って帰ればいいのです。ですが、アリの気持ちはどうなるのでしょうか。私たちは何か悪いことをしましたか?過去の文化を共有し、享受していただけなのです。誰かに迷惑をかけたのでしょうか。どうして、音楽に関係の無いあなた方に訳も分からずお金を払うのでしょうか。その払っているお金がどう使われているのかも一切分からないとはどういう事なんでしょうか。私たちはあなた方の私腹を肥やすためだけに店を潰されたのでしょうか。音楽は文化です。まだ作った人が文句を言うのならわかりますし、喜んでお金を払います。ですが、何故あなた方なのですか。何も関係の無いあなた方がしゃしゃり出てくるのですか。文化の上澄みだけを簡単にかっさらっていくあなた方には心底我慢がなりません。私たちは抵抗します。抗議します。文化を第三者の金儲けの道具になんて絶対にさせません。もう私たちは全員死んでしまいましたが、このアトランダムな抗議は、あなた方が存在する限り続けていくつもりです。』


 ハラダは紙切れの文字を目を凝らして読んだ。確かに数え切れない程に店に踏み込んできたが、その後のことなんて気にかけたことなんか微塵もなかった。足のふらつきを精一杯堪えていると、ふと、紙切れを持った女性が目に映った。なんとなく見覚えがある。記憶の霧が徐々に晴れて鮮明になる。それは、レンガ造りのビルでバーをしていたマダムだった。

 マダムの蒼白な肌と虚ろな目、そこから流れる血涙。能面が血に染まっているようだった。マダムに気づいたハラダは、ふらつきを堪えることが出来ず、視界がブラックアウトした。


 目が覚めると、そこは医務室だった。ベッドから上半身を起こすと、隣には社長が座っていた。

 「いやあ、大丈夫かい。心配したよ。」

 社長が笑顔で語りかける。

 「すみません。少し気が動転しちゃって…。」

 「あのデモの出来損ないを見てかい。何ともお粗末だよねえ。死ぬ前にあんなささやかな置き土産で僕たちを苦しめようとしてるなんて、いじらしさすら覚えるよねえ。」

 社長は笑っていた。が、いつもの柔和な笑顔はそこには無かった。性根が捻じ曲がり底意地の悪そうな顔だった。ハラダは長い付き合いだがこんな社長の顔を見るのはこれが初めてだった。

 「まあ、今更こんなチンケな飲食店を虱潰しに回っていくなんてやり方は僕たちが経験しただけで十分だよねえ。次はすごいよ。今もポータブルオーディオプレーヤーで音楽を持ち運んでるだろ。シャカシャカさせてるアホ面の奴ら下げてる奴らから全員一曲100円くらいでふんだくるんだ。今の時代ポータブルオーディオプレーヤー持ってない奴はいないからね。それに、情報の海からカネも払わずに音楽だけを抽出してる貧乏なガキばっかりだろうから、キッチリお灸も据えてあげないとね。」

 社長は次の事業プランを明かしニヤニヤしていた。次は若者をターゲットにするらしい。

 「大体さあ、うちに言われても困っちゃうよねえ。うちは法に則って活動してるからねえ。立派なビジネスな訳なの。意見陳情は国へ言って欲しいもんだよ。まあ、言ったところであんなゴロツキの陳情は門前払いだけどね。うちはちゃんと総理に付け届けしてご機嫌伺いしてるし、総理も僕らの活動内容に首を縦に振るそのひと振りで莫大なお金が入るんだからギブアンドテイクだよねえ。今更こんな美味しい金づるを放すわけないしね。僕らに有利になる法はできても、奴らがどれだけ声を上げても喉が枯れるだけだよね。」

 社長は不敵な笑みを浮かべながら医務室から出て行った。ハラダの脳裏にはマダムの言葉がいつまでもいつまでも終わらないメリーゴーランドの様にぐるぐるぐるぐると駆け巡っていた。


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