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1–3 彼女の願い

 「お、来たね」


 空き教室のドアをガラガラと開けると、少し高めの可愛らしい声が俺の耳に届いた。


 「えっと…話って何?」


 「単刀直入に言うと、私に告白してきてくれた人を一緒に探して欲しいんだよね」


 ここにいます。目の前にいます。初手で王手ですありがとうございます。


 「どうして?」


 「やっぱり自分のことを思ってくれている人が誰かなのかは知っておきたいかなって」


 ここで、なぜ俺と彼女がこんなに親しいのかという疑問が君たちの頭には生まれていることだろう。


 席替え当初は事務的なこと以外では全然話さなかったものの、お互いに深夜アニメ『剣()き剣士の冒険譚』が好きという点で意気投合し、今に至る、という感じだ。


 「私、こういうことを話せる親しい男子が染谷君くらいしかいないからさ、お願い!」


 「…」


 困った表情を浮かべ、懇願する彼女を見て、俺は断る選択肢を捨てた。


 さて、引き受けた場合どうなるのだろうか。少し思案を巡らせ、俺は最善と思われる道を考えた。


 それは、イタズラなどではなく、俺が告白したことにして、何かの間違いで彼女がそれに対してOKしてくれる展開だ。都合の良い話なのは分かっている。だけどそれに賭けてみたい。


 俺は意を決して、口を開く。


 「…あのs」


 「ま、こういうのって、お互いに恋愛感情がないって分かってるからできるみたいなとこあるよね〜」


 「」


 おもしろき こともなき世を おもしろく。


 おっと危ない。辞世の句を読むところだったぜ。いや読んでるわ。


 軽々しくそんなことを言う彼女に対して、俺はなんとか平静を保って返答する。


 「…そうだね。じゃあ、周りの奴に聞いてみるよ」


 「引き受けてくれるの?ありがと〜!」


 彼女は両掌を合わせて頭を下げた。


 「それじゃ」


 俺はそう言って引き戸に手をかけた。ひとまず、自白はもうちょっと後にしよう。うん。


 こうして、俺はいもしない差出人を探すことになったのだった。




 彼がでていくのを見送って、一人だけになった空き教室で、髪をいじりながら私は言った。


 「…私、脈ないのかなぁ?」

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