第2話:再会
海岸で1時間は泣き続けました。その日の夕焼けは恐ろしいほど綺麗に赤く染まり、まるで死ぬ前の最後の輝きのようでした。
私はやっとの思いで立ち上がり、その海岸を後にして歩き始めました。
家に帰れば両親がいる。また何か言われるかもしれない。また泣いてしまうかもしれない。
…頑張れ。頑張れ!自分に言い聞かせました。負けないように。
あの子に会いたい。明日から探そう。もしかして、この島の人じゃないかもしれないけれど。
海岸から家までは歩いて15分。飛べば5分です。もうすぐ家に着くけど、目…赤くないかな?治ってればいいけど。
…まあいいや。きっとあの人達はそんなことには気がつかない。
考え事をしているうちに、角を曲がればすぐに家が見えるところまで来ていました。
角を曲がり、家の方を見ました。辺りはもう薄暗くなっていて、はっきりとは見えませんでしたが、誰かが家の前に居るのが見えました。
母だ。…また口うるさく言われるな。ため息をつきながら家に近づいて行きました。
「〇〇〇!!あなたどこへ行っていたの?あなたが一人で町のはずれの方に歩いていったのを見たって人がいて!
まさか、と思ってたのよ!?一体何してたのよ!!」
凄まじい勢いで母が私に問いかけてきました。私の胸倉をつかみ揺さぶった後、力なく地面に座りこんでしまいました。
…もしかして心配していたのだろうか?普段あんなに私のことをけなしていたのに?
飛べない天使なんて…と、あんなに…!!
「心配…していたの?」
「してちゃ悪いの?…責任を感じたわ!私はあなたのことをひどく言っていたから…!」
涙をボロボロ流しながら、ごめんなさい。とひたすら呟いていました。
母のこんな姿、初めてだ。今までずっと嫌われていると思っていた。だって私は飛べなかった。
私の帰りがいつもより遅いからって、こんなに心配するなんて思ってもみなかった。
…嘘じゃないよね?偽りなんかじゃないよね?本気で心配していてくれたんでしょ?
私も母と一緒に、また泣いてしまった。
これも、あの子のおかげだ。絶対に探し出してみせる!そして、心をこめて思いっきり「ありがとう」って言ってやるんだ!
そうしたら、あの子はまた顔を赤くしちゃうかな?あの子が笑った顔を思い出していたら、母に「なんで笑っているのよ!」と言われてしまいました。
翌朝、私は手始めに町の人に「すごく速く飛べる男の子を知っていますか?」と聞いて回ることにしました。
仕方がないんです。昨日は父と母におそくまで何があったのかを話さなければならなかったので、どうやって探すのかしっかりきめていなかったんですから。
「知らないよ」という言葉をもう何回聞いたことでしょうか。次で今日の最後にしよう。その人は他の島から食品を輸入して売っている店の店主でした。
「すごく速く飛べる男の子なんですけど、知りませんか?」と私が尋ねると店主さんは、空を指差しました。
「それは、あいつか?…俺が雇ってるやつでよぉ。俺が知る限りじゃ、あいつは誰よりも速く飛ぶぜ?」
「あっ!」それは紛れもなく、あの男の子でした。私が見たときにはすでに私達のすぐ傍まできていました。
「ご苦労さん。この子。お前を探してるんだと。仕事は後でいいから、相手してやんな。」
「あー、はい。」男の子は雇い主である店主さんに曖昧に返事をした後、私の方を向きました。
「あの…!!」私は今まで溜め込んでいた感謝の気持ちを男の子に伝えようと思い、声をかけました。
そんな私の気も知らずに、男の子は頭をボリボリかじりながら言いました。
「なんで俺のこと探してんの?…えぇーっと、誰だっけ??」