ー嘘と真実ー(宮本光の目線から)
「だ、だれ・・・」
舞台の上の男の人は白衣を着ていた。
でも、保健の先生には見えなくて・・・。
でも、私がすることは一つだけ・・・りーちゃんを守るんだ。
私はハッと自分の席を見た。
リーちゃんの席の隣の隣の隣・・・・。
「聞こえるかー桜田東小学校の6年生のみなさーん!」
急に声が聞こえた。
その声は舞台の上の男のものだった。
「では、今からちょっとしたゲームをしまーす」
なんのゲームか知らないけれどりーちゃんが危なくなるのは嫌だ。
でも、なんで卒業式の日にゲームなんて。
でも、普通のゲームじゃないような気がする。
怖い。
「オンラインゲーム!みんなは知ってるよね。今回はそれを使って鬼ごっこをする」
オンラインゲーム?鬼ごっこ?
意味が分からない・・・。
「ゲームの世界で鬼ごっこだ!楽しそうだろ?」
後ろを見ると私の後ろで椅子に蹲るりーちゃんが見えた。
小さく震える体は恐怖を表している。
きっと、怖くてしょうがないのだろう。りーちゃんはいつもは宿題を教えてくれたり気が強いけど嫌なことがあったとき私と同じように一人で抱え込んでしまう・・・。
とにかく、りーちゃんを守らなきゃ。
私はそう思い、震える右腕をぎゅっと握って震えを絶った。
「でもこの人数じゃ多すぎるし本気で戦ってもらわないと面白くないからちょっとルールを作った」
その間にも男の人は話を続ける。
結ちゃんも美希子ちゃんも固まっていて・・・。
周りは誰一人動こうとしない。怖い。立っているのは私だけで。
「待てよ!なんで俺らは強制的に鬼ごっこをさせられなきゃいけないんだよ」
急に声がした。
今さっきとは違う声・・・・。
驚いて私はあたりを見回した。
加藤雄二くんだった、4組の。
「ん?君は加藤君だね!マラソン大会5位の」
「そんなこと聞いてんじゃねぇよ」
怒った加藤君の姿が遠くに見えた。
加藤君とは家が近かったから小さいころはよくあそんだ。
そんな仲だ。まあ最近は遊んでないけど。
「あー鬼ごっこの事?なんでするかっていう理由か~話してあげよう!
少し前、『TWELVE・鬼ごっこ 』っていうドラマがあったの知ってるかな?」
男の人がまたしゃべりだしたと共に私の緊張感はどんどん高まっていく。
「そのドラマの視聴率が73%っていうすごい数字を出したんだよ!
で、子供の人数が多いこの世の中で!そのドラマと同じことをしたらどうなるだろうって
その話を作ったこの僕が考えたんだ!
それでいろんなところのいろんな学校の校長先生に連絡を取ったんだ」
ドラマのことを男の人がしゃべりだしたとき、私はそのドラマのことを思い出した。
そのドラマは表向きは戦争鬼ごっこだけど、仕掛けたのは男の子で・・・小説の過去編によると男の子はいじめられっこで復讐のために仕掛けたって話だった。
ドラマでは仕掛けた男の子が勝つところまでしかやってなかったけど・・・小説では男の子はビルから飛び降りて自殺してしまう。
もしその話を書いた作家がこの人なら、この人も苦しい目にあってきたんじゃないか。
なんてことを考えながら私はその疑問に自答した。
『そんなことあるわけがない。』と・・・。
でも、その時の私はまだ、理解したくなかったのかもしれない。
今のおきていることの事実を・・・。
「でも、ぜんぜんОKしてくれなくてねぇ~
で、中学に進んでからばらばらになる子が多いこの学校にしようと思った!
それで、この学校の校長先生が邪魔だから殺しといたんだーあ、あのウザイ教頭も一緒に!」
男の人は私がいろんなことを考えているこの時にそんなことを言った。
殺した?コロシタ?
頭の中がおかしくなりそうだ。
りーちゃんは男の言葉を聞いてガタガタと震え始めた。
さっきよりも大きく。
「そこから僕はこのことを事前に親に伝えた。君たちのね?
子供が助かる方法は大きく分けて2つ!このゲームで生き残るか、親が自殺する」
その言葉を聞いて一瞬心臓が停止しそうになった。
私はいつもポケットに入れている護身用のカッターをカチカチと無意識に鳴らす。
そう、私の親は今日も来ていない。
毎日仕事仕事と私のことなどほったらかしだ。
だからやっぱり自分を選ぶのだろう。
学校に来ていない人もいる。
きっと、その子たちは・・・愛されているのだろう。
どうせ、くだらないゲームで殺されるなら私の生きたあかしを―――――
りーちゃんを・・・・・。
りーちゃんを勝たせよう。
りーちゃんだけでもこの世界に残そう。
りーちゃんを、りーちゃんを。
でも、もし・・・許されるならりーちゃんとまた・・・。
みんなでまた、過ごしたいな。
「で、まあ今回はゲームの中で鬼ごっこをしてもらうんだけど・・・その説明はゲームの中でしよう」
そういわれても私はまだ夢みたいなことを考えていた。
そんな時・・・
「おい、待てよ!俺はおまえらの命令に・・・・」
『パァン』
「ざんねーん、黒田君みたいに純粋でいればよかったのにー皆川くん死んじゃった!」
銃声と誰かの声と男の人の声が聞こえた。
銃声の音で私の体は震えるのではなく普通ではないほどの殺気を放った。
銃声というのはなぜか私を狂わせる。
そんな時、いつも頭の中にあの声が聞こえる。
『大丈夫?』
そのやさしい声が・・・・。
「恭太!」
『パァン』
2度目の銃声が聞こえたときにはもう私は平常ではいられなかった。
それでも、後ろで震えるリーちゃんを守りたい。
だからなにもかも振り払ってりーちゃんを守るようにりーちゃんの前に立つ。
「うるさいなーほら、僕キレ症だからお母さんまで打っちゃったじゃないか!」
そんな男の人の声まで聞こえないように振り払って、絶望の前に私は立ち尽くした。




