表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
江戸情話 てる吉の女観音道  作者: 藤原 てるてる
3/101

初吉原(三話)

 オラが吉原へ行ったんは、十九ん歳よのう。

 そらもう、にぎやかなとこで、すけべ顔がぞろぞろいたて。どこの置屋に入ろかって、女を品定めしては、行ったり来たりしての。まあ、こん置屋の姉御がええじゃねかと、足が止まったんや。あの紫の着物の、よう肥えた三十路に決めたん。


 オラ「姉御、オラは越後の山奥から江戸へ出てのう、来るんが楽しみだったて。ここは、極楽じゃと聞いて来たんや、よろしゅうたのむて」

 姉御「そうや、こん吉原は江戸の花や、男はんの極楽の地や。たんと遊んで行きなはれ、今夜はアテ、兄さんのもんやで。女ん楽しみ方、悦ばせ方、ようおしえたるわ。ささっ、二階へ上がっとくれ、用意が出来たら呼んでな」


 よしゃ、よしゃ、遠慮のう、あばれちょるわいな。たけえ銭出しとるんじゃ、元はたっぷり取ったるわい。


 オラ「おーい、おーい、姉御、早よ早よ。オラんこつ、早くあっためんか」

 姉御「おまっとうさんでござんした、兄さん。朝まで、たんとあるよってに、あわてなさんなって。若い男はんやったら、少のうても三つは決めてもらわんとな」

 オラ「そんなん、朝飯前じゃ、わかっとるわ」

 姉御「男の三つは当たり前、あんな、そやから、三つと三つで六つんことやで、約束やで。アテも、極楽へ連れてっておくれやす」

 オラ「わ、わかったわかった、六つやな……」


 まあ、安請け負いしたけんど、大丈夫やろ。こん日のために、溜めこんで来たわいの。戦じゃ、戦じゃ……


 ……朝んなり、鐘の音が鳴った。オラは空っぽに、なっちょたわ。姉御は横で、ぐったりとして寝ちょる。


 オラ「姉御、起きれや、朝やど、いやーええ思いさせてもろうたわ。また来るすけ、オラんこつ忘れんでけろ」

 姉御「あっ、兄さん、約束よう守ってくれやしたな、たいしたもんや。また、来とくれやす、そん時は兄さんもんやで」

 オラ「おう、またなー」


 そん女のとこには、銭溜めては通い、仕込んでもろうたわ。やっぱ仕込んでもらうんには、姉御がええのう。ありがとのー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ