空と不確かなものと 3
中天から傾きに転じた太陽の光が、艇の濃い影を地面に落としている。砂に近い質感の土は風によってできたのか、うねるような文様を描き、影の輪郭を歪ませていた。
干上がった大河の痕跡の川床は灼熱の感が強く、そよ風は逆に熱風となって剥き出しの部分の肌を苛んでいた。ミド漠土のこの辺りは海まではまだ遠く、かなり乾燥しているために草木の見あたらない殺風景なところである。
飛空艇アクロフォカの艇尾にある小甲板に立つアルベル・デュバンは、目前の作業状況を見守っていた。隣には、イスタール風の漠土マントと漠土ターバンを被ったサウラヲミ・サラが立っていた。
彼は先ほどまでデュバンらの求めに応じ、飛空艇の離陸線の地面を戦機人で均していた。それが終わったあと黒い戦機人の瘴壊汚染を簡易洗浄し、今しがた艇の貨物槽に格納したところだった。
戦機人が地面を慣らす時には、帝国の戦列砲艦の残骸から見つけた巨大な鋤に似た道具と丁子形をした均板棒を用いた。これを使うと思ったよりも簡単にできた。おそらく、そのような用途に使うために飛空艇に積まれていたのだろう。
整備技能を持つ艇員総出で、応急修理が済んだアクロフォカの圧推モーターの始動を確認する。
その後、大破しているものの唯一原型をとどめている帝国製戦機人の近くに飛空艇を寄せる。今は艇尾の大荷物の搬入用に設置されている起重機を使って、その戦機人を貨物槽に積み込もうとしている最中である。
ショアルと侍女のサビヤにアギン右書記官長は、重汚染されたために連れて帰れない古製代装神甲フォリドフォルとアッレ・ペレストテレス・カラッカ操騎士の亡骸の前で、彼の魂を天に還す祈りを捧げていた。
「デュバン艇長、あの戦機人をどうするつもりですか?」
唐突にサウラヲミ・サラがデュバンに喋りかけてきた。驚いて彼が少年の顔を見る。漠土ターバンの影の赤い瞳が、どことなく硬い視線を向けていた。
「できれば本国に持ち帰って詳しく調べたいと思っているが。あれは貴重な情報源になるかもしれないですから。それが何か?」
「情報源? でも、たんなる戦機人なんかでは何の情報も得られないと思います」
デュバンはサラの言いすがりに、意外の感をいだきながら彼の顔を良く見る。
「……そんな事はないですよ。なぜパラカン帝国はジョンイン会戦後、七年ものあいだ為す術も無かった東方擾乱を、わずか二年あまりで平定できたのか? 不思議だとは思いませんか」
「……新型噴進弾に使われている近接信管とかの新技術じゃないのかな」
少年の答えにデュバンは少し驚く。サラは意外に情報通だった。西方列強国のロンバルド王立学術協会発行の科学季報などに触れられる、ごく一部の裕福な家庭の子弟ならまだしも、彼のような年若い傭兵が知っている事柄ではない。
その科学季報とて入手するには伝手が必要であるし、そうしてもなお、ナガンの地ですら発行からかなり遅れての入荷となる。彼とてバレル国立兵器工廠の新技術に関する報告書と、ヌタザ五ヶ国軍に帯同していた観戦武官からの情報で推測しただけである。
「さあ、それはどうだろう。近接信管を使用した噴進弾の本格配備は対ヌタザ五ヶ国戦からだ。はっきりとはしないが東方平定時は使用した形跡がほとんど無い。帝国の制式化の時期から見て試験運用はしているとは思うが」
黙り込んだサラから大破した戦機人に視線を戻し、デュバンは続ける。
「帝国はチュベン地方の併合、ヌタザ五ヶ国の征服、こんどの大イスタール皇国との直接の戦争でさえ、あっという間に圧倒的勝利を成し遂げつつある。本来は、このテベル同盟使節団も、長年のイスタールとの非友好関係を越えて、要請された軍事援助とそれに関連した条約を結ぶために派遣されたのだが……」
パラカン帝国は東方平定後も、擾乱の元凶はイスタール皇国と西方列強であると喧伝し、特に隣国となったイスタールと対立路線を取り続けた。
この二国にはけして相容れない国情があったからだ。
イスタールは世界最大の農耕地を持つ一大農業国でもある。この農地で奴隷として労働させられているのが、あらゆる手段で連れてこられた東方人である。
イスタールの収益率の高い大規模農業は国力の源泉だった。特に免状を得た寡占貴族の経営による対外輸出は、鉱物資源と並んで国庫の重要な税収である。この大規模農業の根幹を担っているのが安価な東方人奴隷であり、その供給を断たれては社会基盤、ひいては国体そのものが揺らぐことになる。
一方、パラカン帝国は民族平等を大義名分にしている。その為にイスタール皇国とは対立以外の路線を採れなかったのだし、採るつもりも無かったのだろう。
もし、イスタールの国体とも言える東方人差別主義を容認したならば、一応は治まっている東方の地に再度の混迷を招きかねない。けして東方の諸民族とてパラカン帝国の覇権を、由としていないのだ。
そしてナガン人国家の半分以上が属するテベル同盟は、大半が耕作地面積の狭い高地国である。この為に大イスタール皇国からの食糧輸入国でもある。これによって同盟内の近年の人口増加を支えている側面もあるのだ。
西方国からの輸入と、数少ない同盟内の農産物輸出国だけでは、食料自給率の低い大半の国々は、自国の国民を飢えさせる事になるだろう。おいそれと帝国に与することなど、彼らには出来はしないのである。
それでもバレル聖国を筆頭にし、道理はパラカン帝国にあるとの意見も同盟構成国には少数ながら有った。何とか帝国と皇国の和平を実現させ、現状のさらなる悪化を防ごう、という考えだ。
しかし、これは帝国が強硬な態度で示していた和平条件の中に、東方人奴隷の即時解放があった為、その情報を入手しただけの同盟内でさえ意見調整が難しいものとなる。
テベル同盟構成国にも東方人奴隷を必要とする国々が有り、これを認めれば近い将来、自国の奴隷を開放せざる得なくなる、そう予測できたからだ。
結局のところ和平斡旋案は、同盟内に育ってきた反帝国姿勢の者たちの意見を押し切るほどの大きな支持は得られなかった。
それだけではない。怠惰で協調性に欠け、強者にへりくだり、小汚く不誠実で、すぐに露見するような程度の低い嘘を平気でつく、そういった否定的な印象を東方人全般に多くのナガン人が持っていた。
それに加え、西方列強のレファン人のアルフォル・エルス・デュフォン博士が提唱して世界に広まった優生遺伝学でも、東方人は劣った人種とされ、知能や道徳性などが軒並み低いとされている。学術的にも被支配人種と位置づけられているのである。
この人種差別の意識もあって、テベル同盟全体の空気としてはイスタール皇国寄りでもパラカン帝国寄りでもない、そういうものだった。もともとナガン人は反イスタール感情の強いこともある。
むろん遠国のことでもあるから、情報収集する意外は冷淡ともいえる不干渉の立場を堅持するつもりだった。これはテベル同盟諸国がもともと東方に利権の類を、ほとんど持っていなかった為でもある。
しかし、このテベル同盟の姿勢は、パラカン帝国が東方平定のわずか一年後、さらに西に勢力を伸張すべく、攻勢をかけ始めた時から怪しくなってくる。
帝国は手始めに、イスタールが滅亡したダガリ王国から租借したままだったチュベン地方を、軍を恐ろしい速度で展開させて進駐した。ここは東方人の土地で帝国は秩序回復による在民慰撫の義務がある、というのが対外的な大義名分である。
抗議をする皇国を無視して併合を宣言すると、これを実効支配した。この為に東方最大の奴隷供給地を皇国は失ってしまう。
ここでテベル同盟はパラカン帝国軍の実力を見誤っていたと認識しだした。有象無象の集まりである東方諸国の平定は、そういうことも有るだろうと深刻には受け止めていなかったが、大陸中央の強大国イスタールの租借地を、ほとんど出血を強いられることなく手中に収めるとなると、これはもうただ事ではない。
大イスタール皇国が本気を出せば、パラカン帝国は手酷い目に合うだろう、そういったテベル同盟内の楽観論は、たちどころに払拭されてしまったのだ。
そして続いて起こったのが、山岳国家ゆえに難攻不落といわれていたイスタールの半朝貢国であるヌタザ五ヶ国の、帝国による併呑である。
これも圧倒的な飛空艇戦力と、踏破性に優れた帝国製の新製代戦機人、それに得意の山砲運用で難なく成し遂げた。ここは傭兵の世界的産地と奴隷商人の実働部隊の地でもあった。実質、これ以降は一部の例外を除き、ヌタザ傭兵はパラカン帝国軍外国人部隊の主力ともなっている。
テベル同盟はそこに至り、完全な方針転換をせざるを得なくなった。同盟内への食料の輸入が滞り始めたのだった。
イスタール皇国内農地での労働環境は恐ろしく劣悪で、奴隷の死亡率が一般人の十数倍にのぼるほど高かった。就労後の存命期間が極端に短いため、安価な労働力の供給を断たれると、その非効率な生産性によって収穫量が数年で極端に落ち込んだのである。
食糧輸入量の低下とその価格の高騰が始まり、それによって引き起こされた急激な総物価の上昇にテベル同盟は慌てた。各国市民の経済は逼迫して困窮者が街路に溢れ、評議会の政策に対する不満が頻出し始める。政策を批難する街頭示威活動や小規模ながら暴動が起こった国もあった。
同盟評議会は急いで和平の仲介に動く。だが、すでに時を失していた。パラカン帝国軍と大イスタール皇国軍の皇国本土での戦端は開かれ、雌雄を決する国家総力による全面戦争となった。
そして帝国の連戦連勝という一方的な展開となる。イスタール皇国が敗北すればギィ古王国滅亡以降の、アス大大陸最大の国家が出現する。パラカン帝国脅威論がテベル同盟内の言論の趨勢となったのは必然だろう。これによってイスタール・パラカン間講和推進派は発言を半ば封じられ、対帝国強硬派が評議会の主導を握ることとなった。
結果、テベル同盟は長年の非友好的な関係を捨て、イスタールとの軍事援助を含む友好条約を結ぶ決意をしたのである。
だが、これも見識無く後手に回った決断の遅さと、帝国の機動戦の前に意味を成さなかったのだった。
デュバンはさらに続ける。
「ここ四年で急激にパラカン帝国の国力は伸張している。たったの四年だ。取り立てて産業が発達しているとは言い難かった国が……おかしいとは思わないかい?」
「……俺には良くわからない」
「今、東方では、というよりもパラカン帝国では恐ろしい勢いで戦機人と飛空艇の数が増えている。戦機人は新製代である以上、性能的にはたいした事はないと思っていたのだけれど、思ったよりもずっと高性能だ。戦機人にしろ、飛空艇にしろ、戦時下の為か我々が想像するよりもはるかに性能が良くなっている」
「高性能といっても古製代の戦機人に比べればそれほどでもない。失敗しなければ三対一でも十分に勝てる」
先ほどの戦闘をさしていっているようだが、サラの表情には自負めいたものは無く、どこか沈鬱の影がさしていた。
「そうだとしても、しかし何よりも問題なのはその性能ではなく至源炉の数なんだ。装甲飛空艇も戦機人も至源炉が無ければ張子に過ぎない。ほとんどの動力機械は至源炉の力で存在している。艇体や甲機体の製造、軍需産業も大規模にやろうとすれば至源炉は絶対になくてはならない」
「…………」
「だが、我々の文明は、至源炉を作り出すことができないはずだった。神古代世界の破滅後の暗黒の時代に失われてしまった技術、それが常識だった。今まで全世界で使っている至源炉はすべて遺跡から掘り出されるか古くから伝わったもので、古製代戦機人など丸ごと発掘したものがすべてだ」
デュバンは大破した帝国製戦機人を見つめながら続ける。
「新製代戦機人などと言っているが、その実、至源炉に限っては神古代に造られたものを載せ換えたに過ぎない。過去の遺産で我々の文明は出来ているんだ」
サラの眉間に若く滑らかな肌に似合わない険しさが現れていた。
デュバンは彼の抱えている疑問の核心ともいうべき事を、再び顔を少年へ向けて尋ねてみた。
「では何故、パラカン帝国は至源炉を大量に手に入れることができたのか?」
デュバンの問いかける視線に、サラがろくに考えもしない様子ですぐに首を横に振った。
ひとつ息をつき、デュバンは心持ち低く抑えた声色で言う。
「それは大規模な遺跡を発見したか、でなければ至源炉の製造に成功したかのどちらかしかない」
「つまりデュバン艇長は帝国が至源炉の製造に成功していると?」
「新造飛空艇の連続就役や戦機人の量産制式化など、驚天動地のできごとだ、他国にとっては」
デュバンは、サラの表情がさらに硬くなったことに気づいた。気にはなったが少年自身に特に尋ねたい事があったので、彼はそのまま続けた。
「至源炉の製造に成功したというのは、今は仮説だけどね。だが、新たに至源炉を大量に埋蔵する遺跡を発見したとなると、我々ナガン人の常識なら古製代の装神甲なども増えなければおかしい。神古代の至源炉はあきらかに戦闘機械の動力源としてのみ存在している」
少年の顔は完全に表情が消えていた。顔色も優れないのが見て取れるほどだ。少年の態度に対するデュバンの疑念は強まった。サラの過剰な反応は何かを知っていて黙っている、そうとしか彼には思えないのだ。
「サウラヲミ殿はイスタール皇国軍に雇われていたと言っていましたが、戦場で帝国軍に古製代の戦機人を見かけましたか?」
「何領かは……見かけたように思う」
「もしも帝国が至源炉の製造に成功しているのなら大変なことになる。我々も研究しているのですが、まるでその原理が分からないでいる至源炉の秘密が……帝国軍の戦力は今でさえ圧倒的だが、さらにその戦力が増強されていくとしたら……まだ戦争になると決まったわけではないが、それでも……」
恐ろしい未来への予感に飲み込まれ、デュバンが沈み込もうとしていると、目の前で作業していた艇員たちが、ようやくひしゃげて開かなかった帝国戦機人の操鞍腔の蓋扉をこじ開けた。蝶番の軸棒を引き抜き、わずかに空いていた隙間からバールを突っ込んで、無理やり退かしたのだ。
「うへっ、なんだこりゃ!」
蓋扉の中を覗き込んだ艇員のうち一人が大声を上げた。
「どうした」
「ちょっと艇長見てくださいよ」
デュバンは艇尾の坂路から漠土に降りると戦機人に近よる。戦機人の悪臭が漠土の熱気あいまって塊のように押し寄せた。
『確かに臭いが……しかし、それほどでもない』
本来はもっと酷い悪臭がするはずだった。新製代の戦機人が主流の他国へ行くと、体に染み着いた悪臭から戦機人乗りは酷く嫌われる、それくらい臭うものなのだ。
培養キメラ筋肉の腐敗は、こまめな整備や交換によってある程度は防げる。パラカン帝国の運用が優れているのかもしれない、デュバンはそう思った。
デュバンは胴の横から機体に直接よじ登る。サラも手足の障害を感じさせない動きで彼についてくる。それでも少年には戦機人の胴の横からよじ登るのは無理らしく、巨人の足から機体の上に上って伝ってきた。
写真機で中を写している撮影係の者の横からデュバンは覗く。その男は元々イスタール皇国との条約締結を広報のために撮影する係りの者で、同盟諸国最大のデュピロメス新聞社から派遣されて使節団に同行していた。
むろん、その訪問目的の軍事援助を骨子とした条約は、イスタール国内に入ったところで当事国の大混乱から、締結に至ってはいないこととなっている。西端の交易都市ハマーラに到った所で、使節団は状況に気づいて条約締結を断念し、即時の本国帰還を決めていたのである。
実際、イスタールの混乱は酷いものだった。使節団は皇国外務府の高級官吏を同行し、彼らの同僚に迎えられたのだが、彼ら自身がアハト・バジャスタン市から皇帝が退去した事も、その際の行き先を知らなかったのである。
数日にわたる足止めに業を煮やし、使節団が先触れと称して情報収集者を送らなければ、イスタール国内で帝国軍に拘束されていた可能性が高い。それほどの危機に彼らが知らず陥るほど、イスタール国内は酷い混乱状態だったのだ。
肝心のテロス・ポンテ平原での大敗の情報をもたらしたのは、現地から引き上げ中のナガン人商館員だった。世界最大国イスタール皇国とあって、早期の敗色濃厚な劣勢など想定していなかったとはいえ、情報収集力の脆弱さが今回の襲撃を許したともいえる。
デュバンは戦機人の中を見る。帝国製戦機人の操鞍腔の中は驚くべき構造をしていた。彼の知っているいかなる操鞍腔の構造とも違い、非常に生物的な造りになっている。
そもそも新製代の戦機人につきものの操士が外の様子を見るのぞき窓が装甲前面に無いのである。どうやって外部の視界を確保しているのか彼らには分からない。
そして驚きの声を上げさせた問題のものである。操鞍腔内の巨大な力で切断された折れ重なる人体は、頭部を含めた全身をなんとも奇妙な物体で覆われていたのだ。
それを操士服といってよいのだろうか、それは水をはちきれんばかりに吸い込んで膨らんだなめし皮のような物体で、まるで一種の腸管動物のような質感である。
全体は肉でできた気味の悪い人形のような印象だった。黒い戦機人の剣突によってできた切断面を見ると、蜥蜴の尻尾を切り離してしばらく経ったときの、肉芽が盛り上がるような感じである。まるで、内部の死体を包み込もうとしているかのようだ。
しかも、肉の人形服は身体を覆っているだけでなく、前面の蓋扉以外は操鞍腔の全面がそのような材質でできていて、それを檻のような鉄枠が形を押しとどめている風なのである。
また、肉人形の頭部には、白い筋状の紐が何十本も上部から垂れ下がり、繋がっている。見る人が見れば眼球の裏面にある神経策を思わせるものだと気づいただろう。実際、デュバンもそう思った。
不思議なことに、あれだけ大量の血液めいたものを戦闘で流したにも関わらず、操鞍腔の内部は乾いていた。考えてみれば両断された人体があるのだ、明らかに異常である。
艇員の一人がしかめた顔で手を伸ばし、肉人形に触れる。とたん上半身を覆った肉人形が、縦にぱっくり二つに割れて中の死体が見えた。
どういった仕組みなのか見当もつかない。さすがに肉人形の中は湿っていたが思ったほどでもなく、皮革製の帝国軍操士服は切断面の周囲が変色するにとどまっている。
誰もが押し黙っていた。今までに、ここにいる誰も、見たことも聞いたこともない構造をした操鞍腔内部なのだ。
そして、それが間違いなく新製代戦機人として、従来の常識を覆す高性能を持ちえた、主たる要因の一つだろうと皆が感じていた。
さらにその後に判ったことがある。戦機人の頭部に突き刺さった折れた剣を引き抜くと、その部分も通常の戦機人では考えられない構造をしていた。破壊が酷くて分かりづらかったのだが、何か培養キメラ筋肉などと同じように生体構造材らしきもので出来ていて、体液や破壊された肉で残骸が構成されていたのだ。
通常の新製代戦機人は頭部などお飾りに過ぎない。極端な意匠になると、頭が無いものさえあるくらいなのだ。肉の詰まった頭部装甲内は何のために有るのか、これもまったく意味不明だった。




