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第2章:感情の扉
共鳴居住区の学校では、フェリアの少年・ノイが転入してくる。透き通るような瞳と優しい微笑みをたたえたノイは、誰にでも分け隔てなく接した。だが、人間の感情の複雑さにはまだ不慣れで、ときどき戸惑う。
そんなノイに興味を持ったのは、感情に冷めたハルカだった。
「感情を食べるって、気持ち悪くないの?」
「ううん。それは、花の香りを感じるようなもの。とても、あたたかいよ」
ノイは感情を無理に引き出すことはしない。ただ、静かに耳を傾ける存在だった。
やがてハルカは、ノイと一緒に過ごす中で、少しずつ自分の心の傷を話せるようになる。
「本当は、誰かに分かってほしかっただけなんだ」
その瞬間、ノイの体に淡い光が走り、周囲の空間がほのかに輝いた。
「いま、すごく優しい味がした。……ありがとう、ハルカ」