4 隠された遺跡 - 扉を開く術
朝の霧が山間を覆い、空気には湿り気が満ちていた。
俺は古びた地図に描かれた道筋を頼りに、宮廷から遠く離れた山の中へと足を進めていた。
地図が示す場所には、双龍の彫像のもう一体が隠されている可能性がある。
その地には古代の神殿が眠っていると言われていたが、誰もその実在を確かめた者はいないという。
竹林を抜け、いくつもの渓流を渡り、やがて朽ちた石の鳥居が現れた。
その奥に、苔むした石段が続いている。
俺は一歩ずつ石段を登りながら、周囲を警戒する。
「これが古代の神殿の入り口か…」
朽ちた鳥居を抜けると、そこには巨大な石造りの扉が立ちはだかっていた。
扉には複雑な模様が彫り込まれ、それが術式を兼ねたものであることがすぐに分かった。
俺はその模様に触れながら、術式の仕組みを解読し始めた。
「これは……双龍の力を象徴する術式だな。守護と破壊の均衡が鍵か」
扉の中央には玉龍を象った図があり、その目に当たる部分には小さな穴が開いていた。
「ここに何かをはめ込む必要があるようだ」
俺は懐から、宮廷の書庫で見つけた玉龍の欠片を取り出した。
欠片を慎重に穴にはめ込むと、扉全体が静かに光を放ち始めた。
やがて低い音を立てて扉が開き、その先には暗闇に包まれた神殿の内部が広がっていた。
湿った空気とともに、僅かな魔力の気配が漂ってくる。
「ここにも何かが」
俺は灯りを手に取り、神殿の奥へと足を踏み入れた。
神殿の中は広大で、中央にはもう一体の玉龍が安置されていた。
その姿は玉龍の彫像に酷似しているが、その表面には黒い亀裂が走っており、どこか異様な雰囲気を漂わせている。
俺は彫像に近づき、注意深く観察した。
「これが…破壊の玉龍か」
彫像の周囲にはさらに複雑な術式が描かれ、それが玉龍の力を封印していることが分かった。
だが、その術式の一部が崩れ、力が漏れ出している。
「この封印が不完全なせいで、守護の玉龍に影響が出ているのかもしれない」
その時、神殿全体が低く唸るような音を立てた。
俺が振り返ると、闇の中から魔物が現れた。
それは彫像の力に引き寄せられたのか、巨大な蛇のような姿をしており、その目は赤く輝いている。
「ここにもか…」
俺は霊刃を構え、魔物の動きを見極める。
蛇型の魔物は素早く地を這い、獲物を仕留めるべく牙を剥いて突進してきた。
俺はその攻撃をかわしながら、霊刃を振り下ろし、魔物の体に深い傷を与えた。
だが、魔物はその傷をものともせず、さらに激しく襲いかかってくる。
俺は神殿の柱を利用して間合いを取りつつ、魔物の弱点を探った。
「こいつは…頭部の宝玉が核か」
俺は
一瞬の隙を突き
魔物の頭部を狙って
霊刃を突き立てた
霊刃が宝玉を貫いた瞬間
魔物は激しく震え
やがて崩れ落ちた
「結界が弱まったせいで、魔物が引き寄せられているな」
俺は霊刃を鞘に収め、再び玉龍の彫像に目を向けた。
彫像の亀裂からは微かな黒い霧が漏れ出しており、それが宮廷の玉龍に影響を及ぼしていることを確信した。
俺は彫像を封印するために必要な術式を整え直し、再び封印を強化した。
神殿を後にする頃、山間の霧が晴れ始め、僅かな光が差し込んできた。
「守護の玉龍に戻るには、破壊の玉龍の封印を完全なものにする必要がある……」
俺は静かに呟きながら、宮廷へ戻る道を歩き始めた。
だが、封印を崩した黒幕の存在が一層濃厚になり、さらなる調査が必要だと感じていた。