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【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
東の魔王編

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第35話 東の魔王1

 数分後。


 舞い上がっていた砂煙は、ゆっくりと吹き抜ける風に流されていった。


 ようやく視界が元通りに開ける。


 あたりは再び、嘘だったかのような静寂に包まれていた。


 カレンは静かに息を吐き出しながら言った。


「さすがに今の攻撃で、打ち止めですかね。撃滅したと言っても良いのではないでしょうか。」


 シャロンが吐息とともに言葉を返す。


「宣言通りに、本当にやったわね……。見たことも聞いたこともないような魔物の数だったわ……。あなたたちと一緒に来られて本当に良かったわ……。私一人では何も出来ずに終わっていた……。」


 その時、岩場の陰からどこか嘲るような大きな声が響いた。


「俺の魔物は、さっきのデカい奴で打ち止めだ!」


「ゆっくりしてるところ悪いな!あんたら、俺に用事があるんだろ!」


 岩肌に指をかけ、ゼンたちが陣取る高台へ向けて一人の男が登ってきた。


「なんか、勇者が俺の首を獲りに来たって話を聞いたけど……。面白そうな奴が混じっているな。」


 その男のいで立ちは、まるで砂漠の静けさと夜の欠片を纏っているかのようだった。


 着慣れた濃い紫色の長衣。


 頭部を隙間なく覆い隠すターバン。


 露出しているのは鋭い瞳だけだった。


 だが、その目には冷徹な狂気とともに、どこか深く暗い孤独の影が宿っていた。


 シャロンは即座に腰の剣の柄を固く握りしめ、男に向けて強い口調で啖呵を切る。


「あなたが東の魔王ね!あなたの命は今日で終わりよ!覚悟しなさい!」


「そうだな……。確かに俺は魔王と呼ばれているな。」


 男は薄笑いを浮かべながら三人を見渡す。


「あんたらはどうだ!?あんたが勇者か。でも俺はできればそっちの男が良い。」


「頼むよ。俺は一人だぜ、それに何も持っちゃいない。」


「そっちの男と一緒だ。」


「何、ふざけたこと言ってるのよ!その長い服の中に何か隠してるんでしょ!」


 カレンは落ち着いた声で言った。


「私の装備品が何も出てきません。その男は本当に武装をしていないみたいです。」


「かといって、脅威には変わりありません。三人で当たりましょう。」


 カレンとシャロンは東の魔王を挟み込むように、左右へ展開し始める。


 だが、それまで黙っていたゼンがぽつりと口を開いた。


「……しょうがない。ちょっとだけ付き合ってみるか。」


 その想定外の一言に、カレンとシャロンの表情が一変する。


 カレンが制止するように静かに、そして鋭く言った。


「ゼン……いいですか。」


「東の交易路を無差別に襲撃し、無抵抗な村を焼き払い、幾多の人々を殺めてきた男です。」


「この男のせいで、多くの罪のない人々が命を落としています。」


 シャロンも強い焦りを滲ませて同調する。


「こんなやつの下らない遊びに付き合う必要なんてないのよ!安い挑発に乗って、脚をすくわれるなんてあってはならないことよ!」


 カレンも重ねて警告を発する。


「わざわざ戦力を分散させて、各個撃破されてはもったいないです。勝てる戦いですよ、ゼン。……落ち着いて。」


 しかし、東の魔王はカレンやシャロンの言葉には一切興味を示さない様子だった。


「あんたが、魔物相手に暴れまわってるのをずっと見てたぜ。退屈で死にそうだった俺のところに遊びに来てくれたんだろ……。」


 男が言い終わるよりも早く。


 ゼンは無言のまま、大地を強く蹴り飛ばした。


 一瞬にして間合いを詰めると、東の魔王の顔面へ向けて右ストレートを放った。

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