第1話:出会い
私は天使です。…でも飛ぶことが出来ません。…翼はあります。…でも、飛べないんです。
翼を広げることが出来ないんです。何度試してみても、私の翼はただ飾りのように私の背に張り付いているだけでした。
価値観は人によって違うけれど、飛べない天使なんて天使なんかじゃない。って考えている人…結構多いんです。
だから、私は小さい頃…今もだけど、よく影でバカにされていました。
そんな私だけど、私にだっているんですよ。…失いたくない、大切な人が。
ハヤブサは誰よりも速く飛び回り、周りに人を寄せ付けないことで有名です。
私はハヤブサより速く飛べる人を見たことがありません。それくらい彼は速く飛べました。
だから、ハヤブサは飛ぶことで誰かに負けたとしたら自殺でもするんじゃないか…。と、よく言われていました。
彼と私が初めて会ったのは、5年前です。私はそのとき12歳でした。彼は私より1歳年上なので、13歳だったと思います。
ハヤブサと出会った日、私は自殺しようと思っていたんです。親や近所の人に落ちこぼれだと言われ続ける毎日に疲れていました。
人目につかない橋へ行き、今までの人生を思い返していました。もし、私がちゃんと飛べる天使だったなら、あの人たちはを好いていてくれたのかな?
そんなことを考えているうちに、私の目には涙が浮かんできました。もうどうでもイイや。終わりにしよう。
私は1歩前に踏み出し、地上20Mに架かっている橋から飛び降りました。あとはただただ下へ落ちるだけ、それだけで私はこの苦しみから解放される。
お父さん、お母さん。さようなら。ごめんなさい。飛べない…出来の悪い娘でごめんなさい。
しばらくたって私は目が覚めました。上半身を起こして周りを見ると、そこは見慣れた海の海岸でした。
…そっか。死んだらこんなところへ行き着くんだ。…水平線。結局、あの先に進むことは出来なかったな。
「目ぇ覚めたのかよ。」
突然の声にビックリしました。まさか自分の隣に誰かいるとは思いもしませんでした。
「何固まってんだよ。」
「誰?なんでこんなところにいるの?あなたも…死んでいるの?」
「おい。落ち着けよ。お前は死んじゃいないぜ。」
「…どういうこと?私は確かに死んだはずよ。」
そう。私は確かに飛び降りた。死んでいないなんていうわけがない。それにあの時私の近くには誰もいなかった。
誰にも助けられるはずがない。私は死んだのよ。
「何で飛び降りたのかは知らないけど。飛んでいる時あんたが目の前に落ちてきたから、だから仕方なく助けただけだぜ。」
そう言っている彼の顔は真っ赤でした。私はどうやら彼に命を救われたようです。彼はその後すぐに飛んでいきました。
お礼を言う時間さえ与えてくれませんでした。
飛び去って往く彼を見ながら、私は泣いてしまいました。すでに誰にも負けないくらいに彼は速かったんです。…彼が羨ましい。
私もあれくらい速く飛べたら、嫌われずにすんだのに。私はどうして飛べないの?
次々に涙が溢れてきました。死ぬつもりだったのに。やっと決心がついたのに。
…本当は死ぬのが怖かった。まだ生きていたかった。もっと多くの人と出会いたっかた。
彼を探そう。そして、お礼を言おう。
…彼にもう一度会いたい。
ハヤブサは私に生きる希望を与えてくれました。
意見がありましたら、どんどん書いて下さい。未熟者なので、いろいろな意見をききたいです。お願いします。