第3話:海岸で…
「だ、誰って…?」昨日会った人をもう忘れちゃったの?
「なんだ?ハヤブサを探してたんじゃないのかい?」店主が私に問いかけました。
「あ…確かにこの人なんですけど。」そう。確かにこの人だ。
「……まぁ。じゃ、ゆっくり話し合いな!」店主は笑いながら言いました。気楽な人なんだなぁ。
私達はゆっくり話せる場所ということで、私とハヤブサが出会った、あの海岸に行きました。
ハヤブサは「飛んでいかないの?」と私に聞きました。まだ、私が飛べないということを知らないみたいです。
「歩いて行きたいんだ。」という私に、ハヤブサは理由を追求したりしませんでした。
海岸について私は最初にこう言いました。「ここで、初めて会ったんだけど。」
「おぉ!!」手の平にコブシを打ち付けた、お決まりポーズで言いました。「お前。あの時の!」
「うん。そう。…助けてくれてありがとね。目の前に落ちてきたから助けただけだ。って言ってたけどさ。
私、死ななくて良かったな。って思ったんだ。本当にありがとう。」照れくさかったんで、水平線を見ながら言いました。
案の定。ハヤブサの方を見てみると、ハヤブサの顔は真っ赤になっていました。
「別に。…俺、ホントは助けなかった方が良かったんじゃないか?…って思ったんだ。
でも、助けて正解だったんだな!…良かったな。飛び降りた時と比べると別人みたいな目してるぞ。」
「うん。ホントにありがとう。………・・・???」ちょっと待って今なんか…。
「あれ?なんで…。もしかして、飛び降りるところ近くから見てたの?偶然だ。とか言って。」
「…!!なっち、ちげぇよ!な、何勘違いしてんだよ!?」ハヤブサは、顔の前で手を高速に運動させながら、否定しました。
そうか。偶然なんかじゃなくて、助けてくれたんだ。「ありがとう。」もう一度言うと、
「ちげぇって言ってんだろ!?」と、また言われました。私はつい笑ってしまったので、「何笑ってんだよ!?」とも言われました。
その後私達は、たくさんの話をしました。だから、ハヤブサのことをたくさん知ることが出来ました。
ハヤブサはこの島の隣島に住んでいて、配達の仕事であの店に雇われているということ。
そのため、毎日この島に来るということ。…飛ぶことが大好きだということ。
私についてもたくさん教えました。ただ…飛べないということは言いませんでした。
日が傾き始め、空が赤く染まり始める頃。私は唐突に思い出しました。…大変だ!!
「ハヤブサ!お店いいの?」店主は「後でいい」とは言ったけれど、「あがっていい」とは言ってませんでした。
「ああぁ!!…やっべ!あの人怒ると怖いんだよ!今日はこれで!俺急ぐから!」勢いよく立ち上がりながら言いました。
「明日。今日と同じくらいに来いよ!」返事をする暇はありませんでした。
明日…か。普通に、また明日会う約束をした。また明日会えるんだ。なんだかうれしくなって、一人で笑っちゃいました。
私と会って話しをしてくれる人なんて今まで数えるほどしか居なかったんです。…だから、うれしいんだ。
絶対に、飛べないことは秘密にしよう。あんなに速く飛べる人にこのことがバレたら、この関係は崩れてしまいそうだと思いました。
この日から私がハヤブサに会いにいったり、ハヤブサが私のところにきたり…と毎日のように会いました。
…私きっとハヤブサのことが好きなんだな。そう感じたのは、出会ってから2年くらいたってからです。
私たちは少し成長して、お互いのことを少しずつ意識するようになりました。
そんなときでした。私が毎日ハヤブサに会いたくて、話がしたくて、完璧に恋をしていたときでした。
ついに、ずっと秘密にしていたことがハヤブサにバレてしまったんです。