第8話:ケンカ
「なんで…おまえが泣くんだよっ!」ハヤブサがはき捨てるように言いました。
荒々しく、私を傷つけたくて仕方がないような…。
「…わかんない…よ。」止めたくても止められないくらいに涙はあふれてくるのだから。
「もう。…俺に関わらないでくれ。……わかるだろ?…おまえは飛べて、俺は飛べない。」今度は泣いている子供をあやすように、皮肉にも…今までで一番やさしく。
でも、そんなことは私に関係ありませんでした。だから
「わからないよ。」と答えました。
それを聞いたハヤブサの体には力が入って、次の瞬間にはハヤブサは私の両肩をつかんで強く前後に揺さ振りました。
「どうしてわかんないんだよ!!……どうして、わかってくれようとしないんだよっ!……俺にとっては、飛ぶことは、生きることで!!……それなしでは…」
「生きられないっていうの!?」ふざけないでよ。今まで一緒に過ごしてきて、ハヤブサが飛ぶことすごく好きなことくらい、イヤというほどわかってる。
「私は、今まで飛べなくったって生きてきた!
それなのに!ハヤブサはそれができないっていうの?
私だってつらかった!…それはハヤブサだって知ってるでしょ?……でも生きて…生きてこられたのに。
ハヤブサは弱いだけだよ。……たかが飛べなくなった。それだけだよ!」
さっきまでは言えそうにもなかった。でも、言いたかったことを言ってしまった。それも怒鳴って泣きながら。わかったふりだけして。……嫌な女。
「おまえはいいさ!最初から飛べなかったんだから!おまえに俺の気持ちはわからない。……俺のすべて。…だったんだよ!!」
ハヤブサも泣いていた。わめき散らして、あたりのことは何にも気にしていられないようだった。
……ここで伝えないと。私が本当に伝えたかったこと。
じゃなきゃ今日ここに来た意味はなくなってしまうんだから。